楽天市場、2018年は共存・共栄のプラットフォームとして成長を加速。 −−楽天新春カンファレンス戦略共有会レポート
2018年1月30日の東京を皮切りに、今年も全国6ヶ所で順次開催されている楽天新春カンファレンス。楽天市場の出店店舗が集い、さまざまなフォーラムが開催されるこのリアルイベント。楽天市場は2018年のECをどう思い描いているのか。そしてハードな競争を続けるショップのために何に取り組むのか。今年の戦略共有会の模様をレポートする。
テーマは「コネクト」。三木谷氏が語る「共存・共栄のプラットフォーム」として、「覚悟」と「超挑戦」を具現化する戦略とは
戦略共有会に先立ち行われた、楽天株式会社代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史氏の講演。メディアや全国の出店店舗の耳目を最も集めるこのスピーチで、三木谷氏が語ったのは「覚悟」と「超挑戦」だった。
楽天経済圏が次々と拡大・強化され、グローバル化を推し進めた2017年。そして2018年、新たに打ち出す戦略とはどういったものか。テーマとして掲げた「コネクト」の具体的な経営戦略が語られたのが「2018年上半期戦略共有会」だ。
店舗・ユーザー・楽天市場 3者間のコミュニティ化を促進し「コネクト」していく
「コネクト」を実現していくための施策は「コミュニティ化促進」「バックオフィス強化」「ビッグデータ活用」を3つの柱としている。同社執行役員ECカンパニーCCO&ディレクターの野原 彰人氏が語ったのは「コミュニティ化促進」。
CtoCが活況を呈する近年。SNSはもちろん、フリマアプリ、シェアリングエコノミーサービスなどで消費者がコミュニケーションをとり、そこから消費が生まれている。個人間のつながりが消費を牽引する時代になっていると野原氏。楽天市場も、店舗・ユーザー・楽天市場3者間におけるコミュニティ化を促進していく。
店舗とユーザー間でのコミュニティ化促進策としてはSNSを活用。ファッションジャンルにおいてはInstagrammerが店舗の商品を紹介し、さらに楽天市場内の「STYLING BOOK」に掲載、商品ページへアクセスを誘導する。2月には、店舗運営によりSNSを活用できる「R-SNS」をリリース。店舗ページからLINE@、Instagram、Facebookへのリンクを貼ることができ、友達獲得にフル活用することが可能になる。また、チャット機能の試験運用もすでに開始。チャットでの問い合わせ対応を行うことで転換率・購買単価の向上に効果が出ており、近々に実装できるよう進めているという。
商品画像についても、SNSでの拡散を意識。ユーザーアンケートの結果をもとに、第1商品画像の登録に関するガイドラインを新たに設け、「画像内のテキスト要素を20%以内、枠線・背景の幾何学模様はつけない」と、大きく方向転換。SNSがマーケティングに活用される時代を反映している。
店舗間のコミュニティ化促進については、「Area-Nations」「R-Nations」を紹介。店舗が店舗をコーチングしてノウハウを共有したりモチベーションUPにつなげたりする仕組みで、参加店舗の売り上げアップにつながっているという。店舗と楽天市場間の施策としては「RON会議室」の刷新があげられた。「店長コミュニティ」では2,000投稿、「知恵袋」では500投稿以上、日々の運用の中での悩みや疑問について活発なやり取りがされている。「ご意見箱」に寄せられた店舗からの声には全て目をとおし、改善に向け努力をしている。また、大きな変更点としてはレビュー機能の改善が発表された。出店店舗はレビューに返信ができるようになり、レビューの投稿は購入者のみ、購入情報の開示は必須化される。これによって、ユーザーの状況に合わせたレビュー返信が可能となり、より"顔の見えるEC"に繋がると見ている。不審ユーザー対策も引き続き強化しており、平均キャンセル率は半減と非常に高い効果が出ているそうだ。
プラットフォームとしての利便性の飛躍的向上 ―ワンペイメント・ワンデリバリー構想とは
