楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングは意外と違う? 3大ECモールの節目需要と季節性商品のトレンドをデータで可視化

山本 真大

こんにちは、国内外の主要ECモールの推計データを提供するデータカンパニー、株式会社Nintでデータアナリストをしている山本と申します。
前回の記事はいかがだったでしょうか。参考になることが一つでもあれば幸いです。

第2回のテーマは「EC市場において季節性の高いカテゴリーの動向」です。
今回も前回同様に、Nint ECommerceというツールを使い、分析しました!これは、国内のEC市場の約7割を占める、3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)のジャンル別・ショップ別・商品別に売上・数量を確認できる市場把握から商品戦略にまで使用できる画期的なツールです。
※ご提供の売上・数量は推計値です。

では早速、季節性の高い商品とその動向を見ていきましょう!

「季節指数」とはなにか? 一番高くなるのは?

まずは下記の図をご覧ください。

図1:3大ECモール季節指数推移

今回、各モールの動向を見るうえで、「季節指数」という基準を用いて調査しました。
季節指数の定義は年間(1月~12月)の売上の平均を「100」とし、100より高いのか、低いのかを見ることで、その月の「売上規模≒需要の高さ」 を見る指標です。モール毎で売上が異なる中、3大ECモールを俯瞰して見る方法の一つとして使用しています。
図1を見ると、以下の特徴が見えます。

 ・年間を通し、季節指数が最も高い月は12月である。
 ・3月・7月・9月・11月に季節指数の高まりが見られる。
 ・2023年は、7月・11月の季節指数の高まりが他の年に比べて高く表れている。


EC市場の約7割を占める3大ECモールの特徴として、上記の動向を掴んでいれば、3大ECモールの市場動向を把握できていると言えるでしょうか? 
こちらをご覧ください。

図2:2023年各モール季節指数推移

モール単位で季節指数を確認すると、それぞれ異なっています。

モールAは3モール全体の推移に比べ、6月にも高い季節指数を示す一方、7・8・11・12月に関して3モール全体の季節指数を越えていないことが分かります。これは、3月や6月などに高い季節指数となる為の反動とも考えられますが、モールの一つの特徴であると言えそうです。

モールBは7月・11月が高い一方、3月は3モール全体より低いことが分かります。11月には近年認知度を急上昇させている、「ブラックフライデー」があり、モールBはブラックフライデーでのセール展開が2023年において非常に重要であったのではないかと推察します。

モールCは3・9・11月の季節指数が高い一方、4〜6月にかけては全モール中一番低い季節指数で推移しております。季節指数は、年間の平均売上を100としてその動きから売上推移を確認しています。モールCは他のモールに比べ単月ごとで季節指数の高い月・低い月が明確に現れています。「メリハリ」があるモールと言えそうです。

今回はいくつかのジャンルを選出、3大ECモールでの動向の違いをご紹介します。
紹介するジャンルでは、モールA・B・Cと別々に表記している項目が多くあります。
モールA・B・Cが3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)のどれなのか、予想しながら読んでもらえると、より3モールの違いに気づかされるはずです。では早速見ていきましょう!

チョコレート市場(3モール類似傾向型)

冬場に需要が高まるチョコレート市場ですが、EC市場でもその季節性は確認できます。
直近にはバレンタインもあったこの市場の各モール毎の動きを見てみましょう。

図3:チョコレート市場 季節指数推移

チョコレート市場は各モールが苦戦する2月に季節指数が高まることが特徴の市場です。
全体の傾向としては3モールとも類似しており、バレンタイン時期に季節指数の高まりが見られます。一方で違いも見られ、モールBに関しては3月が年間を通し、もっとも季節指数が高くなることが確認できます。4月以降の落ち込みもモールBに関しては市場全体と比較しても高いことが分かります。モールBはひょっとすると「バレンタイン催事」よりも「日常消費」に強いモールなのかもしれません。

ヘルメット市場(3モール類似傾向型※時事上昇型)

2023年4月1日より、道路交通法の一部改正により、自転車を利用する全ての人にヘルメットの着用が努力義務となりました。改正以前は13歳以下の幼児や児童が自転車利用時にヘルメット着用の努力義務がありましたが、今回の改正で「大人」も対象となりました。
これにより、大人用ヘルメットがオフライン市場で一時欠品するなどの現象が起きていましたが、法改正などによる時事の影響は3大ECモール市場にどのような影響を与えたのでしょうか。確認していきます。

