KDDIの提唱する「au経済圏」Wowma!2019年 戦略はどうなの? 八津川社長に直撃

石郷“145”マナブ(編集長)

 KDDI株式会社とauコマース&ライフ株式会社はWowma!の戦略共有会を開催したが、その中身に関しては一部の店舗にのみ明かされたもので、まだオープンにされていなかった。そこで「ECのミカタ」ではそこで話された内容を探り出すべく、auコマース&ライフ株式会社八津川社長に直撃した。

 敢えて対話をベースにWowma!の本音を聞かせて欲しいと言った所、快諾。彼らは他のショッピングモールに対して何が違くて、何で差をつけようというのか。またこの一年余りで何が変わったというのかその真相に迫りたい。(取材:ECのミカタ編集長 石郷)

auコマース&ライフ株式会社 代表取締役社長 八津川博史氏

石郷 :最初からツッコミを入れて恐縮なのですが、あれ?って思ったんです。当初は「Wowma!」というのは「au」の携帯キャリアに限らずドコモやsoftbankなど、ほぼ全方位的に提供していくと言っていたはずなんですが、今はすっかり変わってしまったんじゃないかと。今では「au」寄りになっている。

八津川氏:いやいやお手柔らかにお願いします(笑)。確かにそうでした。以前はドコモ、SoftBankのユーザーをも巻き込んでWowma!に呼び込むと話していましたが、これからはそうじゃなく「au」というブランドそのものがオープンになっていくということなんです。

石郷:あ、なるほど。今まで「au」という名のブランドっていうのは携帯キャリアというくくりの中で語られていたけど、今後はそこでいう携帯キャリアはau経済圏を作る一つでしかない。また、その経済圏の中でECの存在感を出していく為に、auコマース&ライフがあるということなんですね。

八津川氏:まさにその通りです。実のところ、そんなことが可能なのかといえば可能です。例えば、実は携帯キャリア「au」が関わっているはずの「じぶん銀行」のうち、半分は「au」以外のお客様だったりする。つまり「au」という土壌は携帯にとどまらず既にオープンなブランドになりつつあったんです。

石郷:そんな中でauコマース&ライフが「au」でECの存在感を出していくべく、何に重きを置くのですか?

八津川氏:まずは社名に立ち返って考えますと、「コマース」。これは単純なECではなく小売ビジネスそのものという意味で考えています。

石郷:それは、リアルも含んでいるということですか?

八津川氏:そう。そこで「ライフ」が紐づいてくる。このライフは「ライフスタイル」とか「ライフデザイン」という言葉に置き換えられるもので、お客様の生活とか人生そのものを作り上げていくという意味合いなんですよね。これからは、商品を売るにとどまらず、コトにまつわる商材もやっていくということなんですよね。

石郷:コトにまつわる商材というと?

八津川氏:飲食やオンラインで完結するなどですね。サロンなどの予約までしていけるというのが一例で、ここには大きなブルーオーシャンが広がっています。そこに踏み込んでいきます。

石郷:それって物販というイメージとは違いますね。

八津川氏:そうなんですよ。あとは無形商材。例えば、auでは元から「ブックパス」、「ビデオパス」という作品を提供するサービスも個別にやっていたけど、それも「Wowma!」のプラットフォームで広げていくことになります。

石郷:つまりは、コンテンツ系も含めてってことですよね?

八津川氏:そうそう。その言い方の方が適切かも知れないですね。これから通信速度が速くなって、5Gの世界になると、全然その世界観も変わっていくと思うんで、物販以外のそういう部分も非常に重要になってきます。

生活を向上させる全てがECと結びついて、それはau経済圏で完結する

auユーザーのWowma!で購入する人数が前年比180%増。だからauそのものの土台を拡大する必要性あり。

石郷:そうか。「au」はもはや携帯だけの世界ではなくなっていて、その「au」という経済圏に広がっているのは、いわゆる物販も含めて、生活と密着したものであるというわけですね。時代の変化とともにコマースとライフの両方の価値が向上していくってわけで、そこを強力に推し進めるのがauコマース&ライフだと。

八津川氏:そうですね、我々としては「暮らしの形を作る」という風に説明しています。

石郷:イメージは分かりました。ちなみに、そうなった事によって、それは出店するお店さんにとってどんな価値なりメリットを生むんですか?

八津川氏:通信だけではなく広義の「au」ブランドになっていくことで、新しいタッチポイントが生まれて、そこにはいつもお客さんが集ってくる。その人通りのある所にどんどんお店さんが集ってきて、新しいお客様が集ってくるようになってくれば、その相乗効果は計り知れないと思います。

石郷:そして、お客様がau経済圏にある一つ一つを循環させるために、金融やポイントがあるということですよね?