続いて、同社執行役員 ECカンパニー CIO&ディレクター、黒住 昭仁氏が「バックオフィス強化」についての戦略を披露。前段の三木谷氏の講演でも語られていた決済と物流については、否が応でも注目と期待が高まる。
三木谷氏が特に力を入れていたのが、楽天市場の決済手段を楽天ペイに統一する「ワンペイメント」だ。楽天ペイを全店舗に導入することで、ユーザーはどの店舗でも楽天ペイを通じて希望の決済手段で支払いをすることが可能になる。多様化する決済手段すべてに対応していくことが難しい状況の中、希望の決済手段がないという理由で他店に流れていたユーザーを引き止められるのだ。店舗にとっては入金サイクル統一や決済業務の軽減などのメリットも。すでに数千店舗に導入されているが、3月にはCSV・5月にはAPIの導入開始、10月以降には後払い決済が順次導入される予定だ。
三木谷氏はその日の講演で、独自の配送ネットワークを2年以内に構築する方針を明らかにしている。注文から消費者の手元に商品が届くまでを楽天のネットワークに乗せる「ワンデリバリー」構想だ。黒住氏からは直近の戦略について話があった。
すでにコンビニや受け取りボックス約37,000ヶ所に加え、全国の郵便局約20,000ヶ所でも商品受け取りが可能となっているが、今年はさらに店頭受け取りサービスを拡大。組み立てや付属品の取り付けが必要、裾上げなどのサイズ調整が必要、といったECでは受け取りづらい商品は、リアル店舗で直接ユーザー対応をすることで販売を促進する狙いだ。
2018年春からは、検索結果・商品ページにユーザーの配送先に合わせた送料を表示していく機能を実装し、より購買への転換が後押しされる見込み。依然として店舗への問い合わせの上位を占めている配送状況については、現在、ユーザーは配送状況を購入履歴やお知らせから確認できるが、今後はプッシュ通知で配送状況をお知らせする機能の導入も検討している。
ECモール企業から”データカンパニー”へ……楽天はモールの枠を超えていくのか
黒住氏が次に語ったのは「ビッグデータ活用」について。会員数約9,500万人と70以上のサービスを誇る楽天は、圧倒的な"量"、IDに紐付いたことで得られる"質"高いデータを保有する世界有数の「データカンパニー」として、その保有データに裏付けられた広告の最適化とナビゲーションの強化に力を注ぐ。
広告の最適化としては、ユーザーが入力した検索キーワードに応じて表示されるCPC広告の精度を高めるために「楽天プロモーションプラットフォーム」を4月にリリースする。広告に掲載する商品をデータに基づき自動で最適化することで表示率を改善し、今までリーチできていなかったユーザーにも商品を表示することができるようになる。
さらにデータの整備、サーチロジック強化、UI/UXの最適化によるナビゲーションの改善で、ユーザーを目的の商品にいち早く誘導する仕組みも整えている。検索結果のファーストビューは、昨年10月に、コンテンツの整理や画像を大きくするなどより見やすく改善。商品ジャンルを指定しなくてもキーワードに応じて色やサイズでの絞り込みが可能となった。3月頃から、スマホについてもサーチ画面を変更していく。
商品ページを改善して売り上げを伸ばしたい店舗には、「楽天ページ診断サービス」を紹介。単に同ジャンル上位店舗のページを真似しても簡単に改善されるものではないが、ユーザーが商品ページのどの部分にどれくらい滞在したかなどの診断リポートが得られ、明確な改善点を見つけられる。昨年12月には無料で利用できるABテスト機能もリリースされ、改善ページのより正確な効果検証が可能となった。
三木谷氏は何度も、「楽天は店舗が中心。店舗の魅力をいかに引き出すかが重要」と口にした。画一的・無機質に商品を提供するのではなく、楽天は"個性豊かな店舗が集まる市場"であり"ショッピングを楽しむ場"であるという意識の表れだ。そして楽天と店舗が一体となり、強大なライバルや物流の問題に対峙する必要があるという思い。そのためにさまざまなパートナーとコネクトし、覚悟を持って超挑戦していく2018年の楽天に期待したい。