アリババが日本ブランドを対象としたカンファレンスを開催 ニューリテールの旗印のもとデジタルトランスフォーメーションやアジア市場開拓をサポート
アリババ株式会社(本社所在地:東京都中央区、代表取締役社長CEO:香山誠)は、日本ブランド向けに、ニューリテール戦略に関するカンファレンス「日本ブランドのための“New Retail” ―アリババグループが推進する中国小売業のパラダイムシフトー」を開催した。
CEOのダニエル・チャン氏も登壇
アリババは、日本ブランド向けに、ニューリテール戦略に関するカンファレンス「日本ブランドのための“New Retail” ―アリババグループが推進する中国小売業のパラダイムシフトー」を開催した。
カンファレンスには、アリババグループCEOのダニエル・チャン(張勇)氏が来日して登壇し、多岐にわたるアリババのサービスで構築される「アリババエコシステム」の最新動向、企業の事業成長と海外進出をサポートするソリューション、企業にもたらすビジネスチャンスについて講演が行われた。
また各企業の経営層による取り組みが共有され、カンファレンスには約170社300名以上の企業トップやブランド責任者が出席した。
6.5億人の東南アジア市場においても、アリババは次世代の消費トレンドをリードしている。東南アジアで EC 事業を運営しているアリババグループ傘下の LAZADA(ラザダ)は、今年3月に越境 EC 事業の戦略を発表し、日本ブランドをはじめ、世界中の企業の東南アジア地域への進出やより多くの消費者への商品提供を支援して行くとしている。
また日本の消費財メーカーも登壇し、アリババエコシステムを活用した中国市場での取り組みについて講演が行われた。UHA味覚糖やライオンはLSTを活用して中国の地方都市にアプローチした事例や今後の目標を、ストライプインターナショナル、資生堂、コーセーは天猫・天猫国際と連動したデジタル施策などについて発表がなされた。
B2Bプラットフォーム『LST』の活用事例「UHA味覚糖・ライオン」
UHA味覚糖は2019年4月より、中国地方都市への販路拡大を狙い、アリババの LSTプラットフォーム上で旗艦店をオープンした。上海などの大都市で上位の売上シェアを占めていた UHA 味覚糖は、出店後わずか3ヶ月で売上が急成長し、2019年4月~6月の売上は前年比5倍以上を達成した。中国市場における2020年の売上目標のうちの 20%の売上高をアリババのエコシステムを活用して達成することを目標としている。
UHA味覚糖株式会社 代表取締役社長 山田泰正氏は、次のようにコメントしている。
「アリババのエコシステムによる消費者インサイトへの分析は、明確に、かつスピーディーに UHA 味覚糖の中国事業の方針・戦略を導いてくれています。LST に登録している 130 万店以上の小規模小売店の店主も直接オンライン受注会に参加できるため、地方都市・農村部のマーケットにも、アリババを通して直接アプローチすることができます」
またライオンでは今年の3月に中国事業の清長加速に向けて社長直下の新組織、越境EC事業推進室を発足。多くの窓口を統括管理することでスピードアップを測る。また、中国市場におけるオーラルケア商品の展開エリアの拡大、および展開商品のカテゴリーの拡大を目指し、地方都市に強みを持つアリババのLSTと協業し、2019年6月の618 商戦中に LST プラットフォーム上で販売を開始した。今後はオーラルケア分野を中心に、他の商品群でも順次LSTでの販売を拡大していく予定とのことだ。
ライオン株式会社の代表取締役 社長執行役員 掬川正純氏は「今年は2018年の1.5倍の売り上げを、2021年には2018年の3倍の売り上げを狙う」とコメントした。
天猫・天猫国際を活用した成功事例「資生堂・コーセー」など
アパレル企業のストライプインターナショナルは、2018年にアリババと戦略的提携を結び、ニューリテールへの本格的な参入を開始した。現在、中国で11の実店舗と、天猫で4つのEC店舗を展開している。
またアリババクラウドのクラウドコンピューティングサービスや、モバイルワークソリューションの釘釘(DingTalk)を導入し、実店舗とECのデータを一括管理することで、サプライチェーンおよび会員情報の管理の効率化を進めている。
ニューリテール施策の一つとして、天猫のEC旗艦店では、AI(人工知能)を活用したチャットボットを導入し、オンライン上で消費者とコミュニケーションが密に取れるサービスを展開している。
消費者にいち早く実店舗のイベントや割引情報を届けて実店舗への消費者の誘導を促したことで、ストライプチャイナの 2019 年の売上額は、現在、天猫の EC 旗艦店が昨年比 200%増、実店舗が昨年比 150%増となっている。化粧品ブランドでは、資生堂、コーセーが登壇し、中国の事業成長におけるアリババとの協業について説明した。
