増税がEC・キャッシュレス推進の要因に。
株式会社電通(本社:東京都港区、社長:山本 敏博)は、2019年10月に予定されている10%への消費増税に向けて、全国の20~69歳の男女計10,000人を対象に、消費増税に対する「認知・理解」や「現状の対策意識」を把握するため、「全国1万人意識調査」を実施した。
同社の消費増税に関する意識調査としては 2013年6月以来となり、今回の分析では過去の調査結果との比較や軽減税率対象外品目への消費意向などを踏まえて結果を分析している。以下、ポイントを絞ってその内容を見ていく。
調査概要
【全国 1 万人意識調査の概要】
・調査実施時期:2018年12月21日(金)~12月25日(火)
・調査エリア:全国
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト
・調査対象:全国男女20~69歳 合計10,000名
(広告・マスコミ・市場調査関係勤務者と学生は除く)
集計の際、平成27年の国勢調査に準拠し、全国7ブロック別において、
性×年代別構成に合わせて割り付け
【前回(8%への消費増税時)の調査概要】
・調査実施時期:2013年6月15日(土)~6月17日(月)
・調査エリア: 全国
・調査手法: インターネット調査
・調査機関:株式会社電通マーケティング・インサイト
(現 株式会社電通マクロミルインサイト)
・調査対象:全国男女20~69歳合計1,200 名
(広告・マスコミ・市場調査関係勤務者と学生は除く)
性×年代を人口構成比に基づいて割り付け
駆け込み購入を考えている人が約7割
今回の消費増税については 80.7%の人が「はっきりと知っている」と回答。8%引き上げ時(2013年6月調査)は 62.3%であり、前回よりも18.4 ポイント増加している。
また消費増税までの間に、「事前に購入する/買い置きする」などの対策を、何かしら検討している(※)人は 67.1%(前回は 60.2%)、「ほとんどしない/全くしない」と回答した人は 22.5%(前回は 27.5%)、「わからない」と回答した人は 10.4%(前回は12.3%)であった。
何かしらの駆け込み購入をしようと考えている人が7割近く存在し、8%への消費増税時よりも駆け込み需要意向は高まりをみせている。また、日用品について「事前に購入する/買い置きする」などの対策を検討していると回答した人が前回の16.7%に比べ、今回は27.5%となっている。
ゲーム課金やレジャーで節約傾向が顕著
駆け込み購入予定量では、「シャンプーや洗剤などの日用品」「ティッシュ、トイレットペーパー」「缶ビール」「缶チューハイ」「タバコ」といった軽減税率対象外品目において、数カ月分程度をまとめ買いをするという声が駆け込み購入予定者の内、4割前後存在している。
また消費増税をきっかけに購入・利用の見直しをしたいと思うものについては、「やめることを検討している」「やめることはしないが、節約する」と回答した人が、「有料のメルマガ」では70.8%、「ソーシャルゲームなどの課金」では65.9%、「遊園地やレジャー施設の年間パスポート」では64.6%と、高い割合を示している。
「ネットショッピングの利用が増える」が28.5%
店舗の利用頻度について、「これから利用が増えそうなお店」としてスーパーマーケット(38.3%)、100円ショップ(29.7%)、ネットショッピング(28.5%)、ドラッグストア(27.2%)が高い数値となっている。
またキャッシュレス決済の利用機会について、今後利用の機会が増える(※)と回答した人は、全体では 69.9%。特に男性60~69歳で74.5%、女性60~69歳で 75.7%と、いずれも全世代で最も高い割合となっており、シニア層(男女60~69歳)でキャッシュレス決済の利用機会が増えると予測されている。
7割近くがキャッシュレス利用を検討
今回の消費増税の経済対策として、中小の小売、宿泊・飲食サービス業でキャッシュレス決済をすると最大5%のポイント還元がされるが、今後ポイント還元が受けられるお店でキャッシュレス決済をする機会が増えると思うか、という質問に対し、可能な限りキャッシュレスに、との回答が48.9%。機会が増えるとの回答を合わせると67.3%と高い割合を示している。
また男性60~69歳で 74.3%、女性60~69歳で70.9%と、いずれも7割以上、全世代で最も高い割合となっており、シニア層(男女60~69歳)の中小小売でのキャッシュレス決済の利用意向が高まると予測されている。
増税にともなう消費マインドをとらえる
調査結果にあるように、8割以上の人が 10%への消費増税を認知(前回62.3%⇒今回80.7%)。前回の消費増税時よりも18.4ポイント増加した。駆け込み需要は7割近くに登り、特にシャンプー、洗剤などの日用品の購入意向が高かった(16.7%⇒27.5%)。
一方で、住宅や車、家電耐久財などの高額商品に関する駆け込み需要は、前回の消費増税時よりも3.7ポイント低下。缶ビール、缶チューハイ、タバコ、日用品など軽減税率対象外品目において、数カ月分程度のまとめ買い意向が約4割となった。
また「有料のメルマガ」「ソーシャルゲームなどの課金」「レジャー施設などの年間パスポート」は消費増税による購入見直しの対象になっており、スーパーマーケット、100円ショップ、ネットショッピング、ドラッグストアの利用頻度は増えると予想される。さらにキャッシュレス決済の利用機会が増えると答えた人は約7割で、シニア層で顕著な傾向がみられた。中小小売において、ポイント還元があれば可能な限りキャッシュレスにという声がシニア層で7割以上となった。
国と地方の債務が1000兆円を超え、少子高齢化が進み、日本周辺の安全保障環境も厳しさを増す中、財源の確保と財政の健全化の重要性は増している。反面、消費増税は、ようやく明るい兆しが見えて来た景気に冷や水を注ぐことは必至で、EC事業を考える上でも増税をひかえた消費動向、消費マインドをつぶさにとらえることは重要になってきそうだ。