【解説】イーザッカマニアに見るECチャネル戦略。モール依存と多角化の教訓。

山本 達巳

「ECモールへの依存度が高いのはリスクじゃないか?」「チャネルを増やしたいが、失敗したくない」 EC事業者の皆様、チャネル戦略についてこのようなお悩みはありませんか。
本記事では、イーザッカマニアストアーズ運営会社ズーティーの事例を基に、ECチャネル戦略を専門家が徹底分析。楽天市場での成功の裏にあったモール依存リスクや、多角化の挑戦とその難しさを具体的に明らかにします。
この記事から、プラットフォーム依存への具体的な備え方や、自社のリソースと目標に合わせた最適なチャネルミックスを見極めるための実践的な視点を学ぶことができます。
あなたのチャネル戦略を客観的に見直し、リスクに強く持続可能な成長を実現するための、次なる一手が見えてくるはずです。ぜひご一読いただき、今後の戦略立案にお役立てください。

楽天市場での成功! イーザッカマニア躍進のエンジン

楽天市場での成功! イーザッカマニア躍進のエンジン(出典:イーザッカマニアストアーズ)

■「楽天のスター店舗」はいかにして生まれたか

ズーティー社が「イーザッカマニアストアーズ」として楽天市場に出店したのは2002年のことでした(出典:カモン!ズーティー 公式サイト 沿革ページ)。楽天のECコンサルタント(ECC)との連携や、出店者向けイベントへの参加を通じて、プラットフォームの活用ノウハウを吸収し成長してきました。

顧客視点を重視したユニークな商品展開や、「テンション高めの女子をつくる」という理念に基づいた店舗運営が多くのファンを惹きつけ、イーザッカマニアストアーズは瞬く間に頭角を現します。

長年にわたり「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の常連となり、レディースアパレルジャンルを代表する店舗へと成長(出典:ameblo.jp/shotanishio/ 「【衝撃】楽天総合4位の“あの名店”が閉店・破産へ…」, 日本ネット経済新聞)。その成功ぶりは、まさに楽天市場が生んだスター店舗の一つと言えるでしょう。

■プラットフォームが生んだ成長と大きな影響力

楽天市場という巨大なプラットフォームは、ズーティー社の成長に計り知れない影響を与えました。モールが持つ圧倒的な集客力と、確立された顧客基盤を最大限に活用することで、自社単独では成し得なかったであろう急速なスケールアップを実現したのです。

最盛期には「総合4位」にランクインし、「化け物級」とまで評されるほどの人気を獲得。楽天市場だけでも数十億円規模の売上を誇ったとされ(出典:ameblo.jp/shotanishio/ 「【衝撃】楽天総合4位の“あの名店”が閉店・破産へ…」)、これが会社の屋台骨を支える大きな柱となっていました。

この楽天市場での成功体験は、ブランド全体の認知度向上に大きく貢献し、後のYahoo!ショッピングやAmazon、ZOZOTOWNといった他チャネルへの展開(出典:カモン!ズーティー 公式サイト 沿革ページ)、さらには全国への実店舗網拡大を進める上での強力な推進力となったことは間違いありません。

まさに、楽天市場はイーザッカマニア躍進のエンジンだったのです。しかし、この大きな成功には、見えにくいリスクも孕んでいたと推察します。

チャネル戦略の課題。ECモール依存のリスクと多角化の難しさ

チャネル戦略の課題。ECモール依存のリスクと多角化の難しさ

■単一モール依存がはらむ構造的なリスクとは?

