コメ兵が人工知能を使った『AI真贋』の実用化へ

日本最大級のリユースデパートを展開する株式会社コメ兵(以下「KOMEHYO」)は、開発を進めている「AI真贋」を2019年春店舗に導入することを公表した。

急増する違法フェイク商品

同社によれば、いわゆる偽物(知的財産侵害物品)の日本への流入が平成30年を境に急増しており、上半期の税関での輸入差止点数が6年ぶりに65万点を超えた(財務省「平成30年1月から6月までの税関における知的財産侵害物品の差止状況」より)。

偽物の流通は、ブランド本来の価値を毀損することは言うまでもない。KOMEHYOは、ブランドリユース分野でのトップクラス企業として、鑑定士の教育、品質管理を含めた5重の商品チェック体制、国内最大級の法人間取引「KOMEHYOオークション」での出品前の商品チェック、フリマアプリ「KANTE」での“KOMEHYOカンテイ”サービス等によって、偽物の流通を排除する取り組みを実施している。

71年の実績とノウハウをAIに投入

71年の実績とノウハウをAIに投入「AI真贋」を活用した査定イメージ

そのKOMEHYOは、71年の実績とノウハウで培った“目利き”を活かし、2018年4月からAI真贋の開発に着手した。現在は、研究フェーズから開発フェーズへと移行し、2019年春には買取業務に活用できるツールとして店舗への導入を予定する。

研究段階(プロトタイプ)での対応のブランドは、ルイ・ヴィトン、アイテムはバッグ、財布・小物だ。その鑑定精度は97%を超えるものとなっており、店舗導入時には更に高い精度、他ブランドへの展開を想定している。

今回、プロジェクトスタートからAI真贋を短期間で導入できるまでに至った理由は3つあるそうだ。

[1]優秀なAIエンジニアとプロジェクトチームの役割

AI開発の成功には優秀なエンジニアの存在が絶対条件だ。その上で、業務に活用できるものを求めるKOMEHYOと鑑定精度を求めるエンジニアをつなぐ専門知識を有するアドバイザーをプロジェクトに加えることで、リテラシーの差による誤解をなくすことや、メンバー個々の業務や能力を把握し、開発を推進することが可能になった。また、ノウハウを個人ではなくチームに蓄積することにつながっている。

[2]真贋を見極める「匠」の存在

AIに真贋を判断させるには、AIに本物と偽物を正確に教える必要がある(正確な教師データ)。精巧な偽物も出回る中、KOMEHYOには真贋を見極める「匠」がいるため、エンジニアと情報を共有しAIの教育をフォローしている。

[3]豊富な商品データ

AIの精度を高めるためには、できるだけ多くの商品データが必要だ。そのために大量の商品を集めることが求められるが、KOMEHYOは店舗での買取りなどにより年間140万点の商品が品質チェックや商品化を行う「商品センター」を経由するほか、自社開催の法人向けオークションに出品される商品など、世界最大級の中古品流通を誇っており、AI開発に最適な条件がそろっている。

『AIを活用した知の継承』が実現

『AIを活用した知の継承』が実現

AI真贋が本格的に導入されると、買取業務における時間の使い方が変化する。細心の注意が必要な真贋チェック、煩わしい情報入力などといった業務がAIにより解決され、スタッフは顧客とのコミュニケーションに時間を掛けることができる。また、鑑定士育成のカリキュラムを短縮でき、店舗拡大といった成長戦略や生産性向上につなげることができるのだ。

導入したAI真贋をKOMEHYOの鑑定士が運用することで、AIのレベルは更に賢く業務に適したものとなっていく。「匠」の知識をAIに引き継ぐことで、KOMEHYOの鑑定力という財産を業界に残すことができる「AIを活用した知の継承」が実現するのだ。

【KOMEHYOの「AI真贋」概要】
※2019年2月時点

[導入時期]
2019年春予定

[導入予定店舗]
KOMEHYO名古屋本店本館を予定(順次対応予定)

[対応商材]
バッグ、財布・小物(今後増加予定)

[鑑定精度]
97%

[対応ブランド]
ルイ・ヴィトン(今後増加予定)

リユースとテクノロジーの新しいかたち『リユーステック』

今後の展開については、AI真贋の店舗導入後は、ブランドやアイテムの横展開をしていき、AI真贋をベースとした業務フローを整備していくそうだ。また、KOMEHYOが進めているグローバル展開においても、現地での鑑定士教育という課題を解決し、拡大スピードのアップにつながるとしている。KOMEHYOが長年蓄積してきた商品データと鑑定士の目利きがAIという集合知となり、AI真贋による“正しく判定され、正しく買い取ってもらう”信頼できるリユース市場を世界に広めていくことにつながる。

同社はさらに「KOMEHYOが考える「リユース×テクノロジー」の新しいかたち『リユーステック』について次のように述べている。リユーステックとは、テクノロジーの活用によって、便利に安心して利用できる健全なリユース市場を創造し、モノのシェアによる持続可能な社会を実現するためのソリューションを意味しており、「リユース×テクノロジー」の新しいかたちのことだ。KOMEHYOは『リユーステック』によって、生活者にとってのリユースをより身近に、便利で、安心できるものへと成長させ、リユース市場の価値向上に取り組む方針だ。

モノを見極める精度を維持しながら、買取業務の効率化とKOMEHYOの鑑定力を支える『知』の継承を推進していく「AI真贋」。同社は、それを始めとする様々なテクノロジーを活用した『リユーステック』という新たな概念のもと、リユース市場全体の信頼性向上と循環型社会の形成に向けた取り組みを推進し、リユース市場の価値向上を目指すことにしている。

EC市場でもリユースは伸びしろが大きな有望な分野として引き続き注目を集めている。その分野で長年の実績とノウハウを持つKOMEHYOは、AIの分野でも市場をリードすることになりそうだ、

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