”サブスク”の実態を知る!「サブスクサミット2019」開催レポート

利根川 舞

昨今のトレンドキーワードとも言える”サブスク”。定額音楽配信や動画配信などのデジタルコンテンツだけでなく、この数年では物販ECでもサブスクモデルを取り入れる企業が増えている。

そのようなトレンドを踏まえ、アライドアーキテクツ株式会社(以下、アライドアーキテクツ)は「サブスクサミット2019」を開催した。本記事ではイベント内容を紹介していく。

ビジネスモデルは転換期を迎えている

オープニングで登場したのはアライドアーキテクツでCPO 兼上級執行役員を務める村岡 弥真人氏。

今回のテーマをサブスクに定めた理由の一つである、サブスクのマーケティング領域における困難さを語る。

「多様化するマーケットの中で、サブスク市場は8,600億円を超える勢いで成長しています。しかし、サブスクビジネスは複雑です。従来のマーケティングモデルでは購入がゴールでしたが、LTVが重要なサブスクのマーケティングにおいては、まずは体験をしてもらって、顧客との関係を継続し続けることがゴールなのです」(村岡氏)。

続いて、基調講演枠で登壇したのはZuora Japan株式会社 代表取締役社長の桑野順一郎氏だ。

桑野氏は米国のスナック定期通販grazeやApple、トヨタ、ソニーなどの事例を踏まえ、昨今のサブスク事情を解説する。

桑野氏は「サブスクを従来のプロダクト販売の延長として、従来のものを課金型に移行するだけでは失敗してしまう。誰が顧客か、そして顧客が満足しているかを確認することが大切だ」という。

また、「成功するポイントとしては個々の顧客と繋がり、”究極の御用聞き”となること、そして時間という横軸を限りなく伸ばしながら、金額という縦軸を伸ばしていくこと。昨今では短期間の休止サービスやサービスのダウングレード提案も収益化のチャンスがあります」と、離脱されないことの大切さを桑野氏は語る。

そして最後には次のように締めくくった。

「サブスクリプションは、ビジネスモデルトランスフォーメーションであるという言い方をしましたが、基本的には全てを変えていく必要があります。”ブランディング”から”エクスペリエンス”に変えていく必要がありますし、”プロダクトの販売”から”価値の提供”へ、”ヒット作を作る”ということから”リレーションシップの強化”に変えていく必要があります。最後になりますが、サブスクリプションを既存のビジネスの延長戦として活路を見出すのか、それともチャンスと捉えてこのタイミングでトランスフォーメーションするのか。転換点に来ているのです」。

なぜ今”顧客体験”を重要視しなければならないのか

Session1では「マーケティング成果に繋げる顧客体験の設計」と題し、モデレーターとしてW ventures株式会社の東明宏⽒を迎え、実際にサブスクリプションビジネスを展開する3社が登壇。顧客体験の重要性と顧客体験の情報をどのように自社に蓄積し、改善を行なっているのかについて語られた。

「なぜ今、顧客体験が重要なのでしょうか?」という東氏の問いかけに、ロボット掃除機ルンバや床拭きロボットブラーバを販売するアイロボットジャパン合同会社の山田 毅氏は次のように話す。

「メーカーは他社の販売方法や差別化を気にしてしまいがちですが、お客さんがこの商品でどのような体験をして欲しいかが重要なんです。顧客体験中心じゃないとお客様と寄り添うことはできません。実は、ルンバの購入に至った一番の理由は『友人が買って良かったと言ってた』というものなのです。ですから、他社が何をやっているかではなく、お客様が何を考えているか。お客さんのためを思うことがビジネス成功の理由だと思います」。

また、顧客体験をいかに収集し、サービス改善に生かしているのかについて、「オイシックスは、『素敵なものを売っている』『素敵なイメージ』。そう言われることが多いのですが、結構泥臭いんです」と語るのはオイシックス・ラ・大地株式会社の白石 夏輝氏だ。オイシックス・ラ・大地では顧客と実際に会うことを重要視しており、白石氏も月に20人程の顧客に会い、インタビューを行なっているという。

その背景には、データでは取りきれない「何故(データに現れた)このような行動をするのだろうか」という理由を浮き彫りにするためだという。特に退会を招く出来事の発生率を下げるべく、退会者にも頻繁にインタビューを行なっている。

これらの顧客体験を計る指標としては、様々で、企業によっても異なる。そんな中で、家具・家電のサブスク「CLAS」を提供する株式会社クラスでは「NPSを重要視している」と久保 裕丈氏。

「NPSは社員全員が見るようにしています。顧客のロイヤリティを測るためには大事なことです。顧客体験をきちんと計測せず、売り上げを重視していると、間違った方向に行くこともありますし、無理矢理売り上げを建てたときには、配送部門など、どこかしらのチームが崩壊してしまうことがある。NPSがきちんと高い数字であれば売り上げは付いてきます」(久保氏)。

そのほか、月額料金の決定ロジックや各サービスの解約タイミングの違いなどの話題が挙がり、Session1は幕を閉じた。

成功企業の広告施策とは?