特定のECモールへの売上依存度が高い状態は、安定した収益基盤に見える一方、構造的なリスクも内包します。最も大きいのは、プラットフォーム側の運営方針にビジネスが大きく左右される点です。

例えば、規約変更、手数料改定、検索アルゴリズム変動などが、売上や利益に直接影響を与える可能性があります(出典:日本ネット経済新聞)。また、モール内の激しい競争は価格圧力や広告費高騰を招きやすく、利益確保を難しくします。さらに、顧客データを自社で直接管理・活用しにくい点は、長期的なCRM戦略において課題となり得ます。ズーティー社がこれらのリスクにどう直面したかは不明ですが、プラットフォーム依存に伴う潜在的な脆弱性は常にあったと言えます。

■多角化の挑戦:自社EC・他モール・実店舗の運営実態

ズーティー社はリスク分散のためか、楽天市場以外にも積極的に販路を広げていました。自社ECサイトに加え、Yahoo!ショッピング、Amazon、ZOZOTOWNなど主要ECモールへ次々出店。さらに、全国主要都市に実店舗網も拡大しました(出典:カモン!ズーティー 公式サイト 沿革ページ)。

多角化は理にかなった戦略ですが、複数チャネルと実店舗網の同時運営はオペレーションを複雑化させます。在庫管理、チャネル別マーケティング、人材確保、運営コスト増大など、多くの課題が生じます。

特に実店舗は、コロナ禍で休業等の影響を大きく受け、経営の負担となった可能性が指摘されています(出典:株式会社 帝国データバンク[TDB], ameblo.jp/shotanishio/ 「【衝撃】楽天総合4位の“あの名店”が閉店・破産へ…」)。結果として、意図したリスク分散効果よりも、運営コスト増や経営資源分散のマイナス面が大きくなった可能性も考えられます。

イーザッカマニア事例から学ぶ、これからのECチャネル戦略

イーザッカマニア事例から学ぶ、これからのECチャネル戦略

■プラットフォーム依存リスクへの備え方

大手ECモールへの出店は有効ですが、特定プラットフォームへの依存はリスクを伴います。備えとして、まず自社ECサイトの戦略的強化が挙げられます。ブランド発信やCRMの拠点として、顧客との直接的な関係構築を目指しましょう。これによりプラットフォームの意向に左右されにくい基盤が築けます。

また、モールの規約変更等の動向把握と対応準備も不可欠です。可能であれば他の収益源を模索するなど、常にリスクを意識し、依存度をコントロールする視点が重要となります。


■自社に最適なチャネルミックスの見つけ方

多角化が必ずしも正解とは限りません。ズーティー社の事例は、運営コスト増や複雑化のリスクも示唆しています。重要なのは、自社のブランド特性、ターゲット、リソースを冷静に分析し、最適なチャネルミックスを見極めることです。

各チャネルの役割(集客、リピート、収益など)を明確にし、優先順位をつけましょう。「選択と集中」も時には有効です。データに基づき効果測定を行い(出典:Ecbeing)、戦略を柔軟に見直すことが求められます。実店舗があればOMO戦略の視点も取り入れ、継続的なデジタル投資で効率化を図りましょう。

ズーティー社の経験から学び、自社に合ったチャネル戦略を継続的に見直すことが、持続可能な成長の鍵となります。


つきみ株式会社
https://tsukimi.ne.jp

【X:https://x.com/tatsumin_ec
【note:https://note.com/tatsumin_ec


著者

山本 達巳

静岡市出身。関西学院大学卒業後、カナダ留学時に輸入品のネット販売を手掛けたことをきっかけに、EC業界へ参入。
EC事業者として7年の実績を持ち、現在はECコンサルタントとして30社以上の企業支援に携わる。代理店ビジネスやOEMなど、様々な物販手法を自身で実践し、アウトドアブランドのD2C展開にも取り組む。
現在はAmazonを中心としたEC運営支援に注力しながら、SNS運用、クラウドファンディング、卸販売などEC周辺領域まで幅広くサポート。クライアントのブランド価値向上を第一に考え、持続可能な成長戦略を提案している。
2024年、さらなる飛躍を目指してECコンサルティングを行うつきみ株式会社を創業。 「挑戦と可能性の弧を描く」をモットーに、クライアントの可能性を最大限に引き出すサポートを行っている。
これからは、ECを通じて地方の魅力を発信し、地域活性化とインバウンド促進の架け橋となることを目指している。

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