オリオンビールに学ぶ、Shopifyで「どうすれば売上をあげられるのか」

安藤 祐輔

オリオンビールに学ぶ、Shopifyで「どうすれば売上をあげられるのか」

コロナ禍によって、多くの人がEC・ネット通販を活用するようになりました。そんな中、EC構築プラットフォームShopifyは、2017年ごろから日本での活用が本格化し、今日数々のECサイトがShopifyを使ってECサイトを構築している他、他カートからShopifyへ移行する、というケースも非常に増えています。ただ、Shopify自体は、非常に完成度の高いサービスですが、実際Shopifyに移行しても、「どうすれば売上をあげられるのか?」と悩まれている方も多いかもしれません。そこで今回は、2020年ごろにShopifyへ移行し、その後、売上を200倍まで成長させたオリオンビールのケースを参考にShopifyで売上を上げるヒントを共有できればと思います。

※注:このインタビューは、オリオンビール株式会社(本社:沖縄県豊見城市、代表取締役社長兼執行役員社長CEO:村野一)のECサイト運営を支援する株式会社ハックルベリー(本社:東京都世田谷区、代表:安藤祐輔)主催のセミナー「Shopify移行で売上200倍に!オリオンビールの担当者に聞く『Shopifyで売り上げを上げるために必要なこと』」を記事化したコンテンツです。

オリオンビール公式通販の売上、飛躍的拡大の理由

オリオンビールはもともと、通販サービスを行っていました。しかし、このサイトは申し込みフォームからオーダーし、銀行振込で支払う仕組みでオンライン上では決済ができないなど、古いシステムだったといいます。長年小売を手掛けているストアさんの場合、時代に取り残されたシステムを使い続けているところも少なくありませんが、オリオンビールさんは、思い切ってShopifyへ移行し、成功を収められています。

結論から言ってしまうと、Shopify運用成功の要因は、「コンセプトの明確化とShopifyによるコンセプトの表現だった」とオリオンビール株式会社マーケティング本部 EC課 課長の妻夫木友也さんは振り返ります。

Shopify移行で「沖縄時間を届ける」コンセプトを実現

Shopify移行で「沖縄時間を届ける」コンセプトを実現

まずは、ECサイトのコンセプトを明確にした上でECサイトを運営していることについて解説しましょう。
実はオリオンビールは自社の商材をメインで扱いながら、地元沖縄の「泡盛」だったり、「チキンの丸焼き」だったり、さまざまな商材を取り扱っています。

「沖縄時間を届ける」をコンセプトに地元沖縄のハブ酒や泡盛などもECで取り扱う

サイトを見てみると、中には、オリオンビールの商材とは一見無関係に見えるようなものもあるかもしれません。ただ、これは、オリオンビール公式通販のコンセプトである「沖縄時間を届ける」という軸によるものである、ということが重要です。

ソーキソバや山羊刺しなど「沖縄ならではの食材」も届けている

オリオンビール公式通販では、お客様にビールをお届けするだけではなく、「沖縄を身近に感じられる時間」を楽しんでもらうことを「沖縄時間を届ける」と表現しているのですが、オリオンビールを楽しんでくれている方は、やはり「沖縄が好きな人」がほとんどだと言います。だからこそ、沖縄が好きな人に「沖縄を身近に感じられる体験」を提供するコンセプト(=アイデア)を打ち出しているのです。

妻夫木さんは、「こうしたアイデアは、以前までのECサイトでは実現できなかったものでした」と言います。

Shopifyに移行し、商品数の整備や、見せ方の工夫ができるようになったことで、「オリオンビールの理想」とするECサイトに近づけられたといいます。

スピーディで質の高いサイト構築が可能なのはShopifyの強み

スピーディで質の高いサイト構築が可能なのはShopifyの強み

もう一つの成功要因、「コンセプトを表現する、高クオリティなShopifyサイトをスピーディに作れたこと」について妻夫木さんは、「オリオンビールのShopifyへのリプレイスは、コンセプトを決定してから数カ月程度」だったと言い、非常にスピーディに移行できた点を挙げています。

これは、ひとえに「Shopifyのプラットフォームとしての完成度の高さ」によって実現できたことでしょう。オリオンビール公式通販を見ていただくとお伝えしやすいのですが、デザインのクオリティが非常に高く、「オリオンビールらしさ」が表現されていると感じられます。

