ユーザー視点で考えるLINEで会員証表示とロイヤルティプログラム 【「EC事業者のLINE活用、エンドユーザー(生活者)はどう捉えるのか」vol.3】

岡田 風早

我々はLINE公式アカウントのパートナーをやっているので事業会社からLINEと別のプラットフォームの比較について聞かれる機会がよくあります。いつもは立場があるんですが、前回同様に今日も仕事のことを忘れて、よく買い物をする1ユーザー視点だと実際にどう思っているのかを書こうと思います。

今回はLINE上で表示させる会員証施策とその先にあるロイヤルティプログラムです。特にロイヤルティプログラムは今ホットなトピックだと思うのですが、事業者視点で語られることが多いので、ユーザー視点で自分が実際にいいなと感じたロイヤルティプログラムについて書きました。

LINEで会員証を表示させる施策

第一回でLINEと自社アプリについて書きましたが、物理ベースの会員証から自社アプリのダウンロードかLINEミニアプリのデジタル会員証への移行が進んでいます。

第一回 LINEと自社アプリ、ユーザーはどっちを好む?【EC事業者のLINE活用、エンドユーザー(生活者)はどう捉えるのか】

オンラインショップと連動してLINEアプリ上に実店舗で使える会員証を表示させる多くの施策はECサイトのマイページ上に会員バーコードを表示させており、そのマイページをLINEアプリ上で表示させています。

つまり多くのケースで会員バーコード生成と表示はLINE自体のサービスとは直接的に関係がないため、2024年6月13日LINEヤフー社から発表されたLINE Payサービス終了の影響はありません。

LINEで会員証を表示させる施策自体は、店頭でQRコードをカメラアプリで読み込んだりLINEのリッチメニューからワンタップするだけでサイトへの認証を経てセキュアな形で会員バーコードを表示させるので、ユーザー視点でみても店頭での体験はとても良いです。レジ前で起こりがちな渋滞を防げるメリットもあり、店頭のオペレーションの負荷が減ります。

オフライン(実店舗)で会員バーコードを読み取り、購買データを活かすロイヤルティプログラムも、単純なポイント付与から会員ランクごとに特典を分けたものなど多様なロイヤルティプログラムが存在しています。

実際に体験してみたユーザー視点では、商材によって適したロイヤルティプログラムが異なるという印象です。ポイント派かランク派かという二極化の話ではないと思ってます。

商材に合わせたロイヤルティプログラム

自分が今まで体験したロイヤルティプログラムで一番良かったのは某化粧品メーカーで、ランクとポイントのハイブリッドタイプです。
1回の購入金額とランクが上がるほどポイント還元率がアップし、別途ランクに応じた特典が付与されます。
一回の購入単価が5,000円くらいかつ定期的に買う消耗品なので、ポイント付与は次回の購入やついで買いの後押しになりました。

全ての商材でポイントとランクのハイブリッドタイプだと嬉しいかと言われるとそうでもなく、逆に購入単価が高い商材だとポイントは微々たるものになるケースが多くメリットに感じにくいです。購入単価が高いか低いか、消耗品かそうでないのかというのがロイヤルティプログラムを構成するための重要な要素かと思います。

例えば消耗品で言うと化粧水やシャンプーなど扱う商品数がそれなりにあり、商品単価が3,000円くらいまでであればポイント付与は次への購入に繋がりやすい感覚があります。食品も同様でECでよく扱われているスイーツなんかも同様の部類ですね。

有効期限が切れそうなポイントがあり、商品単価が低ければ支払額が少なくなるので、じゃあポイント使って買っちゃおうかなという気持ちになります。逆に商品単価が高ければ支払額が多くなるのでポイントは失効でもいいかなとなりがちです。

例えばアパレルで商品単価が10,000円を超えてくると、数百円のポイントが残っててもじゃあ買おうとはなりにくいですよね。そう考えると商品単価が10,000円を超えてくるアパレルや消耗品ではない商材であればポイントはやらずに、ランク別に特典を設けたロイヤルティプログラムに振り切ってもいいのではと思います。

