3年で5倍成長の裏にはオムニチャネル〜メガネスーパー川添氏語る(ecbeing/Amazonセミナー第二弾)
先日、アマゾンジャパン本社で開催された「Amazonログイン&ペイメント定期購入導入効果セミナー」を開催され、その中で、メガネスーパー デジタルコマースグループ ジェネラルマネジャー川添隆氏が自らのECの取り組みとオムニチャネルの関係性について、話を聞かせてくれたので、ここで披露したい。
(参考)セミナー潜入第一弾は… Amazon Pay定期購入で何が変わる?
https://ecnomikata.com/ecnews/13582/
メガネスーパーのここまで。
私の説明をさせていただきますと、「メガネスーパー」で、EC事業をやっています。これは、コンタクトレンズがメインになっていますが、EC事業とオムニチャネルの推進、あとはデジタルを使った店舗の運営フロー、デジタルマーケティングをやっています。前職まではアパレルの業界にいて、マルキュー系のアパレル企業にいて、そのときからecbeingとは付き合いがあります。
メガネスーパーもそうなんですが、赤字の会社を再生するというフェーズでECに関わることが多いです。そんな経験も踏まえ、本日は3つの事についてお話をしようと思います。まず、「メガネスーパー」は今年41期で「アイケアカンパニー」というものを掲げる企業で、業績でいうと、昨年、8年の赤字から脱却できました。
その赤字の起点として、「目の健康の解決策を提案していこう」という方向性がありました。簡単にいうと、物売りから事売り、体験軸でお客様にメガネやコンタクトレンズを提供していこう、というわけで、我々は、そのソリューションとして商品を提供しています。メガネというと「もの」だと思われていますが、例えば、今の時点と夜の時点とメガネの度数を測ると、微妙に違うんです。もちろん、今日か昨日かでも、また違っていく。そういったところの働きかけ方とか、生活環境とか、何が最適化をヒヤリングして、おすすめをするというところに重きを置いています。
会社における、ECの立ち位置としては、いわゆる拡販というところでやっています。要は、店舗と連携していきましょうということです。今、330店舗ほど、構えていますが、自社ECはスタートした時、全店舗の50番目くらいの売上でした。それが、今や2番目まできました。全社としては昨年157億円ですが、今のECの売り上げとしては3億円ほどになります。今期も順調に推移し、弊社で言えば、モールよりも、自社ECの商いを増やして、営業利益を増やしています。自社ECは三年間、横ばいだったんですが、まさにecbeingとリニューアルをして、そこから右肩上がりになっています。
「販売手法」と「在庫MD」と「集客」の3軸がポイント
どのくらい伸びたかというと、3年で約5倍まで成長させています。その中で、私自身がECを上げるためには、こうやったほうがいいというメソットがありまして、それは、「販売手法」と「在庫MD」と「集客」の3軸です。あとは、どういったチームで作っていくか、それに加えて、それぞれに対して、チームでどういうアクションを作って行くのがいいのか、ということを考えて進めています。
「販売手法」として、我々の場合、実店舗を持つ小売店としての小売り事業です。実店舗がメインなので、実店舗に近いメリットをと考えており、それが、体験というところを作っていこうという部分であり、当然、クリエイティブのところも意識しています。在庫MDは、ECで売れやすい商品を売っていくということなんです。たとえば、アパレルで言えば、在庫がZOZOに在庫があって、自社ECにはないという。我々でいうと、お店に在庫があって、自社にはないということがあるので、なるべく在庫を揃えていきます。「集客」という部分では、デジタルマーケティングで新規のユーザーを連れてこよう、という感じになります。これは、CPA高くなってもいいから連れてこようと思っています。なぜなら、まずはブランドを知っているお客様にきていただこうというのがあるからです。
この販売方法と、在庫を意識していくと、ある程度、売れるお店になってきます。在庫がないお店に集客しても売れないので、「販売手法」と「在庫MD」という、ふたつを足場を作って「集客」をしていくというのを順序立てていくというのを、これまでやってきました。
販売手法は、実店舗の存在を利用してECの存在感を出す
まず、「販売手法」ですが、ここは購入率に響いてくるところかと、思います。ただ、ECと店舗と差別化しようと思っていません。なぜなら、僕自身も服を買うときに、お店に行ってしまうこともあって、それはショッピングをするほうが、体験としては、豊かなのではないかというのはあります。買って嬉しい、接客されて嬉しい、というのがあるから、行くというのもあると思います。ここがポイントで、なので、逆にECで何ができるかというと、お店に近づけて行くことかな、と思っています。
