消費者に聞いた!ZOZOSUITでこれからのネット通販・実店舗の買い物はどうなる?【ECのミカタリサーチ】
2017年11月にZOZOTOWNが発表した「ZOZOSUIT」は、ボディースーツ内に伸縮センサーを搭載することで、着用者の体型を瞬時に採寸することができる、画期的な性能が大きな反響を呼びました。
そして2018年1月31日。多数の注文により発送に遅延が生じていた「ZOZOSUIT」の発送がスタートしました。
ニュース:
「ZOZOSUIT」の発送開始によって巻き起こる「3つのサービス」と「緻密な戦略」
https://ecnomikata.com/ecnews/17779/
「服が人に合わせる」と言う新たな発想は、ファッションそのものとの向き合い方を変えるだけでなく、ネット通販におけるファッションアイテムの購入の仕方などにも影響を与えることが予想されます。そこで今回は「ZOZOSUIT」を題材として、今後のネット通販に与える影響について考察してみましょう。
ネット通販でのよくある失敗!67%の通販利用者が”サイズが合わない”経験をしている
ネット通販で服や靴などのファッションアイテムを購入した際に「サイズが合わなかった」経験をされたことはないでしょうか?ここではまず始めに、このような経験をされたことがあるかどうかをアンケートで聞いてみました。
<Q1.ネット通販で服や靴を購入して、サイズが合わなかったことはありますか?>
●「ある」を選んだ人のコメント
・思ったより細身な作りだったので、体にフィットして全身のラインが出すぎてしまったことがあった。(茨城県/女性/31歳)
・サイズはLだとわかっていても、肩幅が合わなかったり、丈が合わなかったりしました。(大阪府/男性/27歳)
●「ない」を選んだ人のコメント
・洋服の場合、メジャーを手にして採寸を確かめている上に、靴は足の各部のサイズを伝えメーカーや販売店に問い合わせているため。(北海道/男性/28歳)
・ネットで購入する際には、店頭で実物のサイズを確認してから注文しているから。(福岡県/女性/44歳)
驚くべきことに、67%の方がネット通販でファッションアイテムを購入した際にサイズが合わなかった経験をしたことがあるようです。また、コメントを見てみると、S、M、Lなどの大まかなサイズだけを見て購入したところ、ウエストや丈などの細部のサイズが合っていなかったと言うケースが特に多いこともうかがえます。
また、「ない」と答えた方は、服の細部のサイズや自身の体のサイズを十分に比較する、あるいは実際に店舗で実物を見た後、ネット通販で購入するなどの対策を実行している方も少なからずみられます。
実際のところ、ネット通販ならではの「自宅にいながら気軽に買い物ができる」メリットの恩恵を受けつつ、サイズが合ったアイテムを購入できている方は少ないのが現実といえるでしょう。
ネット通販の商品に満足できなかった…返品・返金はどれくらいしている?
続いては、ネット通販で購入したファッションアイテムを、「サイズが合わない」など、通販ならではの問題で返品・返金を申し込んだ方がどれくらいいるのか、質問に答えていただきました。結果は以下の通りです。
<Q2.ネット通販を利用して、返品・返金をしてもらったことはありますか?>
●「ない」を選んだ人のコメント
・まったく違う商品が届かない限りは、面倒なので返品まではしないです。(群馬県/男性/30歳)
・ネットで買う前に試着をしたり、素材の質感を確かめたりしているので、返品・返金をするような事態にはなりません。(兵庫県/女性/48歳)
●「ある」を選んだ人のコメント
・靴のサイズが合わなくて、無料で交換してもらいました。送料もショップが払ってくれたので良かったです。(大阪府/女性/46歳)
・サイズが思っていたよりも小さかったため、返品することにしました。(大阪府/男性/33歳)
●「したかったがしなかった」を選んだ人のコメント
・返品のやり方がいまいちわからず、安価だったので返品しなくてもいいやと思い、結局しませんでした。(東京都/女性/24歳)
・返品のための送料が高かったため、知り合いの足の小さな人に譲りました。(京都府/男性/35歳)
●「したかったが返品不可でできなかった」を選んだ人のコメント
・一度購入した商品を開封してしまうと返品不可ということで、応じてもらえないという経験をしたことがあります。(宮崎県/男性/41歳)
・返品したかったのですが、一度使ってしまっていたので返品不可となってしまいました。
(福岡県/男性/35歳)
67%もの方がネット通販で購入したファッションアイテムのサイズが合わなかった経験をされているにもかかわらず、実際に返品・返金をしてもらったことがある方は全体の29%にしか満たないと言う結果となりました。この結果から、大多数の方が返品・返金を諦めてしまっている事実がわかってきました。
一方で返品・返金を諦めてしまう理由の中には、「開封済み商品の返金は不可であったため」や「返品のための送料が高いため」など、返品・返金にかかる条件に依るもののほか、「面倒だから」や「揉めたくないから」と言った心理的なハードルで諦めてしまう方も多いようです。ネット通販全体として、送料無料での返品、あるいは開封済み商品の交換など、好条件で返品・返金を行っているのはごく一部のショップに限られているのが現状です。このことも、返品・返金率が低い要因のひとつと考えられるでしょう。
ネット通販でジャストサイズの服や靴が購入できるようになったら…実店舗には行く?
