JECCICA「ECデザイン大賞」発表!ファンを熟成する店はここが違う
5月12日、一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会(以下、JECCICA)による「第二回ECデザイン大賞」のプレゼンテーション&表彰式が開催された。
昨年に引き続き第二回となるこのイベントは、成長するEC業界において、良いデザインのサイトを選び表彰することで、ECをより豊かなものへと導き、より良いデザインを推奨したい、という趣旨のもと行われている。
今回ノミネートしたのは5店舗。審査は「売るだけでなく、お客様の生活に密着し、豊かな生活に導き、さらに社会にインパクトを与えることができるもの」を基準とし、JECCICA理事、講師と参加者50名の投票によって、特別賞、シルバー賞、ゴールド賞、プラチナ賞、そして最優秀賞であるダイヤモンド賞が選ばれた。
結果発表とともに、海外を含む各地から参加した、各社のサイトにかける熱い思いや工夫をご紹介していこう。
さらなる発展にも期待! 特別賞、シルバー賞を獲得したのは、、、
【特別賞】
ところてんの伊豆河童本店
http://www.tokoroten.co.jp/
静岡県でこんにゃくの販売店として明治2年に創業し、のちにところてん販売に転向、今年148年目を迎える「ところてんの伊豆河童本店」(栗原康浩社長)。全国の半分もの収穫量を誇る産地・伊豆において、海女さんが手摘みで収穫するてんぐさを原料に、富士山からの湧き水を使い、職人が心を込めて作る“本物のところてん”の魅力発信をサイトのテーマとしている。
このためトップページでは商品紹介の他、原料のてんぐさや収穫風景、製造風景などの写真をふんだんに使い「伊豆産手摘み天草」「柿田川名水」「昔ながらの職人技」といったキャッチコピーを散りばめるなどの工夫をしている。ブランドロゴは一目で伊豆河童とわかるものにするため、書家に依頼して作成。商品と統一することでブランドイメージをアップさせた。
カラーは店舗のテーマカラーでもあるえんじ色を濃淡で使い、シンプルで読みやすく、かつ熱意が伝わるデザインに仕上がっている。
また全国各地におけるところてんの食べ方を紹介する「とこマップ」を独自に制作。各メディアからの引き合いも多いそうだ。
【シルバー賞】
特別賞
宝塚アン
http://www.takarazuka-an.co.jp/
「宝塚アン」(奥井力也社長)は「宝塚、愛の循環」をテーマに、宝塚歌劇グッズの買い取り、再販売を行っている。今年オープン20周年を迎えるが、サイトは当初から一切変わっていないそうだ。
トップページでは、品質の良さ、世界一の品揃えをアピールするキャッチコピーや、スターが映る商品写真を効果的にちりばめている。商品はアイテム別だけではなく、組、スター別でも分けるなど、探しやすい工夫も。
またサイト全体に「宝塚の感動を家でも味わいたい」という顧客の気持ちをくみ、劇場をイメージしたデザインを取り入れている。ネットで注文し、店舗で受け取りの際についで買いをする顧客も多いとのことで、実店舗の紹介も写真を使いながらくわしく掲載している。
顧客は熱心な宝塚ファンであるため、商品紹介においてはスターの名前違いなど、ちょっとしたミスも許されないが、同じく宝塚ファンを自負するスタッフが担当することで対応している。なお同店は宝塚のみならず、ミュージカル、演劇、歌舞伎のグッズも取り扱っており、現在会員数は25万人にも上る。今後もミュージカル専門店として、さらに飛躍していきたいとのことだ。
栄えあるゴールド賞、プラチナ賞、ダイヤモンド賞に輝いたのは、、、
【ゴールド賞】
日本デザインストア
https://japan-design.imazy.net/jp/
「日本のいいものを広く伝えたい、後世に継承したい」という思いで、日本製、希少性、デザイン性、高品質にこだわった伝統工芸品を販売する「日本デザインストア」(早瀬由芙社長)。今回はサイトの中でも結婚式の引き出物の販売ページについてプレゼンテーションを行った。
引き出物の販売は、1回の注文で100万円を超えることもあるなど、金額が大きくリスクが大きいため事業化するか迷っていたそうだが、顧客からの要望もあり、昨年から本腰を入れることに。