その上で、ECにおいて、プラスアルファでできることは何かな、と思っていて、例えば、「決済」だったりするのかなと考えています。自分の店舗において、圧倒的に勝てないという店舗があったとして、そこに対して勝てないと思うのではなく、視点を変えて、何かしらお店でできることがあるんじゃないか、というのをやっています。
これまでやってきた取り組みでいえば、メガネそのものは売り上げとしてはまだ少ないです。それでも、体験性を盛り込んで、試着をして購入できるようにと、試着サービスというのをやっています。実際には、クレジットカードで仮与信を取ってもらって、それで実際に返品したりして、商品が確定したところで、購入するというようなことをしています。
というのも、メガネをECでクロージングするのはなかなか難しいからです。なので、「商品を見てもらえるのであれば、お店にきてください」ということで、商品の店舗の在庫を表示したりしています。あとは、コンタクトがそうで、最近は、Amazonログイン&ペイメントの定期購入をやっていて、これも、リピート性の高い商品だからこそ、やっているのですけれども、そこは効果があります。実際に、我々の売り上げを支える施策になっています。
配送の利便性を上げることがECの良さを実感させる契機に
そのほかでいうと、昨今、配送の問題が出てきていますが、我々もそこは意識しています。「受け取りたいけど、受け取れない」という実態を、「店頭受け取り」や「コンビニ受け取り」を始めることで対応しています。コンビニ受け取りは、佐川急便のサービスでやっています。推移としてみると、「店頭受け取り」が横ばいですが、「コンビニ受け取り」が徐々に増えてきています。
なぜかというと、こういうことではないでしょうか。特に、コンタクトレンズがそうなのですが、「なくなったけど、お店が開いていない。でもECで注文してもなかなか受け取れない」というニーズに、24時間受け取れるコンビニは、しっかり応えてくれています。結果的に、新規の比率もこの利用者というところで高いという結果が出ています。
お客様に直接、ヒヤリングもしており、そこはecbeingのアンケート機能を使っています。「そもそもメガネスーパーの通販サイトをなぜ使ってくれているのですか」と。そうすると、「メガネスーパーというブランドへの信頼感」という声が返ってくるのです。実はECサイトの今の利用者の100人いたら、85人は店舗を使っていない方です。なので、例えば「決済方法が、豊富である」など、がお客さんから支持を集めていることをちゃんと確認しながら、我々として、必要かつ新しいサービスを導入しています。
ウェブ接客ツールも積極的に導入
実際の運用面で見ると、去年、ECのキーワードで「Web接客ツール」というのが、結構話題になったと思うんですが、我々はそこでいろいろなものを併用していまして、「ゼンクラーク」というAI搭載型のクーポンサービス、「FLIPDESK」を活用したり、他、決済手段で行くと、コンビニ後払いとAmazonログイン&ペイメントを導入しています。VeJapanが提供する離脱防止サービスを提供したり、イーエージェンシーが使うカートリカバリーという仕組みでカートに入った商品をダイナミックでリマーケティングをかけるという広告もやっています。他、アールエイトで簡易的なMAツールも仕込んでいます。
こういったツールを入れると、ツールの費用対効果はどうか、と言われますが、実は、あまりそこは気にしていません。サイト全体の売り上げが上がるかというところを追っていきたいなと。ただ、個々のサービスは把握していて、「ゼンクラーク」も一定の成果を上げています。また、「FLIPDESK」も我々のサイトを見ると、例えば、クーポンみたいなものが出るのですが、レギュラーで言いたいこと、試着サービスをやっていますとか、リピート性の高いものであれば、定期便の規約を見せます。カラコンだと、売り上げのランキングを知りたいというニーズがあるのでそれを見せたり、5000円以上送料無料のたりないんで、かってくださいよというようなことをFLIPDESKでやっています。veJAPANで言えば、離脱するときのポップアップだったり、テスト購入した際のリマインドメール、こういったところをやっています。こういったところは、サイト全体でいうと、新規購入にきいてくるなと。
コンビニ後払いは、決済全体のシェアでいうと、25%がコンビニ後払い、これは狙いとしては代引きに比較するとお金を持たなくていいとか、宅配ボックスに入れるとかよりはいいと思ってやっていて、受け取り率、返品率が半分になっています
集客面での工夫は?
