【2018年の“小売“を総まとめ】経産省が『2018年小売業販売を振り返る』レポートを公表

ECのミカタ編集部

経済産業省は、小売業の業種別販売動向などの統計を取りまとめた上で分析を施したレポート「2018年小売業販売を振り返る」を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

2018年の小売業販売について振り返る

経産省の商業動態統計は、個人消費の動向を供給側から把握することができる経済指標だ。この指標を用いると、業種別・業態別・商品別の小売動向を分析することができるため、個人消費に関して示唆に富んだ分析を行うことが可能だ。今回は2018年の小売業販売について振り返っている。

小売全体では2年連続の販売額増加

小売全体では2年連続の販売額増加

2018年の商業販売額は前年比3.4%増加して、約472兆円だった。うち約7割を占める卸売業は前年比4.2%、約3割を占める小売業は前年比1.7%と、ともに2年連続の増加となった。

小売業について業態別に見ると、スーパー、コンビニエンスストア、家電大型専門店、ドラッグストアでは前年より販売額が増加し、百貨店とホームセンターでは減少した。この動きは2017年、2018年と2年連続している。

燃料・飲食が牽引

燃料・飲食が牽引

続いて小売業販売額への業種別寄与度だ。2018年、小売業販売額の2年連続の増加に最も寄与したのは燃料小売業、次いで飲食料品小売業だった。

燃料小売業と飲食料品小売業は、価格によって販売額が大きく変動する傾向がある業種の一つだ。何れも主に価格要因で上昇したことが浮き彫りとなっている。

これら2業種を除くと、小売業販売額前年比は0.5%の増加にとどまった。2018年の増加は、前年に続いて、医薬品・化粧品小売業等が数量要因で増加したことによるものと資料では分析している。

前年に最も増加に寄与した自動車小売業販売額は、2018年前半の減少を第4四半期の増加で補いきれずに年間で減少し、その他の小売業も販売額は低下ないし伸び悩みがみられた。

資料では、全体に「足取り強く」とは言えず、前年と比べると伸びに鈍化がみられるものの、前年に見られた個人消費で購入量が上向く動きは小幅ながら続いたと言えそうだとしている。

コンビニ・スーパーは加速しきれず

コンビニ・スーパーは加速しきれず

資料では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストアについて、事業所数と1事業所当たり販売額の要因分解を掲載しており、それぞれの業態の出店戦略を窺いながら販売額の推移についても分析している。

コンビニエンスストアは、販売額増加の勢いに陰りが見られ始めた2015年以降、それまでの店舗数の増加による拡大戦略から店舗当たり販売額の増加による拡大戦略に軸足を移した様子が見て取れる。2018年は、ほぼ全てこの要因で前年比プラスを維持している。

総合スーパーも、コンビニエンスストアとほぼ同時期に出店攻勢を弱めたが、こちらは2017年に再び店舗数を増加させ、2018年もその動きが続いている。

百貨店は店舗集約による効率化戦略を続けているが、事業所当たりの販売額増加で補いきれず、前年比マイナス幅を拡大させた。これら3業態とも、勢いがあるとは言いがたいと資料では分析している。

ドラッグストアには勢い

ドラッグストアには勢い

代わって勢いがあるのがドラッグストアだ。資料では、専門量販店3業態(家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター)の商品別の販売額寄与度分解も掲載している。

ドラッグストア販売額の商品別寄与度の項目によれば、ドラッグストアは前年の店舗数前年比5.0%に続いて、2018年も4.8%増加と出店攻勢を続けている。

また販売額は全品目で増加し、前年比5.9%とドラッグストアとして集計を開始した2014年以来、4年連続の増加となった。2018年の業態別の飲食料品販売額増加率によれば、ドラッグストアでも特に売上が伸びているのは「食品」だった。

飲食料品の流通経路として、スーパーやコンビニエンスストアに代わって、ドラッグストアの販売額が勢いよく伸びていることが浮き彫りとなっている。

刻々と変化する小売市場

経産省「2018年小売業販売を振り返る」にある通り、業種別では燃料小売業、飲食料品小売業が増加。小売業の販売額増加を主導したのは価格要因であることが浮き彫りとなった。

またコンビニエンスストアの店舗当たり販売額増加による拡大戦略が明確に 昨年に続き、勢いがあるのは「食品」等の販売額が増加したドラッグストアだった。

EC市場全体を見て見ても、近年「特定保健用食品(トクホ)」商品のECでの取り扱いが目立って増加するなど、ドラッグストアと近接する商品分野での勢いがあるようだ。

リアル店舗としてのドラッグストアはコンビニやスーパーと商圏が競合する。特にドラッグストアは、販売面積も一般的に広く、医薬品に加えて日用品の取り扱いも多く、また食料品を並べるドラッグストアも増えており、なおかつ価格も安い。

ドラッグストアを利用する層として最も多いのは30代~40代の女性だが、かつては「より安価なもの」を求めてドラッグストアを利用していたが、「日用品を求める」という動向に変化をしてきている。こうした消費者動向の変化とドラッグストアの進撃によって、コンビニやスーパーのかつての上客に大きく食い込んでいる状況が生まれている。

いずれにしろEC事業者としては、こうしたリアル店舗での小売の動向をとらえつつ、そこでは補えきれないニーズについてオンラインで拾っていくといった視点も必要になってきそうだ。

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