八津川氏:そうですね。特に「金融・決済」には力を入れています。これまでもauにはau WALLETというものがあってここにお金をチャージしておくことができた。これを新しい「au PAY」などを使って利用場面を拡大させたいと思っています。それを迅速に進めるべく、加盟店開拓では「楽天ペイ」とも協業も行い、今後、楽天ペイの加盟店で「au PAY」を使えるようにします。

石郷:今まででいうところのau WALLET カードにある残高が、au PAYによってオープンなものとなり、スマホなど利用機会が増えそうですね。

八津川氏:はい。auユーザーの2000万がau WALLET カードを持つ人がいます。その人たちは既にカードの中にチャージしたお金が入っていることが多い。だから、最初からこれを土台に流通させたいと思っていて、そこで流通する際に、ポイントをつけることで、流通力が向上していくと見ています。それは先ほどの説明で伝えたあらゆるサービスに紐付き「au」の経済圏のなかで完結することなので、仮に楽天と協業しても、しっかり我々は我々でそれらの利用者は蓄積されていくことも可能なのです。

石郷:「au PAY」の母体はau WALLETの会員になっているからか、先日100万人の登録者に到達したとの発表もありましたしね。後発ながらその存在感はありますね。

金融が軸となることでauがどんな世界を生み出そうとしているのか

石郷:確かにauはもう単なる携帯キャリアの次元ではないと言えます。ちょっと話が逸れますが、ニュースを見ていて注目したのが「au が金を貸してくれる」というサービスなんですよね。これは賢いなと。「au」で与信が取れているから、貸すべき人材なのかを分かっている。であればこのサービスは成立するし、「au」の強みを生かして、金融になぞらえて差別化要因になるわけですよね。

八津川氏:そうですそうです。お金を借りるっていうことはお金が必要な状況があるわけじゃないですか。その状況が生まれるシーンが「Wowma!」での買い物だったら我々としてもお客さんにとってもハッピーですよね?

ではWowma!に出店するお店さんはその中で何をすればいいのか?

石郷:お店さんがお客様を獲得できる土壌ができました。では、肝心のお店さんが商品を売るためにはどうしたらいいのでしょう。

八津川氏:今触れたように「au経済圏」でタッチポイントが増えていきますよね。そうすると、次はエンゲージメントの強化が必要になってくると思っています。

石郷:エンゲージメント?

八津川氏:そう。そこに応えるものとして、まず「タイムセール」の改良に着手しています。お店さんに「タイムセール設定」をしてもらう事と「集客機能」を一気通貫でできるようにして、「売る機能」と「売る場」の両方を一気に生み出せるようにしたいと考えています。今まではこれが別々にやっていたので、利便性が格段に向上しています。これを促すことでau経済圏で集まって来たお客さんを購入に繋げるきっかけにして欲しい。

石郷:なるほど。

八津川氏:もう一つは「タイムライン」の機能を3月28日に開始しています。Wowma!アプリ上に「タイムライン」を作り、そこに情報を載せられるようになりました。SNSのように様々なお店さんの情報が次々映し出される。しかもお客様にお店さんの商品を「お気に入り」にしてもらえると、それをしたお客様に対して、メッセージ機能として、セールなどメッセージを送れるようにしています。

石郷:へぇSNSっぽい感じですね?つまりお店さんをフォローする感じですね。お客さんも楽しい。

八津川氏:お客様の方でも、それをカスタマイズできるようにしていけて「その人ならではのWowma!」という具合に、お客さんの興味関心に合わせてそれぞれが違った集まりを作り出せます。

石郷:キュレーションのような楽しさもそこでは訴求できるわけですね。

八津川氏:そうですね。かつ、こうすることで、よりお客さんに踏み込んだ濃いおもてなしができるんではないかと。このタイムラインの機能は全てのお店さんができるようになっています。お店さんはメール、プッシュとは違った売る道具として使ってもらえればと考えています。

石郷:それが新しくて楽しいとしても、これがもたらす店へのメリットはどう捉えているんですかね?

八津川氏:実は「お気に入り」というのは結構重要です。つまり、関心があるけど、購入に至っていないという部分でお店さんにとってはとても大事なゾーンだと思うんです。このゾーンに絞ってメッセージするというのは今までなかったことなんですよね?

石郷:確かに。

八津川氏:転換率5%だとして買った人についてはそのパーセンテージは分かっていても「買っていない人の動向」を知りたいじゃないですか?そこを「タイムライン」と「お気に入り」で顕在化して、そこにターゲットを絞ってやるということなんですよね。うちの中ではそういう賑やかしでひと気も大事にしたいと思っていて、活気とともにお互いが個別にアプローチできる。

お客様とお店の両方が人間味のある表現を身につけるWowma!

