Original社、高精度身体採寸テクノロジー「Bodygram」を正式ローンチ
オンラインカスタムシャツブランド「Original Stitich」を展開するOriginal Inc.(以下、Original社)は『Bodygram(ボディグラム)』を BtoB 事業として正式ローンチ。10月にOriginal社の取締役COOに就任したOriginal Japan株式会社の藤本学氏が現在のアパレル業界が抱える課題を解決に導く『Bodygram』について語った。
返品率驚異の4%。オーダーメイドシャツのOriginal Stitchは日本の市場をどう変えるのか
→https://ecnomikata.com/ecnews/15843/
「Original Stitch」の経験が活きる『Bodygram』
エンジニアが服を買いに行く機会を減らしたいというジン・コー氏の考えをきっかけに2014年にシリコンバレーで誕生したOriginal社。「カスタマイズを楽しむという新常識」「Made in Japanを世界に」「サイジング(採寸)をアップデート」という3つを軸に、オンラインカスタムシャツブランド「Original Stitich」を展開してきた。
アパレルECにおいて、サイジングの問題はEC化率を上げるための障壁の一つでもあるが、「Original Stitich」の返品率はわずか4%。それほどの高いサイズマッチングを提供するOriginal社が次なる主軸ビジネスとして研究開発を進めてきたのが『Bodygram』だ。
『Bodygram』には「Original Stitich」で培った経験がふんだんに活かされており、スマートフォンで撮影した正面と側面の全身写真のアップロードと身長、体重、性別、年齢の入力。そして周囲の背景から被写体のみを自動で抽出することで、衣服を着たまま肩幅や首周りなど全身16箇所のヌード採寸を可能としている。通常の衣服を着たまま採寸が可能であるにもかかわらず、その誤差は約1cm以内、身体採寸精度は99%となっている。
衣服の着脱や特殊スーツなどの購入は不要という場所や時を選ばずに簡単に採寸が可能ということで、利用ハードルを低くしているのは大きな特長と言える。
BtoB向けに提供で市場拡大を加速
当初、『Bodygram』はコンシューマー向けのツールとして研究開発が進められていたが、計画を変更し、テクノロジーパートナー企業向けのBtoBテクノロジーとして生まれ変わった。
また、『Bodygram』による採寸データを蓄積し様々な用途に活用するためのデータ・プラットフォーム『BodyBank(ボディバンク)』も同時設立。パートナー企業は、『BodyBank』をAPI連携することにより、自社ウェブサービスやアプリに『Bodygram』による身体採寸ソリューションを導入することが可能になる。
『Bodygram』によって採寸され、自社サーバにフィードバックされる消費者の採寸データを活用したカスタムフィットプロダクトの提供や、アパレルECの大きな課題である、既成品ブランドと消費者のサイズのマッチング、また、精度の高い細かな採寸データを取得することによる、各種ECサービスの収益向上と返品率の改善が見込まれている。
藤本氏はEC業界でのニーズについて次のように語る。
「特にECモール等での連携に可能性があると思っています。昨今ECモールでの売上は大きいと思うのですが、多種多様なブランドの既製品を扱っている中で、知らないブランドだった場合、自分に合うサイズがわからない場合があります。
そうなれば、一定の数の方々が、カートに入れてもコンバージョンに至らないこともあるため、そういった方々をコンバージョンをさせるための、オートマッチングは一定数以上のニーズがあります。人体のボディサイズをデータとして提供することでマッチングを仕掛けるためのデータポイントを提供していきたいと思っています。」
その他、アパレル業界以外での活用も視野に入れており、すでに寝具メーカー「エアウィーヴ」とのも業務提携。ユーザーの体形に合わせ硬さを調節した寝具を生産する過程でBodygramで計測した採寸データを提供している。
今後も自社の「Original Stitch」や「エアウィーヴ」のみならず、導入事例やアライアンスの締結を進め、2019年に日米合わせて2桁台の導入事例数を目指すという。
「たとえ競合でも提供する」市場拡大への本気
Original社では今回発表された『Bodygram』や『BodyBank』の提供に加えて、縫製工場システムの提供など、パートナー企業のニーズに柔軟に答えていくという。
「昨今、マス・カタマイゼーションというものが、非常に増えてきているなと思います。有名なブランドを含め、オンライン上でカスタマイズをして、パーソナライズされた商品を届けることがオンライン技術とサプライチェーンの技術が組み合わさることによって実現されています。マス・カスタマイゼーションといった消費潮流は弊社が創業した2010年にはまだまだこれからの話でしたが、今まさに潮流がきているなと思っています」と藤本氏は語る。
また、たとえ競合であってもカスタマイゼーション市場を拡大できるのであれば、サービスの提供も厭わないとしており、市場拡大に対する同社の本気度が現れている。
最近では株式会社ZOZOが運営するプライベート「ZOZO」が話題となっているが、様々なブランドでパーソナライズされた商品の販売が進められている。こうした取り組みはECサイトの売上向上や在庫過多など、ブランドの経営を左右する大きな課題も解決できる。
とはいえ、マス・カスタマイゼーションのしくみを0から作り上げるには時間がかかる。Original社の取り組みは多くのブランドに対して、大きな影響を与えることになるだろう。