BASEと渋谷のマルイが起こす新感覚〜リアルとネットの素敵な調和をここに見た

石郷“145”マナブ

 時代の変化を感じている。
 かつてでいえば、ネットで成功することだけが一つの終着点であったように思うが、最近、ショップと話していると、それは終着点でもないという実感がある。成功の向こうに見るのは、リアルという場である。

 ネットをやり始めてきた人にとっては、ある意味、リアルは手間がかかるイメージがつきまとうはずだが、ショップはショップとして、お客様とのタッチポイントをいかに増やすかに興味関心が深まっていて、そこでリアルに目線が向いているのだと思う。

 その中で注目したのが、先ほど、東京・渋谷のマルイの1階にオープンした「SHIBUYA BASE」だ。BASEとしては初めての常設店舗で、BASE出店店舗に対して、リアルな場で商品を販売する機会を提供している。このスペースは1日単位で提供し、BASEの出店店舗であれば、1日3.5万円をBASEに支払えば、このスペースで商品を販売することができる。

 この日、この場には「オールユアーズ」というショップが入っていて、極めて独特の感覚のアパレルが並んでいた。商品を出している株式会社オールユアーズの大林正隆さんに聞けば、「ライフスペックという考え方がこの会社にはあって、製造上であったり、世の中の常識などにとらわれることなく物作りに挑み、毎日使いたくなるような生活の一部となるような商品を提供している」という。だから、水を弾くパーカーなど、独特のコンセプトを持った商品群は、自らクラウドファウンディングを実施して、お金を募って作っていて、独自の個性を発揮している。

ECで心を掴んだその先にリアルがあった

ECで心を掴んだその先にリアルがあった

 思うに、そこにはその挑戦へのファンがいる。一度、その企業なりブランドのメッセージがお客様に響いた後、「オールユアーズ」のような企業にとって、次なるステージではいかに、そのファン=お客様とのタッチポイントを増やすかにあるのだと思う。リアルは商品をじかに触ったり、先ほどの大林さんのような熱量のあるスタッフと実際に触れ合ったり、ネットでは得られない体験を提供して、ファンの気持ちを触発してくれる。

 このSHIBUYA BASEは、それを提供するからこそ、僕は面白いと思った。

 オムニチャネルといった言葉で片付けるのはもったいない。先ほど紹介したクラウドファウンディングでの商品化しかり、おそらくネットでしかなし得ない新しい価値観を持った商品群は、マルイにとっても興味深いところだろう。リアルを基準に考える商品とは一味違った商品は必ずや、リアルな売り場に新しい風を送り込み、新たな価値を生む。このスペースにはそんなマルイの挑戦もあるだろう。

大量生産でなくとも力強く根強いコミュニティがある。

 ましてこれからはマスメディアによる大量生産だけではないと思っている。ネットの文化は、小さくともその熱量のある心の通い合ったコミュニティを作り出す。今までの既成概念にとらわれない商品が生まれた後、その先あの手この手で羽ばたかせ、店としての個性を最大化させるのは、まさにBASEであり、彼らのようなプラットフォーマーがやらずして誰がやるのだろう。

 これが実現できた背景には昨年、丸井がBASEの株主となっているという背景があって、限りなくリアルとネットとのショッピングの垣根は無くなってきているように思う。実店舗でやろうとしてもできない領域であり、だからこそ、マルイにとってみれば、そこにエキサイティングな価値を生み、BASEはその作品の息吹をリアルに持ち込むことで、ショッピングに新たな光を灯す。

 僕は店舗を思うからこそ、この取り組みには注目していたい。小さくても羽ばたく店舗が渋谷から巣立つ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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