ケースから読み解く「オムニチャネル」Vol.2

村石 怜菜

前回は、オムニチャネルにプロジェクトとして取り組むケースについて解説しました。2回目の今回は、「現場主導のオムニチャネル」について解説します。

Vol.1 http://ecnomikata.com/column/detail.php?id=4941
Vol.3 http://ecnomikata.com/column/detail.php?id=5396

最近、EC運営担当者から以下のような声をよく聞きます。

・ECサイト上でリアル店舗の世界感や雰囲気を伝えたい。
・リアル店舗の接客に自信がある。ECサイトでも同じおもてなしを実現したい。
・ECサイトで注文して、店舗で受け取れるようにしたい。すぐに商品をお届けしたい。
・リアル店舗でもECの運営を行い、リアル店舗とECのギャップをなくしたい。
など。

どの項目にも共通して言えることは、「リアルやECサイトといったチャネルに関係なく、お客様により良い商品・サービスをお届けしたい」ということです。まさにオムニチャネルの真意である「顧客起点」の考え方と言えますが、当の担当者は、自分たちが考えていることがオムニチャネルである、ということを認識していない場合も少なくありません。

オムニチャネルという言葉が溢れ、「オムニチャネル=顧客データや商品・在庫データを統合すること」という認識が強くなりすぎ、結果「オムニチャネル=過大な投資が必要であり、大企業がすること」という固定概念を持ってしまっているからかもしれません。そのため「自分達が実現したい内容はそれよりも小規模だから、オムニチャネルではない」と思ってしまうようです。しかし、「オムニチャネル=“顧客にシームレスな購買体験”を提供すること」ということを理解すれば、企業規模の大小が関係ないことは明らかです。

今やれることをやる

リアル店舗との連携・連動における現状を棚卸ししてみましょう。取り組むべき事柄にも関わらず、着手できていない盲点が意外に多いことに気付くと思います。今すぐ着手できる改善点を洗い出しましょう。

■リアル店舗との連携
・リアル店舗の顧客にECサイトは認知されていますか?リアル店舗でのECサイトの認知訴求はしっかりできていますか?
・リアル店舗とECサイトの販促企画は連動できていますか?
・社内の全スタッフがECサイトの存在をきちんと認識していますか?また店頭スタッフがECサイトの利用促進を顧客に案内できますか?

■ネット広告・メディア
・リスティングなど、ネット広告の予算・運用は最適ですか?必要以上に予算を投下していませんか?
・SNSやメルマガ、ブログなどの媒体を積極的に運用・活用していますか?

経産省によると日本のEC化率は約4%です。まだ4%、と思う人もいるかと思いますが、視点を変えると、これはリアル店舗の方がECサイトよりも顧客との接触面積が圧倒的に大きいということを示しています。ECサイトだけで試行錯誤する前に、リアル店舗の力を活用しない手はありません。まずは、リアル店舗の顧客にECサイトを知ってもらえるか?どれだけリアル店舗の顧客をECサイトへ誘導できるか? を検証し、実行しましょう。

ECサイトの販促予算を見直し、使途をリアル店舗にシフトするのも一つの手です。すでにリアル店舗のファンである顧客に対し、ECサイトの認知を高め、誘導する方が、確率も高く効率的であることは間違いないでしょう。

例えば、リスティング広告。ネットで広告費を使い、広く潜在客を取り込むという考え方ももちろん重要ですが、無理にネット広告で予算を消化しようとするのではなく、リアル店舗でECサイトを告知するためのポスターやショップカードなどの紙媒体を制作したり、店頭のデジタルサイネージでも利用できる共通の動画コンテンツを制作してみたり、リアル店舗でのECサイト訴求に予算の使い道をシフトすることをおすすめします。

まとめ

・オムニチャネルに企業規模は関係ない。
・“顧客にシームレスな購買体験”を実現できているかチェックしよう。
・「リアル店舗がある」ことは最大の強み。その恩恵を享受しよう。

次回は、「現場主導のオムニチャネル② オムニチャネル構想の設計について」を解説します。


著者

村石 怜菜 (Reina Muraishi)

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日本女子大学卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、
Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイト構築・運用に携わる。
専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意とし、
顧客企業のオムニチャネル戦略の実行を支えている。

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