ランク別に特典を設けたロイヤルティプログラムの課題

消耗品以外でロイヤルティプログラムに向かないケースは高単価かつ低リピート商材です。一回買うとしばらく買う機会がないのでそもそもロイヤルティプログラムが必要ないですね。家庭用プロジェクターやキャンプ用の大型バッテリーなどですかね。

ただし高単価低リピート商材だけでなく様々なガジェットを扱う某電子機器メーカーのように扱う商品が幅広いとロイヤルティプログラムはユーザーにとって有益になるので、ショップで扱う商品の幅広さが購入回数へ与える影響は大きいです。

この会社では、最近マイレージプログラムがリニューアルされました。ポイントを廃止し、会員ランク別の特典に振り切ったロイヤルティプログラムになっており、今後に注目です。

ポイントにも期限があるように、会員ランクの多くは年間の購入総額で決まります。毎年購入総額がリセットされるわけですが、ユーザー視点だと今までの購入金額がリセットされてしまう部分はもやっとすることがあるのではないでしょうか。自分はあります。

管理する企業側としてはできる限り複雑なロジックにしたくないという思惑や、リセットしないと新しいユーザーが追いつけなくなってしまうというのは理解しつつ、今年初めて10万円買ってくれたユーザーと10年間毎年1万円買い続けてくれたユーザーでは、前者が評価されてしまうところです。

単純比較はできないものの、心情的に長く買い続けてくれたユーザーも別軸で考慮してくれたらいいのにとユーザー視点では考えますが、仕事として考えるとランクを構成する要素をあまり複雑なロジックにはしたくないからこれはこれで割り切るべきと思ったりします。難しいですね。

どれだけ長く買い続けたブランドでも年間で1〜2回しか買わないブランドのランクはいつもブロンズ(一番下)で、そんなケースではロイヤルティプログラムはあってないようなものになります。致し方なしですね。

アパレル関連でこれは良かったというロイヤルティプログラムに出会ったことはありませんが、基本的には買った商品が気に入ってるので、それ以上求めるものはなく特段不満もなかったりします。

商品保証が特典となるメンバーシッププログラム

これは番外編です。某アウトドア・ギアメーカーではLIFETIME WARRANTYを採用しています。これは、サイトへ会員登録して商品のタグにあるユニークなIDを登録すると生涯保証が受けられるという仕組みです。生涯とは言わず商品保証の期間延長はロイヤルティプログラムの特典として嬉しい要素になりますね。

品質が良い商品だと買い換える機会が少ないことに加えて、使えば使うほど愛着も沸くので、こういったアプローチはブランドに対する安心感も生まれる良い施策だと思いました。

まとめ

会員証のデジタル化のメリットはユーザー視点でとてもわかりやすい反面、ロイヤルティプログラムは要素が増えれば増えるほど一時期の携帯電話の料金体系のようになってしまうため、可能な限りシンプルでメリットが伝わりやすいものが好まれると思います。

個人的にはロイヤルティプログラムはユーザーに沢山買ってもらうための施策ではなく、結果的に沢山買ってくれたユーザーへの副次的なものなので、年に1〜2回しか買わないユーザーが損はしてないけど何となく損をしたみたいな気分にならない見せ方もあっていいんじゃないかなと思ってます。

しかし事業者視点で考えると商材次第では楽天やYahoo!ショッピング、Amazonなどのモールのポイント施策を意識する必要もあり、ポイント施策は会計処理も絡んでくるので一筋縄ではいきません。ロイヤルティプログラムのベストプラクティスは当面議論が続くでしょう。


著者

岡田 風早 (Kazahaya Okada)

ソーシャルPLUSのカスタマーサクセスとして2015年にフィードフォースに入社し、プロダクトマネージャーを経て執行役員に。2021年9月にソーシャルPLUSが分社化して現在の役職に至る。
LINEヤフー社のTechnology PartnerとしてLINEログインやミニアプリなどのAPI活用、Sales PartnerとしてLINEのCRM活用、またShopify Partnerとしてエンタープライズ向けのShopify × LINEやShopify Flow・メタフィールドの活用、データ設計を得意とする。

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