【オムニチャネル徹底解説】いつでもどこでも。オムニチャネルは買い物のスタンダードに。

ECのミカタ編集部

ライフスタイルの変化やECの発展と共に消費者の購買方法も多様化してきました。時と場所を問わず商品を買い、受け取る。そんなシーンはもはや多くの人にとって日常です。ただ、多様化したことで、どこから手をつければ良いものか。そんな声もあります。このオムニチャネル特集を通して、事業者が今行うべき対応を解説します。

オムニチャネルとは

オムニチャネルとは、リアル店舗、通販、ECなどをはじめとする全ての販売チャネル・顧客情報を統合させることによって、あらゆるチャネルで消費者との接点を創り、シームレスな購買体験を提供することで、顧客満足度アップや売上向上を目指す戦略です。

消費者の立場から言い換えれば、好きな時に、好きな方法で商品・サービスを購入することができ、かつ好きな場所で受け取ることができる環境と言えます。

オムニチャネル誕生の背景には、インターネットやスマートフォン、SNSの普及によって、消費者行動が大きく変化したことが挙げられます。リアル店舗で商品を見た後にWEBで購入する「ショールーミング」や、その反対にWEBで調べてからリアル店舗で購入する「ウェブルーミング」といった行動が増えていることが示唆するように、消費者は様々なチャネルを渡り歩いて商品を購入する時代です。そのため、消費者が買いたいと思うときに、買いたいチャネルで購入できる仕組み、つまりオムニチャネルが求められているのです。

オムニチャネルの歴史

いまでこそ盛んに叫ばれているオムニチャネルですが、その言葉を初めて使用したのは、2011年、アメリカの大手デパート「Macy's」だと言われています。そこで改めて、オムニチャネルが生まれた道筋をたどります。

■シングルチャネル
小売業者と消費者の接点において、もっとも基本的な形態です。情報発信や商品販売を行うチャネルが単一の状態を指します。(近年増えているネットショップ単体の事業形態は、広義の意味でここに含まれます)

■マルチチャネル
シングルチャネルでは事業の広がりに限界があるため、テレビショッピングやカタログ通販、企業ホームページなどの接点を追加し、売上の拡大を目指す形態が登場しました。複数のシングルチャネルを運用しているためタッチポイントは増えていますが、個々のサービスは分断されている状態です。

■クロスチャネル
個々のチャネルを連動させるために、マルチチャネルを発展させた形態です。例えばECで購入した商品を、リアル店舗で受け取ることができるなど、複数のチャネルの横断(クロス)が可能になります。しかし顧客情報の一元化には対応していないため、消費者にとってその都度ID情報を求められるなどの煩わしさがあります。

■オムニチャネル
クロスチャネルにおける顧客の手間を解消するために、オムニチャネルは登場しました。システムや在庫情報はもちろん、顧客情報が統合されている点がポイントです。これによって消費者は、一度ID情報を入力すれば、どのチャネルからでも、簡単に購入することができるようになりました。一方で事業者にとっても、誰が、どこから購入したかといったデータを蓄積していくことができるため、より適切なマーケティング施策に活かすことが可能になりました。

オムニチャネルの購買行動

オムニチャネル時代、消費行動はますます複雑化しています。こうした潮流について、先駆的な取り組みを行っている企業はどのように考え、どう対応しているのか。事例を交えながら紐解いていきます。

■Amazon

オムニチャネルにおいて世界の先端を走る企業の一つがAmazonです。例えば近年では、ボタンをワンプッシュするだけで商品の購入と配送が完了する「Amazon Dash Button」の提供や、レジに人がいない無人コンビニ「Amazon Go」を実施するなど、時代に先駆けた様々な取り組みを行っています。オンラインとオフラインのシームレス化へ。オムニチャネル時代の消費行動を捉えるうえで、象徴的な事例と言えます。

■イオン
イオン幕張新都心店では、アプリを店内のPOPにかざすとレシピが表示される「撮って!インフォ」や、店舗での取り扱いがない商品を検索できるタブレット「A touch Ru*Run」などを設置し、ユーザー体験を高める取り組みを行っています。また、各グループ会社のECサイトを「イオンドットコム」に一本化することで、利便性の向上を図っています。

■資生堂
美と健康をテーマにしたWEBサイト「Beauty & Co.」や、オンラインショップを兼ねる「watashi+」を通して、新たなタッチポイントの創造に注力。その他にも、店舗で美容に関するアドバイスを受けられる仕組みなどを整備し、顧客満足度を高めることによって市場の拡大を目指しています。