ネット通販で「サイズが合わない」と言う問題が解決されると、実際にサイズを確認しに実店舗に訪れなくてもよくなります。続いては、ネット通販の場合でも、サイズが合わないことが解消された場合、実店舗へ行く頻度はどのように変化すると思うかを聞いてみました。
<Q3.ネット通販で服や靴がジャストサイズで購入できるようになったら、実店舗で買わなくなりますか?>
●「店舗もネット通販も買う頻度は変わらない」を選んだ人のコメント
・上着やズボンは実際触ったり試着したりしたいので、通販で買うことはないと思う。(神奈川県/男性/46歳)
・実際に商品を見てから買うことやウィンドーショッピングが好きなので、それぞれの頻度は変わらないと思います。(大阪府/女性/26歳)
●「実店舗で買う頻度が減り、ネット通販で買う頻度が増える」を選んだ人のコメント
・ネット通販の方が手軽に購入できるため利用頻度は増えますが、実際の商品を手に取りながら選びたい時もあるので、実店舗も多少は利用します。(栃木県/男性/35歳)
・実際に店舗へ出向くのは面倒なので、やっぱりネット通販が便利だと思うからです。(富山県/女性/27歳)
●「実店舗では買わず、ネット通販だけで買う」を選んだ人のコメント
・店員さんとコミュニケーションを取るのが苦手である上に、現在着ている物を見られそうだから。(北海道/男性/28歳)
・実店舗で商品を選んだり探したりするのは疲れるので、ネットで完結するのであればネットで購入したい。(京都府/女性/33歳)
●「その他」を選んだ人のコメント
・実店舗かネット通販かを決めるつもりがない。気分で使い分けているので。(愛媛県/男性/42歳)
●「実店舗だけでしか買わない」を選んだ人のコメント
・サイズもそうだが、色も若干違ってみえるので、実店舗で買うようにしている。(青森県/男性/38歳)
以上のことから、「店舗もネット通販も買う頻度は変わらない」と言う方が42%と最も多い反面、「実店舗で買う頻度が減り、ネット通販で買う頻度が増える」、「実店舗では買わず、ネット通販だけで買う」と答えた方は52%にのぼることがわかりました。ネット通販を利用する頻度が増えると答えた方が半数以上を占めることが明らかとなったのです。また、「実店舗だけでしか買わない」という方は3%に留まっており、ネット通販で購入する機会が今後増えていく可能性が高まっていると考えられます。
一方で「商品の色合いや、肌触りなどの質感を確認した上で購入したい」と考えている方も決して少なくありません。そのため、サイズが合わないことが多いと言うネット通販ならではの欠点が解消されたからと言って、必ずしも実店舗の存在意義がなくなってしまう訳ではないでしょう。
ファッションECにおける今後の課題は?
今回はZOZOTOWNが発表した「ZOZOSUIT」に搭載された着用者の採寸を瞬時にとることができると言う性能が、ネット通販や実店舗での販売にどのような影響を与えるのか、アンケート結果をもとに考察しました。
従来のネット通販では67%もの方が購入したファッションアイテムのサイズが合わない経験をされたことがあり、このことはネット通販ならではの欠点と言わざるを得ませんでした。ZOZOSUITはこの欠点を解消する画期的な商品であり、ネット通販、実店舗販売の双方に大きな影響を与えることは間違いなさそうです。
特にZOZOSUITの性能を利用することで「サイズが合わない」事態が避けられるようになった場合、ネット通販を利用する頻度が増えると思うと答えた方は半数以上にものぼっています。従来からネット通販をメインで利用している方も含めればネット通販が利用される機会はより多くなり、より「日常的」にネット通販を利用することが可能となるでしょう。
一方でネット通販の欠点はサイズを合わせづらいと言う点だけではありません。「実際の色や質感を確認できない」と言った理由でネット通販を敬遠している方も一定数いることから、ZOZOSUITが普及するだけでは解消できない欠点も存在すると言えるでしょう。
また、ネット通販で買った商品に満足できなかった場合に、返品・返金をしたことがある方は29%と、三割に満たないという結果も浮き彫りになりました。顧客が満足しなかったのに、返品・返金の条件や心理的なハードルで申し出ることが出来なかった場合、顧客ロイヤリティ(満足度)を下げてしまっていることが懸念されます。
まだまだネット通販全体として、送料無料での返品などを受け付けているショップは少ないのが現状です。今後、サイズによる返品が少なくなった場合、全体の返品率を考えて、より良い条件で返品を受け付けるなど、顧客ロイヤリティを高める施策が今後の課題となるでしょう。