【経産省データまとめ】物流業界の今 再配達は今後減るのか

ECのミカタ編集部

経済産業省は「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」を公表した。今回はその中のECと物流に関する項目にフォーカスする。

宅配便個数合計42億5,100万個

経産省では、EC市場の拡大にともない宅配便個数は上昇の一途を辿っているとしている。国土交通省集計の平成29年度の宅配便個数の合計は、42億5,100万個と集計されており、対前年度比で5.8%の伸びとなっている。10年前の平成19 年度の個数は32億3,200万個であった。

同年と比較すると10年間で31.5%の伸長率であり、個数ベースで約10億個増加したことになる。宅配便事業者に対し、急激に負担がのしかかったことが容易に推測できる。

EC事業者にはコスト面での影響が

EC事業者にはコスト面での影響が

2017年を振り返ると、前述のような宅配便の個数増大に伴い、宅配便事業者の要員不足や労働環境悪化が社会的な関心を集めた年であった。それを受け2018 年は労働環境改善に向けて運賃の改定、サービスの変更等が進んだ年ともなった。

EC事業者側の視点から捉えると、主要宅配便事業者であるヤマト運輸、佐川急便、日本郵便が揃って運賃の改定を行ったことから、EC事業者にはコスト面での影響があったものと推測される。

一方で、宅配事業者にとって大きな負担となっている再配達問題であるが、国土交通省が実施している宅配便の再配達率サンプル調査によれば、再配達率は全国計で15.2%となっている。

宅配事業とEC事業の生産性向上に向けた対策

宅配事業とEC事業の生産性向上に向けた対策

このような状況下、宅配事業者と EC事業者双方が連携して再配達削減や配達方法の多様化など双方のサービス・生産性の向上を図ることを目的に、国土交通省は、2018年から「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」を定期的に開催している。同年11月に同省がとりまとめたのが上記のものだ。そこから双方にとっての最適解の導出が期待される。

EC市場の伸長率に高低はあれども、EC市場が今より縮小することは考えにくい。経産省では宅配便事業者による要員増強は容易ではないと考えられるため、EC市場の規模拡大に伴う宅配の在り方については、引き続きEC業界、物流業界内で議論が継続すると予想されるとしている。

宅配物流のよりよいあり方をめぐる議論は続く

宅配物流のよりよいあり方をめぐる議論は続く

このように今回の同省の報告書によっても、EC市場の発展とそれに伴う宅配個数増加の顕著さと、その物流量について高止まり、もしくは今後も増加していく可能性が浮き彫りとなっている。

一方で、同省が述べているように、大手宅配事業者、特にヤマト運輸では、2018年度を中心に、スタッフの給与の増加やドライバーの積極的な正社員化といった待遇改善、宅配個数の自主的な総量規制や宅配料金の値上げといった抜本的な構造改革を行い、そのプロセスを経てもなお収益を上げているという状況にある。

これはECの物流におけるラストワンマイルを支える宅配大手が、今後も持続的に事業を継続できることを意味し、極めて明るい要素だ。しかしながら、今後も宅配事業者の現場は、ひっ迫した状況が続くことが予想され、それを前にして物流のよりよいあり方については、各方面で継続して議論が進んでいくことになるだろう。

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