ヤマト運輸、40年目の決断/配送料金値上げを遂に発表〜集配に協力で割引
ヤマト運輸(本社:東京都中央区 代表取締役社長:長尾 裕)は、デリバリー事業の構造改革を発表し、「クロネコヤマトの宅急便」の基本運賃の改定を発表した。まずは、9月末までに、宅急便基本運賃(税抜き価格)を、サイズに応じて下記のとおり改定する。
■60-80 サイズ:現行の運賃に一律140円を加算
■100-120 サイズ:現行の運賃に一律160円を加算
■140-160 サイズ:現行の運賃に一律180円を加算
なお、各宅急便サービスの付加料金について「クール宅急便」、「宅急便タイムサービス」、「超速宅急便」、「S-PAT9 時便」の付加料金は改定しない。
値上げもしつつ、割引制度も用意〜配送の常識を変える
また、割引制度を新設し、荷物の受け取りに際し、集配の効率化に協力する個人のお客さまに対し、新たな割引制度を導入する。この辺は、メルカリなどのフリマアプリを念頭に置いていそうに思う。
一つ目は、店頭端末「ネコピット」で発行したデジタル送り状の利用で荷物1 個につき 50 円を割引する、というもの。もう一つは、クロネコメンバーズ会員が発送時に直営店に持込みした発送荷物 1 個については、追加で 50 円を割引(現行の持込割引と合わせ、150 円を割引)するというものだ。
また、宅急便センター直送サービス(仮称)を新設し、届け先を自宅ではなく、直営店(宅急便センター)への直送を指定した場合、通常の宅急便運賃より荷物一個につき、50円お得なサービスを開始するとした。
なお、一部、サービス規格も、スキー宅急便、ゴルフ宅急便、スーツケース等において改定が行われているので、それも記載しておく。
■スキー宅急便(オールインワン型):現行の 140 サイズから 160 サイズに改定
■ゴルフ宅急便:現行の 120 サイズから 140 サイズに改定
■スーツケース:実サイズを査定し、現行の上限サイズを 120 サイズから 160 サイズに改定
ヤマト運輸の社内環境の改善も進め、結果、顧客満足度を高める
ヤマト運輸自体の労働環境を変化させるなどの取り組みに関しては、下記の通りとなる。まず、4月16日から、労働時間の管理を入退館管理に一本化し、タイムカード機能が組み込まれたタブレット端末を全国の営業所に導入、端末に社員証をかざすことで、始業・終業時間の記録と管理を徹底させる。また、お客様からのセールスドライバーへの直通電話を、昼の休憩時間と、午後7時以降はサービスセンターに転送するよう、オペレーションを変更した。
また、お客様に絡むところでは、当日再配達の受付時間を20時から19時に一時間繰り上げた。6月19日からは配達時間の指定枠を見直し、20-21時を19-21時の二時間枠に、12-14時の枠を廃止した。
年間の宅配便取扱量の約9割を占める法人のお客様、中でもその約半数を占める大口のお客様に、繁忙期の出荷調整、届け先への複数荷物をまとめて配達する仕組みの構造、クロネコメンバーズのデータ連携による届け先への事前お知らせ通知など、集配効率の向上や再配達の削減に向けた協力を、9月中をめどに依頼していくとした。
さらに、法人のお客様の契約運賃の決定プロセスを精密化、均一化するため、出荷量だけでなく、行き先、サイズ、集荷方法や、燃料費、時給単価の変動などの外部環境変化によるコスト変動などを組み込んだ、輸配送のオペレーションコストを総合的に、反映できる「法人顧客プライシングシステム」の導入を検討するとした。
その上、10月には、関西ゲートウェイが稼働されることになっており、それを契機に、宅配便ネットワークの最適化を図っていくとしており、厚木、中部、関西の3つのゲートウェイ間での幹線多頻度運行を実現させていく。具体的には、長大トレーラの導入による輸送力向上、車両の24時間稼働による輸送単価の軽減、また、ゲートウェイ間における循環型運行による長距離ドライバーの労働環境の改善など行う。
ヤマトなど、配送業社とECサイトの関係はどうなっていくのか?
ヤマト運輸の労働環境の変化に伴い、ここまで配達時間の指定などで変化を要してきたが、引き続き、値上げという新たな発表がなされたことで、今後、 ECサイトにも与える影響が出てきた。どうしても、ECサイトにおいては、発想的に、どうしても配送料を抑える形で利益を少しでも出そうという意識があって、配送業社とECサイトは常に、そこで色々なやりとりがかわされてきた。
配送業社のこのような現状に伴い、変化をしいられるだろうし、小さな額こそ、重なれば、利益に誤差が出てきて、後戻りができなくなる。改めて、仕入れと販売価格、セールに伴う値下げなど、改めてコストの計算をし直して、ECサイトにおける利益構造を見直す必要性が出てくるように思う。また、ヤマト運輸においても、値上げばかりが注目されるが、上記に記した労働環境の改善に伴い、どれだけ効率化を図りサービスの向上ができるか、ということが大事になってくるだろう。単なる値上げにとどまることなく、今後の配送業務のあり方を考える意味でも、一つ一つの改善がどのような結果をもたらしたのかの開示をしていくことをお願いしたいものだ。