資生堂では現在、中国の消費者に対して、デジタルでどのように接点を持ち、価値開発をしていくかに挑戦をしているという。今や中国の消費者にとってデジタルは生活の一部となっており、世界のEC市場規模の4割は中国である。また、1億人のフォロワーを抱えるKOLなども存在しており、「デジタルを使い、いかに消費者にアプローチすることが重要なのだ」と株式会社資生堂執行役員 中国地域 CEO 藤原憲太郎氏はいう。また、藤原氏は今後の展望として次のようにコメントをした。
「資生堂は中国でこれまで E コマースとデジタルマーケティングを成長分野として重点的に投資し、成長を加速してきました。アリババと協業しながら新しい価値を創造し、急速に変化する中国市場でさらなる飛躍を遂げます」
さらに香港をスタートした海外進出50周年を迎えた株式会社コーセー 代表取締役社長の小林一俊氏は「デジタル発の化粧品がたくさんあるが、化粧品はオンライン・オフラインどちらもなければ売り上げは落ちてしまう」と述べた上で、2014年に買収した米国ブランドtarteのデジタルマーケティングの事例をはじめ、オンラインの天猫旗艦店とオフラインの実店舗間でのO2O施策などが共有された。
売上約17億円以上のランキングでは41のうち6つが日本ブランド
アリババグループは 2018年11月6日、第一回中国国際輸入博覧会にて、今後 5年間で120の国と地域から2,000億ドルの製品を輸入する計画を発表した。中間層のニーズを開拓しつつ、購買力のある若年層の海外製品への需要に対応している。
この目標を達成するため、天猫国際は 2019年6月に出店企業向けの英語版サイトを開設し、海外ブランドのアリババプラットフォームへの参入をサポート。アリババのEコマース事業の淘宝網(Taobao・タオバオ)と天猫(Tmall)が2019年6月に開催した「618商戦(618 Mid-year Shopping Festival)」において、日本のブランドは多くの記録を残した。
売上1億元(約17億円)以上のブランドランキングでは、41ブランド中6ブランドが日本ブランドだった。資生堂、花王、ムーニー、ピジョン、Freeplus、SK-IIがランクインしている。
越境Eコマース事業の天猫国際(Tmall Global)における国地域別の海外ブランド売上ランキングで、日本が 1 位を獲得しており、今後も日本ブランドが中国市場で売上を拡大することが期待される。
アリババグループ CEO ダニエル・チャン(張勇)氏のコメント
「2019会計年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)、ニューリテール事業の GMV(流通総額)は前年比+19%、約97兆円に増加しました。年間アクティブ・コンシューマー数は中国市場が6.5億人で、中国国外の市場が1.2億人です。アリババは世界中の消費者にサービスを使っていただいています。
近年、地方都市や農村部の消費者ニーズ開拓や、ローカルサービスへの浸透によって、アリババエコシステムはますます成長し、市場シェアを拡大してきました。アリババは創業以来20年間、Eコマース、エンターテインメント、ローカルサービス、フィナンシャルなどを含む様々なサービスを展開してきました。さらに、クラウドコンピューティングとの融合により、アリババ独自のワンストップソリューションと包括的なエコシステムを創り上げることができました。
企業のデジタル化と事業成長を全面的にサポートし、共にニューリテール戦略を推進しながら、素敵な未来を築けることを嬉しく思っています」
アリババ株式会社 代表取締役社長 CEO 香山誠氏のコメント
「日本ブランドは長い間、中国消費者から信頼され、愛され続けてきました。今年6月の『618商戦』及び昨年2018年11月の『独身の日セール』で、日本ブランドは目覚ましい成果を獲得しています。アリババ株式会社はこれからも日本ブランドと密に協力していき、中国市場開拓をサポートしていきたいと考えています」
EC先進国である中国においてECプラットフォームとして市場を牽引するアリババ。そこにおいては同国の消費者からコスメをはじめとした日本ブランドに熱い視線が注がれている。
同社も述べているように、アリババ上での各種のショッピングイベントでは、日本ブランドが記録的な売り上げを達成した。その背景にはこれまでの大都市部から小規模都市や農村部へと、購買意欲旺盛な消費者層が広がりつつあり、アリババもそこを新たなターゲットする戦略を展開中で、その成果も垣間見える。
こうしたことからアリババは日本ブランドを重視する姿勢を高めているものとみられ、事実、今回日本で開催されたカンファレンスにはCEO ダニエル・チャン氏自らが来日して登壇するなど、同社の力の入りようがうかがえる。
さらに発展することが見込まれるEC市場において、同社がまた日本の各ブランドに注ぐ視線も熱度を増すことになりそうだ。