石郷:面白いですねーお客様に深い関係性を作り、愛着が持てそう。よりリアルに近いというものになっていますね。当然、お客さんがこのタイムラインに目がいくようにしているんですよね?

八津川氏:アプリのタブの中に入れています。全ての画面に上がってくるというのでお客さんはアッと気づきます。あとは、お店さんがお客さんにWow!となるキャンペーンをしていくということになります。#などを入れて検索性を高め、分析機能なども投入していきます。

石郷:最近、こうやって経済圏が生まれているけれど、その一方で、その経済圏の中身が同質化しつつあるという課題が生まれているように思います。その意味では、Wowma!にとってはこういう仕掛けが差別化要因ということになりそうですね。

八津川氏:そうですね。この「Wow!」となるような要素を入れていこうというのは、我々のアイデンティティーにしていきたいと思っています。我々の使命は、店舗と共にそこで、どういう「Wow!」を提供するかが軸となってくるわけで、そこをコミュニケーションを取りながら考えていきたいのです。

売上を上げる為の管理システムも一年で進化

石郷:大きな枠組みとしてauというオープンになったブランド、スマホ・セントリックな決済・金融体験を提供し、ポイントをフックに回遊させる。そして集まったお客さんをいかにしてファン化して、購入するきっかけを作り、また購入の後押しを店とWowma!が一丸となって作っていけるかという事ですね。全体感は掴めました。その上で、端的に言って、個々のお店さんが実績を上げるために何をしたらいいのか?という問いに対してはどう答えますか?

八津川氏:「Wow!」managerという管理システムがあるのですが、このベースの機能のところだけでも40種類、リリースしています。今や他のショッピングモールとは遜色ないくらい整っています。なので、ここからはそれをどう効率化していくかが大事になって来ると思っています。特に成長率が上がってきている「au」のお客様の特性とジャンルの掛け算だと思っていて、そうやってお客様を知り、データに基づきながら、より身近にアプローチすることが大事だと思います。

石郷:確かに最近ではこういう経済圏が発展し、またそこに決済の重要性が特に謳われる背景にはやはりデータの価値が向上していることに挙げられると思っていて、まさにその経済圏の中でどういう消費行動をしているかはお店さんが提案する上でのヒントになりますよね?

八津川氏:そうなんです。だから先ほどのタイムライン然り、一つ一つの施策はお客様を知る道具で、様々な箇所に散りばめられていて、それをフックに確度の高い提案をお客様にすることができるようになると思っています。「au」全体で持っているデータは、丸々お店さんで言えば、伸びしろになるのです。

石郷:これも最近のニュースでは楽天との業務提携を発表した際に、これも10年前では考えられなかったが、今ではそれができると思いました。その背景には、もうすでにそれぞれの経済圏にいるユーザーが棲み分けされてきている自信があるからなんですよね。

八津川氏:おっしゃる通り。楽天との業務提携にあたっては色々楽天との関係性に問い合わせがきましたが、どちらが上でも下でもなく、お互いで作り上げたお客さんの層ががあるからこそ、例えば、物流などにおいては楽天さんとは戦うべきところじゃないよねという見解になっていて、それを実行しているに過ぎません。

石郷:御社の動きを見ていると、携帯会社も新たなフェーズを迎えていて、既存の考え方では時代に即応できないはず。今後はECも巻き込んで、根本的にライフスタイルが変化し、そこに関わる全ての人の意識の変化が必要なのかもしれません。ありがとうございました。

…ということで、
改めて、au経済圏の確立とともにKDDIの通信事業者としての存在感は大きく変貌を遂げることになりそうだ。そこで一個一個、コンテンツを拡大させながら、その利用価値を高めていく。また、ポイントを通してお得に各サービスを循環させながら、金融・決済の土台をしっかりさせてくると、もはやauの存在は携帯ではない。

 ただ、こういう経済圏を構築する動きが増えるほどに、例えば、ショッピングモール間ではその中身が均質化しそうに思うが、Wowma!でいえば、エンタメ性を取り入れながら、差別化を図れるよう、ブラッシュアップしていくというわけだ。この辺の差別化は経済圏に支えられるけれど、ショッピングモールも今までの発想とは違った決断が迫られそうに思う。

 新たな経済圏の構築と共に、社名にもauを掲げて大いなる使命を持って、またスタートしたauコマース&ライフ。そのオリジナリティを確立して、新たな価値を届けていけるよう、是非とも苦心していただき、それがお店さんの活性化に繋がることを切に祈りたい。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ(編集長)

ECのミカタ 編集長。キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ(編集長) の執筆記事

コメント

コメントを書くには、会員登録が必要です。
既に会員の方はログインしてください。
まだ登録をされていない方は、「新規会員登録」より登録を行ってください。
新規会員登録