■カメラのキタムラ
2013年に複数あったECサイトを一本化し、システム自体も統合。一方で店舗には、楽しみながら写真をプリント注文できる「photo+」コーナーなどを設置しています。ECと店舗を緊密に連携させることによってシナジー効果を高め、顧客のリピート化に努めています。

■オイシックス・ラ・大地
オムニチャネルに精通したエキスパートを重職に起用して、オンラインとオフラインの両面からユーザー体験を深めていく動きを本格化させています。オフラインの体験をオンラインに乗せるための新しいプラットフォームの考案など、ファンの可視化を目指す施策に取り組んでいます。

■青山商事
2017年ネット融合型の次世代店舗「デジタル・ラボ」を都内2カ所に新設しています。店内にはデジタルサイネージやタブレットなどが設置され、消費者は1,000万点以上の通販在庫から商品を検索することができます。消費者が購入した商品は、後日配送される仕組みです。きちんと試着ができて、手ぶらで帰れる利便性に注目が集まっています。

こうした事例からは、オムニチャネルの物理的な整備だけにとどまらず、その先にある良好なユーザー体験の創出を見据えた設計が行なわれていることが読み取れます。消費者はより便利で、より簡潔な購買体験を求めています。どのチャネルで購入させるかよりも、どのような購買体験を提供できるか。そしてどれだけ顧客満足度を高められるかが、これからのビジネスの明暗をわける要素になっています。

オムニチャネルがうまくいかない要因

こうした時流を受けて、オムニチャネルに取り組む企業は年々増えつつあります。しかしそれを効果的に運用できている事例は、少ないのが現状です。

その大きな要因の一つに、顧客情報の管理がしっかり行われていないことが挙げられます。オムニチャネルを実現するメリットの一つとして、顧客一人ひとりのID情報や購買行動を蓄積し、そのデータをもとに適切なマーケティング施策を展開することにあります。しかし、顧客情報の一元化が進まないために、オムニチャネル化がうまくいかないケースが多くあります。

また、システム的な課題も指摘されています。顧客情報や在庫連携といった膨大な情報を取り扱うことができるシステムの構築には、時間もコストもかかるため、それが障壁となって推し進められないことがあります。

加えて、EC部門とリアル店舗における人事評価制度の在り方も挙げられます。日本企業に多い部署の縦割り構造においては、オムニチャネルで発生した売上を、どちらの評価にするのかといった問題が発生しているからです。

例えばリアル店舗のスタッフが自分の成果だけを考えるならば、わざわざECでの購入を案内することはないでしょう。しかし本来のオムニチャネルは、リアル店舗でもECでも同じ購買体験を提供することに価値があります。そうした観点から、どちらにも適切な評価を付与できるような仕組みの構築がポイントになっています。

顧客情報の管理と活用、部署間の横断的なコミュニケーション、そして人事評価制度。これらの課題解決は、オムニチャネルの成功に大きく関係しています。

今後重要になるオムニチャネルの視点

オムニチャネルの重要性が、この先ますます高まっていくことは想像に難くありません。ではその成功のためには、どのような視点から戦略を立てていくべきでしょうか。例えばAmazonは、オンラインで蓄えた膨大な情報を活用してオフラインに進出し、消費者との直接的なつながりを形成することによって、マーケティング自体を変革しようとする「チャネルシフト」の戦略を強化しています。先述したAmazon Goは、その最たる例の一つであり、他社にはないユーザー体験を創出することでさらなる差別化を推し進めています。

一方で中国最大級のEC企業・アリババは、リテールとテクノロジーを組み合わせることでオンラインとオフラインを融合し、ビジネスの最大化を図る「ニューリテール」という戦略を掲げています。日本においても、earth music&ecologyなどを展開するストライプインターナショナルがこの戦略に注力していますし、ユニクロを運営するファーストリテイリングやZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ(2018年10月1日より「株式会社ZOZO」へ社名変更)なども、オムニチャネルを捉える上で顧客理解に力を入れています。

今後はオムニチャネルが当たり前の施策となり、ECとリアル店舗の垣根を越えていく戦略が続々と登場してきます。こうした時代にビジネスを加速させていくためには、リアル店舗、EC、システム、マーケティング、営業などを個別に捉えるのではなく、全社戦略的な考え方が重要になってきます。ひとつの企業として、ひとつのブランドとして、どのようなユーザー体験や付加価値を提供できるのか。オムニチャネルを考えることは、ビジネスの根幹を考え直すことにもつながります。

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