他人事ではないキュレーション問題、EC業界への影響と注意点
DeNAのキュレーション問題とは
2016年11月、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営するキュレーションプラットフォーム「WELQ」を発端とする、キュレーションプラットフォームに関する問題が世の中を大きく騒がせた。
DeNAのキュレーションプラットフォーム事業は、住まいやインテリアに特化したキュレーションプラットフォーム「iemo」を運営するiemo株式会社、女性向けファッションに特化したキュレーションプラットフォーム「MERY」を運営する株式会社ペロリを買収した2014年9月より本格的に始動している。その後、新ジャンルのキュレーションプラットフォームが加わり、計10サイトの運営を行っていた。
問題が起きたのは2016年11月、DeNAのキュレーションプラットフォームの1つ、医療・健康情報サイト「WELQ」が、信憑性に乏しい記事を掲載しているとの指摘があり、11月29日に全記事を非公開化、その後、著作権上の問題も含め他のサイトでも指摘が相次ぎ、12月1日には9サイトで全記事を非公開化、12月7日には緊急会見を開催し、残る1サイトであるMERYでも全記事が非公開化された。
現在、DeNAはこの一連の問題に関する第三者委員会を設置し、事実関係の調査及び原因の究明並びに必要な改善案の作成を進めている。
キュレーションの何が問題なのか
そもそも「キュレーション」とは、インターネット上に存在する様々な情報を分類、意味づけし、まとめること。キュレーションを行う人を「キュレーター」とも呼ぶが、もともとキュレーターとは、博物館や美術館、図書館などの資料を収集・蓄積する文化施設において、資料の鑑定や研究、管理を行う人物のことを指した。
現在ようなキュレーションサイト(プラットフォーム)の始まりは「NAVERまとめ」などのまとめ系サイトと言われる。そこからニュース系のキュレーション、さらに様々なジャンルに特化したキュレーションサイト、キュレーションプラットフォームが誕生していった。NAVERまとめのサービス開始は2009年と意外に古いが、キュレーションサイトが盛り上がりを見せてきたのはここ2〜3年ほどだろう。しかし昨年末より、DeNAの問題だけにとどまらず、キュレーションサイトという仕組み自体が問題視されるようになってきている。
キュレーションサイトは、いずれのサイトでも、そのサイトのテーマに沿った情報をキュレーターが集めコンテンツを作成するという基本の仕組みは共通している。ここでサイトのコンテンツを担保するのが、サイトの運営者がキュレーターやそのコンテンツ作成に対してどういった基準を設けているか、また作成されたコンテンツに対するチェック体制がどうなっているかという点だ。現在キュレーションサイトで起きている問題は、この点に端を発している場合が多い。
具体的には、コンテンツの作成を安価な価格で外部ライターやアルバイトなどに依頼し、その作成基準やチェック体制も曖昧であるために、信憑性に乏しいコンテンツ作成や、文章や画像の盗用など、質の低いコンテンツが量産されていることが指摘されている。さらに問題を大きくしているのが、運営会社がSEOやマーケティングノウハウを駆使することで、そういったコンテンツが質の高いコンテンツよりも検索上位に来てしまい、事実でないことが広まったり、本来の文章や画像を作成した人の利益を侵害してしまうという事態だ。
ECサイトのコンテンツ作成も要注意
今回、DeNAの問題をきっかけとして、前述のようなキュレーションメディアの問題が一気に明るみに出た。キュレーションだけでなくインターネット上のメディアは、同様の問題を生じやすいと言える。そうならないためには、コンテンツ作成にあたり、まず、正しい基準とチェック体制を設けることが必要だろう。もし文章や画像を引用、転用する場合は正しい手続きを踏むことが求められる。
手間やコストはかかるが、実際にそういった体制のメディアはあるし、そもそもメディアとして当然のことだ。それがインターネットの手軽さや利便性の中で薄れてきていたわけだが、キュレーションを始めインターネットメディアが価値ある存在であり続けるためには、今一度見直しが必要なタイミングに来ていると言えるのではないだろうか。
また実は、ECサイトでも同様の注意が必要だ。最近はメディアやキュレーショサイトのようなコンテンツ形態を取るECサイトが増えていたり、メディアやキュレーションサイトからECへとつなげたりという形も生まれている。競合他社と差別化を図るために、顧客の興味関心を惹くコンテンツをどう作るかということは、ECサイトにとって重要な点となっている。だが、いくらインパクトのあるコンテンツであっても、良質な内容でなければ必ずどこかで問題が起こる。
メディアに限らず、インターネット上で情報を発信する存在であれば、今回の問題は他人事ではない。情報の発信源として責任を持ったコンテンツを作成できるかが、2017年は問われてくるのではないだろうか。