Shopifyは、こうした高いデザイン性を、比較的短時間で実装できるのが大きな魅力です。

加えて、Shopifyパートナーによる並走したサポートも心強い点です。具体的には、Shopifyには、パートナーエコシステムと呼ばれるパートナーシステムがあり、これは、Shopify Expertsと呼ばれる、Shopify公認の企業がストアさんにつき、ストアさんのEC構築やマーケティングを支援する仕組みとなっています。パートナーエコシステムを活用することで、社内にECやShopifyに対する知識のある人がいなくても、安心してShopify構築を行うことができるというわけです。

オリオンビールの妻夫木さんも「ハックルベリーのようなパートナー企業の存在が、構築の手間や、実運用する際のリソース不足を解消してくれた」と振り返ります。

オリオンビールの顧客接点の作り方

もう一つ、オリオンビールさんの、顧客接点の作り方も印象的ですので、お伝えしたいと思います。オリオンビールさんでは、「沖縄を好きな人」へ「沖縄時間を届ける」という、コンセプトにそって顧客接点を作っていることは先述の通りです。これを具体的にどのように周知しているかというと、例えば、オリオンビールさんではTwitterやInstagramなどのSNS運用をしていますが、その運用においても、「沖縄を好きな人への発信」に注力しているのです。


もちろん、オリオンビールのキャンペーン情報や新商品のPRなども実施していますが、那覇空港からの眺めだったり、ECとは関係ない何気ない呟きだったり…。

何気ない、素朴な日常ツイートに人の温かみを感じさせる

お客様に日常的に沖縄っぽい眺めを楽しんでもらったり、沖縄のことを思い出してもらったりするような投稿を心がけています。

ECサイトに関連するSNSの投稿だと、どうしてもキャンペーンの情報の発信などに留まってしまうケースが多いのですが、今日、SNSの役割はそうした一方通行の発信だけではなくなってきました。SNSを通じて、新しいお客様と繋がり、自社のことを知ってもらい、好きになってもらうこと。平たく言えば、「お客様と仲良くなること」がSNSの真価と言えるのではないでしょうか。

顧客接点と言うと煩雑で業務的なイメージが付き纏うかもしれませんが、結局は一人一人のお客様と向き合い、自社のことを知ってもらい、好きになってもらうことが重要だと思います。

オリオンビールのECサイトがここまで成長した理由は、「コツコツお客様の信頼を積み上げてきたからこそ」だと、僕は思っています。

まとめ

Shopifyの売上を上げる方法、と銘打ちましたが、肝心なことは、「ブランドが明確なコンセプトを作り上げ、そのコンセプトに沿ったEC運営・情報発信をするということ」だと思います。

結局のところ、ECも人と人の関係性ありきなのです。

顧客がどういう人なのかを見つめて、その人がどんなものを欲しているのかを考え抜くことで、ECサイト運営は成功に一歩近づきます。顧客からの信頼は、一朝一夕で得られるものではありませんから、自社のコンセプトを固め、コンセプトに沿った発信を、今日から少しずつ積み上げていってはいかがでしょうか。

また、もしこの記事を読んでいらっしゃる方の中で「Shopifyを作ってみたいな」とか「ECサイトを改善したいな」と思われた方は、オリオンビールさんのように、Shopifyのパートナーエコシステムを活用することをオススメします。このパートナーエコシステムの「すごいところ」をもう一つだけご紹介すると、「パートナー同士の連携がある」ことです。

一見、パートナー同士の連携というと、各社サイト構築会社だったり、アプリ開発会社だったりするので、競合するように見えますが、毎月のようにアップデートされていくShopifyに追い付き、より良いECサイト構築や運営支援をしていくには、パートナー同士で情報交換をした方が効率が良いため、頻繁に情報交換が行われています。

正直、Shopify構築から運用成功までを一社だけで完結させることはとても難しいです。株式会社ハックルベリーでも、オリオンビールさんのような企業様の構築支援をさせていただいておりますが、Shopify構築を依頼する際は、ぜひさまざまな企業と連携できるパートナーをお選びいただきたいと思います。


著者

安藤 祐輔 (Ando Yusuke)

東京消防庁に入庁後、筑波大学体育専門学群へ進学。スポーツ経験のある学生の採用に特化した採用支援事業を学生時に起業し、ケンコーコム(現Rakuten Direct)へ。その後、海外向けEC事業などに携わり、Socketを創業して「Flipdesk」をリリース。代表を退いた後、「Shopify」向けアプリの企業であるハックルベリーを立ち上げた。計4度の起業。
ハックルベリーでは、「Shopify」向けの集客アプリの開発を行っている。

https://huckleberry-inc.com/