当初は簡単なページでスタートしたが「サイトを訪れる新郎新婦は結婚式場などでよい品が見つからないと悩んでいる」「ゲストに喜んでもらいたいという思いが強い」といったニーズをくみ取り、サービス内容を見直し、サイトもリニューアルすることにした。
具体的には、オリジナルセット、豊富なラッピングの種類、保証サービスを用意。また専任スタッフによる迅速なメール応対を心がけたところ、新郎新郎新婦や引き出物を受け取るゲストにも好評を得られた。
プレゼンでは顧客からの喜びの声も紹介され、商品を売るだけでなく、人と人とのやりとりに非常に重きを置いている姿勢が伝わり、ゴールド賞を獲得した。
【プラチナ賞】
ワイシャツ通販 ozie
柳田敏正社長
http://www.ozie.co.jp/
1924年に創業し、ワイシャツ、ネクタイなどを取り扱う「ワイシャツ通販 ozie
」(柳田敏正社長)は、スマホサイトにかける熱い思いをプレゼンテーションした。
同店のおもな購入はPCで67 %だが、一方で全アクセスの65%、コンテンツアクセスは80%前後がスマホだという。そこで集客、見込み客育成にはスマホサイトのリニューアルが必要だと判断。「モノを売るよりコトを伝える」をテーマに、2015から着手し、今年3月にようやく完成した。
顧客の思いは「かっこよくなりたい」「着心地よく快適に生活したい」「でも選び方がわからない」というもの。この心理をつくような、着こなしの基礎知識などのコンテンツをプロの目線で作り、画像や動画も駆使しながら数年間かけて積み重ねたところ、セッション数が増加。現在は平均25万セッションにも上るそうだ。
現在もブログなどを含め、コンテンツを毎日更新し続けることで、確実にファンを増やし続け、コンバージョンは30%となっている。
スマホサイトの特性を理解した上で、顧客心理を分析してサイトに反映することで、数字に確実につなげた点が評価され、見事プラチナ賞を獲得した。
【ダイヤモンド賞】
達磨正宗
https://www.daruma-masamune.co.jp/
「達磨正宗」(白木滋里代表)は、日本酒を熟成させて飲む「古酒」を製造販売している。古酒は鎌倉から江戸時代まで親しまれつつ、戦時中の重い酒税で姿を消したのだが、同店では戦後、大手の安い日本酒の参入により地酒が売れなくなった頃に、代表の祖父である6代目蔵元が「古酒で勝負しよう」と奮起。苦労しながら古酒を作り、広めていった。その結果、現在では古酒が同店の主力消費となり、海外でも人気に。7代目蔵元が、娘である代表の名をつけた「shigeri」は、2013年、ASEANの歓迎夕食会で各国首脳にふるまわれたそうだ。
そんな古酒の魅力をひとりでも多くの人に伝えるべく、サイトはグーグル翻訳できるようテキスト中心の構成にし、100カ国以上の言語に対応。
赤ちゃんの誕生時に入手し、自分の手元で古酒を育て、子供の成人後に一緒に飲める「未来へ」や、昭和50年のものから揃う「ビンテージ古酒」など古酒ファンならずとも魅力を感じる品揃え。希少性の高い古酒は、出産祝い、結婚祝いといった贈り物としての価値も高く、購入の70%が贈り物だという。このためギフトラッピングにも工夫を凝らしており、サイトでも美しいラッピングを選びやすい構成にしている。「お酒を売るのではなく、時を売る」を体現したサイトで、見事ダイヤモンド賞を受賞した。
写真は千枚以上の酒の写真や本などで研究を重ね、器も厳選して撮影、PCとスマホではそれぞれ異なる写真を使うというこだわりぶりだ。
店舗の顔であるサイトを、もっと魅力的に!
プレゼンテーションは各社5分、質問タイム10分と非常に限られた時間の中、各社の代表はPowerPointを駆使しながら、商品への思いや、サイトへの情熱を語った。質問タイムには、審査員だけでなく、ライバルである店舗からも質問が飛び交い、各店舗のサイトに対する熱意を感じられたひとときだった。
顔の見えないECにおいて、サイトは店舗の顔となる。だからこそ、顧客が楽しく買い物できる、魅力的なページにするべく、ブラッシュアップしていきたいものだ。今回表彰された5社のサイトを、ぜひ参考にしてはいかがだろうか。