ECで実店舗の接客を実現するには?
今回からECで「実店舗の接客を実現するには?」について連載をすることになりました。よろしくお願いいたします。
O2O、オムニチャネルといったキーワードが流行したように、実店舗とECの連携というのはホットなテーマです。店舗、ECにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、トレンドでいえば商売というものが登場して以来の歴史がある店舗に較べて、たかだかここ十数年のECのほうが変化が激しくまた伸び率も高いのは間違いありません。比率でいってもまだECは数%程度ですから、ECと店舗を並べて考えるのではなくて、あくまでも店舗というものをベースに置いてそこからECを見る、というスタンスが妥当です。
ECには店舗にはない利点も数多くありますが、商売のノウハウという点については店舗に学ぶべき点が多々あります。そもそもECの持つ機能というのは「商品検索」「決済」「配送」の3つしかありません。この中で商売という意味で最重要なのが「商品検索」です。
検索というのは本来「捜し求めること」
商品「検索」というとGoogleのような検索「機能」を思い浮かべるかもしれませんが、検索というのは本来「捜し求めること」です。つまり商売についていえば、消費者が商品を捜し求めることが「商品検索」です。ですのでECのトップページに売れ筋の商品を掲載して、それを喜ぶ消費者が多ければそれはそれで良い商品検索であるといえます。
また店舗において店員がお客さんに商品をオススメするのも商品検索ですし、「こういうものを探している」と尋ねられて適切な商品を提示するのも商品検索です。「商品検索=消費者と商品の出会い」の中に、「検索機能(キーワード検索など)」があるといえます。同じ検索という用語なのでわかりずらいですが、これは重要な違いです。
またレコメンドも同様です。一般的にレコメンドというと「Aを買っている人はBも買っています」という、いわゆる協調フィルタリング的なものをイメージすると思います。ただ本来のレコメンドというのは、協調フィルタリングに限らず人気商品やディスカウント品など、とにかく消費者が出会って喜ぶ商品の提案です。
レコメンドというよりオススメというほうがわかりやすいかもしれません。筆者は良く「広義のレコメンド=オススメ」と「狭義のレコメンド(協調フィルタリング)」という表現をします。つまり、「商品検索=オススメ=広義のレコメンド」であり、その中の具体的な機能に「検索機能」であったり「協調フィルタリング=狭義のレコメンド」があるのです。紛らわしいのでこの連載においては、消費者と商品の出会い、マッチングを商品検索=オススメと表現し、具体的な機能は検索機能およびレコメンド機能=協調フィルタリングと表現します。
店舗とECの商品検索=オススメの違い
ここで店舗とECの商品検索=オススメの違いについて考えてみましょう。まず店舗の場合ですが、大きく「陳列」「接客」の2つがあると言えます。これをECにあてはめてみると、陳列はECサイトの構成にあたります。ナビゲーションやページへの商品の掲載などです。売り手側が「これは売れる」と思うものを万人に向けてアピールします。
それに対して「接客」に相当するのは主に「検索・レコメンド機能」です。レコメンド機能=協調フィルタリングはいわば、「これ買います」と言ったお客さんに対して「こちらもいかがですか」と薦めているようなものでこれは精度は違いをさておけばECと店舗でさほどの違いはありません。
次に検索機能ですが、ECサイトにおける検索機能というのは消費者が使い、場合によっては駆使して商品を見つけ出すものです。店舗でいうと店員というより端末のような感じです。一方店舗の接客の場合、店員に「こういった商品を探しているんですが」と問い合わせると、消費者より商品知識に長けた店員が適切な商品検索をしてくれます。
買おうとしている商品まで案内してくれたり、バックヤードから出してきてくれたり、他店舗の在庫を調べてくれたり、メーカーからの入荷予定を確認してくれたり、もしくは代替のより良い商品を提案してくれたりなどです。
まさに店員によるオススメです。つまり店舗の接客は「検索機能」「狭義のレコメンド機能」だけではない商品検索の機能があり、それは主に店員の知識と経験によってまかなわれています。端的にいってしまえばそれは「商品の提案」であると言えます。
店舗では商品検索の負担というか責任が店舗側にあるのに対して、ECではその大部分が消費者側にあるのです。これが現在のところ、店舗とECにおける商品検索の一番の違いです。このため、ECにおいて店舗のような接客を実現するには、商品検索の強化に着目していく必要があります。
店舗が提供している、単純な検索機能・レコメンド機能ではない商品検索、つまり商品提案をいかにECに実装できるか、次回はこれについて考えていきたいと思います。