グルメサイト大再編時代到来か?『楽天×ぐるなび』と『カカクコム×KDDI』のそれぞれの提携がほぼ同時期に実施される
株式会社カカクコム(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:畑 彰之介、以下 「カカクコム」)とKDDI株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締役社長:髙橋 誠、以下「KDDI」)は、カカクコムが発行する株式の一部(発行済み株式の16.63%、取得株数:35,016,000株)をKDDIが取得し、資本業務提携契約(以下 本提携)を2018年8月2日に締結したことを公表した。
また、楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「楽天」)は2018年7月27日開催の取締役会において、株式会社ぐるなび(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:久保征一郎、以下「ぐるなび」)は、両社の間で資本業務提携に係る契約を締結することを決議した。
知名度があり、かつグルメサイトを有する2社がほぼ同時期に、それぞれが業務提携を実施した点が注目される。
カカクコム×KDDI
まず、カカクコムとKDDIの提供についてだ。今回の提携を通して、カカクコムの提供する「価格.com」「食べログ」など生活者視点から多様なニーズに応える各種サービスやメディアと、KDDIがau利用者に向けて提供する「auスマートパス」「au WALLET」「Wowma!」等の各種サービスとの連携を通じて、ユーザーのライフスタイルにあわせた最適な商品・サービスの提案を実現するとしている。
また、両社のアセットを融合し、デジタルマーケティングや広告商品の開発、新規サービス・メディアの開発など、新たな事業創出を推進する方針だ。
楽天×ぐるなび
もう一方の楽天とぐるなびの資本業務提携についてはこうだ。まず、楽天とぐるなびは飲食店の予約サービスにおける提携をより一層強化していくという。成長する飲食店のオンライン市場(2017年は4,502億円、楽天資料より)を前に、ぐるなびにとっては消費者のさらなる利便性向上、外食需要の増大に繋がるとの観点から飲食店における対応を支援すべく重要な事業として位置付けられているとしている。
また楽天においては、オフラインサービスである飲食店舗へのエコシステムの拡大という観点で重要な事業と位置付けている。両社はこれまでも当該事業において様々な提携を行ってきたところだ。2018年3月には、ぐるなび会員が飲食店のネット予約やぐるなびECサイトを利用することで貯めることができるポイント「ぐるなびポイント」から楽天の運営する共通ポイント「楽天スーパーポイント」へ交換できるサービスを開始し、2018年5月には、楽天が運営するグルメ情報サイト「Rakoo(ラク―)」の新規加盟店開拓において提携することで合意している。
そして本資本業務提携を機に、飲食店の予約サービスにおける連携強化の一環として、楽天会員とぐるなび会員のIDやポイントプログラム(楽天スーパーポイント、ぐるなびポイント)の連携を進めることにしたのだ。
さらに、両社が現在推進している取り組みにおいては相乗効果を発揮できる領域が多くあるとしており、前述の取り組みに留まらず両社のブランドや蓄積するデータを活用し、多様な飲食店の課題や消費者のニーズに応えるサービスの開発、販売促進を共同して進めることで、両社の事業の強化・拡大に繋げていく計画だ。
グルメサイトだけでなくエコシステムをめぐる大きな動き
双方の提携ともに、これまでの実績と資源を持ち寄り、新たなエコシステム強化の流れの中での動きである点が浮き彫りとなっている。KDDIはauチャネルでの確固たるモバイルプラットフォームを基盤にECサイトのWowma!(ワウマ)を展開するなど手の平の上のマーケティングツールであるスマートフォンの強みを生かした展開を続けている。
また楽天も、その巨大な集客力を有するECプラットフォームから各分野に展開し、モバイルの面では第4の主要通信キャリアとして羽ばたくべく着々と施策を積み重ねている所だ。そうしたそれぞれのエコシステムを強化する流れの中に大手グルメサイト各社も生き残りをかけて参画していることになる。
日銀による大規模な金融緩和政策が功を奏し、徐々に実体経済にも好影響が波及してきているが、それは外食産業に再び消費者が目を向けることも意味する。そうした好機において、EC経由での飲食店の予約など、オンライン化がさらに加速している状況であり、グルメサイトとともにエコシステムの勢力図をめぐって熾烈な攻防と提携が繰り広げられている、まさにその渦中にあることを示すニュースとも言えそうだ。