図4:ヘルメット市場 季節指数推移

例年3月・4月にかけて季節指数が上昇するヘルメット市場ですが、法改正の起きた2023年の動向は大きく変化しております。特に今回着用努力義務となった「大人用ヘルメット」の季節指数が大きく上昇したことが確認できました。また、施行開始日が4月1日ということもあり、「4月」に需要が高いことも特徴です。これにはいくつかの可能性があり、報道量(施行前より施行直前・直後の方が多くのメディアで報道されることが多い)による影響や、「オフライン市場」での欠品からの流入などが考えられます。2023年のヘルメット市場の変動は、翌年には起きない可能性が高いですが、このように法改正による影響がオフライン市場だけでなく、EC市場にも一過性の需要変動を与える良い例です。

ランドセル市場(3モール非類似傾向型)

ここまでは、市場全体の動向とは違う動きをするジャンルの一例を挙げてきましたが、動向自体は3モールとも類似した動きでした。次は「季節性」がありながらも、「動向」がモールによって異なるジャンルの一例の紹介です。今回はランドセル市場を例に確認していきます。

図5:ランドセル市場 季節指数推移

モール別推移をみると、市場全体(売上合計の平均推移)ではEC市場のランドセル市場は5・6月がピークとなります。
モールAは市場全体の推移と類似した動きをしていることが分かります。
モールBはモールA・モールBと異なり、4月~9月まで季節指数が低く、3月にピークを迎えます。
モールCは市場推移と類似する一方、8月には異なる動きをしています。
このように、モールによる季節指数の違いはページ構成や属性、需要による違いより起きていると思われます。EC市場全体の平均単価が3,000円台の中、ランドセルは22,400円と高額な製品です。各モールの特徴を抑え、適切なタイミングで展開することで、在庫リスクやチャンスロスの減少へつながる為、モール毎に需要時期が異なるジャンルの把握は大変重要です。

カニ市場(3モール一極集中傾向型)

最後に、一定の時期に季節指数が一気に集中するジャンルの一つである、カニ市場を紹介します。「EC市場でカニ?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、こちらのランキングをご覧ください。

図6:2023年12月、3大ECモール売上上位TOP10(ショップSKU単位)

ランキングの「食品」、実は全て「カニ」なんです。12月単月で如何にカニの売上が高いかが分かる内容ではないでしょうか。カニ市場の売上は11・12月に集中しており、この2カ月で年間カニ市場の7割以上を占めます。

図7:カニ市場 季節指数推移

季節指数は11月のカニ漁解禁から大きく上昇し、12月には全モールで「600」を超えます。これは年間売上平均の6倍を意味しており、非常に高い数値です。3大ECモールにはこのような一極集中で上昇するジャンルがカニ以外にもいくつか存在します。一極集中ジャンルに関しては、その動向により注意を払う必要があります。

まとめ

今回は3大EC市場全体の動向、各モールの動向、季節性の高いジャンルをいくつかのパターンに分け、確認しましたがいかがだったでしょうか。モールA・B・Cが3大ECモールのどれに当たるか予想はつきましたでしょうか?モールの動向を掴むことが重要とは理解しながらも、なかなか掴みづらい部分も多い中、Nint ECommerceを活用することで、こんなにも簡単に、ハッキリと各モールの動向を把握することができました。

次回はNint ECommerceのメーカー分析機能を活用し、「日本のEC市場における中国(海外)ブランドの成長」を見ていきたいと思います。特定ジャンルにおいて、中国ブランドの台頭は目を見張るものがあるかと思います。どのようなジャンルで、どれくらいの割合で進出してきているのか、一例を出しながら確認する予定です。EC市場における海外ブランドの進出が気になる方も、そうでない方もEC市場のイマを知る一助となると思いますので、お楽しみに!

備考

■本記事の転載・一部転載に関しては、株式会社Nintへご連絡ください。
■調査対象:Nint推計データNint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2021年1月~2023年12月
※本稿における Nint 推計データは 2024年2⽉時点のものを使⽤
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto)
編集:村上 咲(Saki Murakami) 瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)

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著者

山本 真大

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタート、IT業界、流通業界・他業界でのメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通の知見を学ぶ。
EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在のアナリスト業務に従事。
EC市場を分析したブログ記事を中心に執筆中。