次は集客の部分で話をします。集客に関しては、売り上げ5倍になっているのですが、広告のコストはほとんど変えていません。ツールの費用は上がっているのですが、むしろ広告はちょっとずつ下がっていたりします。勝ちパターンは分かっていて、コンタクトレンズを売りたいとして、コンタクト 通販で出稿するとしましょう。CPAでそれをやっちゃうと、5000円〜10000円になっちゃうんです。それを下げる方法は、価格を下げるしかないんですが、価格を下げちゃうと利益が下がっちゃうので、普段はやめようと思ってやめています。
例えば、まずスマホの比率でいえば、施策であげられるんじゃないかなと思っていて、2013年11月から、ちょっと数字を載せていますが、翌月に40%にあがったのは、ecbeingに切り替えて全ページをスマホ対応したからなんです。あとは、7ヶ月間じわじわ上がってきているのですが、10%上がっているのは、LINEの公式アカウントを運用していますが、そこに毎回ECのリンクを載せています。あとは、2年くらいは劇的な施策の変化はないのですが、全体のスマホの普及率とか、接客ツールでのプッシュが効いているのかなと思っています。
どこから流入しているのかは、定期的に追いながら、でも、お客さんの層をどこに寄せたいというのは明確にはないです。ただ、どこからのお客様がホットかというのをみながら、週次で決めた施策をどこからやりましょうとか、新規が取れているのは、WEBの広告とコーポレートサイトなので、そこからきた人にFLIPDESKを見せましょうという議論を見せましょうという形でやっています。
コンテンツを巧みに使い分けて、最大限の効果を引き出す
メルマガはまだまだECは大事でしょと言われるところではありますが、今全配信で、週14回配信しているわけです。離脱率はどうなんですかとよく言われるのですが、一定なんですね。売り上げ自体は上がっています。細かく配信すれば、それでいいんですけど、フォローアップメールというのがあります。なので、これも使っています。ワンデーのコンタクトを買っていただいた方に、20日後にメールをお送りするということもやっていて、確かに購入率も上がっています。
メルマガは細かく分けて、One to Oneでやりたいんです。ですけど、それよりもまずは売れる店にすることを優先しようということでメルマガを配信しています。こういった特徴ですみ分けしています。あとはLINEのアカウントは積極的にやっていまして、今全部で、300以上のアカウントを持っています。LINE経由のECの売り上げの話をすると、700万人いる公式アカウントよりも、1万人のLINE@のアカウントのほうが売り上げが高く、倍ぐらい違います。
実際、公式アカウントは我々スタンプを3回やって、集めてきたので、必ずしも、メガネスーパーで買っていただいていないお客様もいらっしゃると思うのですが、お店も全く一緒で、全店舗のLINE@で、購入していただいたお客様のリピートのために積極的にとっています。費用対効果で見ると、LINE@はゼロ円でやっていますので、ROIは劇的に違いますが、これは使い分けだと思っています。
Amazonログイン&ペイメントが新規加入者増&購入増に貢献
その中で、ログイン&ペイメントの導入をしましたということなのですが、導入のきっかけは、シンプルで美しい。ログインをするだけで、住所情報を選択できるというのはすごいなと思いました。ECのアクティブのお客様がいるので、利用としては、利便性が高くなるよね、ということでもあります。
今では新規の方しか使えないようにしているのですが、ゲスト購入の時は、Amazonログイン&ペイメントが一位になっていて、僅差でクレジットカードが続いている状態です。定期購入を導入してみて、我々としてもコンタクトで定期購入で手応えを感じていたというのがありました。実際、結果として純増しています。3ヶ月間、そもそもの定期購入が6%増えていました。ただ、全体で行くと、18%増えていて、6%が他の決済なので、実質、12%はAmazonログイン&ペイメントです。これは意味があると言っていいでしょう。
我々としては、購入をいかに簡単にして行くかという部分にこだわっているので、私としては、このステップでオムニチャネルを考えています。オムニチャネルの話をすると、旗艦の連携とか、ポイント連携とか、という話が出て来ますが、私に言わせれば、まずはチームが必要です。あとは、デベロッパーさんとの交渉もしなければならないですし、お店のマインドも変えていかないといけないです。なので、全社的な仲間意識というのはすごく大事です。
商材ごとにかいかたが違うので、コンタクトレンズでオムニチャネルをやろうと考えているので、こういう概念でやっています。ECで売り上げあげたいとか、デジタルに寄せていこうなんて、微塵も思っていなくてですね、実店舗で勝負をしていきたいんです。そういうのも、我々が「アイケアカンパニー」であって、そのノウハウとか、知見とかが、我々の強みであるということを認識しているので、ここを生かしていって展開していく。ここがオムニチャネルに至るポイントです。
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川添氏にとっての、オムニチャネルは、ECサイトの責任者でありながら、実店舗の存在を理解し、ある種、その役割分担を明確にして、実店舗に頼れることは頼ってしまうところにある。でも、その代わり、ウェブしかできないことを突き詰めて考え、その中で様々な支援企業との結びつきの中で、検証をし続けているのも事実だ。このセミナー内容を聞いて、改めて、実店舗と ECのお互いが理解し合うことこそが大事で、その意識が、オムニチャネルの成果を最大化できるように思う。