Session2では「サブスクモデルにおける広告戦略」と題し、広告施策の成功談や失敗談などが語られた。

ここでは、BASE FOOD Inc.の斎藤 竜太氏、ストライプインターナショナル株式会社の澤田 昌紀氏、株式会社お金のデザインの馬場 康次氏、株式会社リクルートマーケティングパートナーズの松尾 慎治氏をゲストスピーカーとして迎え、トークセッションが行われた。

平均して評価が高いのはPRではあるのだが、その他の部分では各社それぞれ特徴があるようだ。それぞれの施策を紹介していく。

まずはアプリで勉強ができる『スタディサプリ』を提供するリクルートマーケティングパートナーズの松尾氏。『スタディサプリ』ではテレビCMを活用してプロモーションを行っている。

通常、テレビCMは成果が測りにくく、認知拡大やブランディング要素が大きいと感じる方が多いだろうが、『スタディサプリ』では現在、テレビCMをWeb広告と対等に扱えるようになっているという。もちろん、初めから成功をしていた訳ではない。Webのバナーを作成する要領でABテストを繰り返し、利用意向率の高いクリエイティブの開発に注力。博打ではないCMを大量に投下することでCV増とCPAの両立を図っているという。

続いて語ったのは、ファッションのレンタルサービス『メチャカリ』を提供するストライプインターナショナルの澤田氏だ。毎年テレビCMを放送している同社では、現在欅坂46を起用し、39円キャンペーンを訴求している。

このCMは認知拡大を目的としているが、その理由として澤田氏は「認知を高めないと広告が嘘っぽくなってしまい、結果広告のCPAが高くなってしまう」と語る。また、『メチャカリ』の場合はテレビCMの他にWeb限定のCMも公開しており、こちらはサービス内容の理解を深めるものにし、Webバナーで刈り取る、という手法を取っている。

『スタディサプリ』、『メチャカリ』がテレビCMを実施する一方で、完全食『BASE FOOD』を販売するBASE FOOD Inc.ではSNSに注力。Twitter上で公開チュートリアル「BASE FOOD CAMP」という企画を実施した。これはユーザーに1ヶ月で20食をBASE PASTAに置き換え、ハッシュタグをつけてレシピなどを投稿してもらう取り組みで、ユーザーの離脱要因である「食べ方がわからない」「効果が実感できない」「価格が高く感じる」というイメージを拭う目的がある。

その結果、「BASE FOOD CAMP」参加者の定期引き上げ率は40%(通常20%)を超えたという。また、LTVを伸ばしながらも、新規顧客獲得につながる良質なコンテンツを作ることもできたようだ。

また、サブスクではないが、手数料モデルや積立金の多さなどでサブスクとの共通点を持つ投資一任運用サービス『THEO(テオ)』では、テレビTVに代わる施策として、デジタル広告を中心にFacebookなどのSNSを絡めながら施策を行なっている。

そもそも、資産運用をしている人が少ない、金融・資産運用などに対する心理的・物理的な壁の存在などの課題があり、まずはデジタル広告やPR、SNSを加速するための準備としてブランドづくり、社員の実際のポートフォリオを公開するコンテンツづくり、マーケットづくりに注力したという。また、影響力のある媒体や人物のパワーを活用しながらも、顧客に寄り添ったサービスであることを打ち出し、その結果、2019年10月時点で約500億円の預かり資産と約77,000名の運用者を獲得している。

収集して終わってはいけない。サブスクにおけるデータ活用

最後のセッションでは「顧客とのコミュニケーション戦略」をテーマに、モデレーターとして株式会社シンクロの西井 敏恭氏、株式会社NTTドコモの佐々木 啓悦氏、ラクスル株式会社の田部 正樹氏、株式会社IDOMの山畑 直樹氏が登壇。

インターネットの時代になり、顧客の情報が取得できるようになった今、顧客と企業の関係性も刻々と変化をしている。では各社はどのようにデータを活用し、顧客との関係性を構築しているのだろうか。

ドコモでは雑誌や記事の読み放題サービス『dマガジン』を展開している。紙の雑誌で読者の反応を知るにはアンケートがメインであり、収集しきれない情報も多く、顧客自体を理解しきれていない状況だった。しかし、オンラインへ移行されたことにより、PVや反響のあった企画などのデータが取得できるようになった。さらにはドコモでは属性データを所持しているため、誰がどのページをどのくらい読んだのかなどの情報も蓄積されるようになっている。今後は雑誌のようなフローコンテンツに加えて、ストックコンテンツも増やしていく予定だという。

また、ネット印刷サービス『ラクスル』では、3年ほど前に急激にリピート率が減少。その理由として「ボタンを変えるなどのABテストをやっていましたが、上っ面だけのマーケティング施策でしたね」と田部氏。顧客へのヒアリングを重ねると、離脱の理由は納期が理由であったことが発覚した。「仮説を持ってお客様に会いに行き続けるのが大切ですね。データはあくまでもHow。何を見るかなどの要件定義ができていないといけません。」と田部氏は語った。

続いて、IDOMが持っていた課題と解決策について語るのは山畑氏。山畑氏が月額制自動車乗り換えサービス『NOREL』事業にジョインした際、解約が多かったのだという。「新規を増やすために、どうやったら好かれるかなと思ってお客様に会いに行きました。そうしたら、熱量が足りなかったんです。『NOREL』をどうしても使わなければならなきゃいけない理由がなかった」と山畑氏。

そうしたことを背景に、大衆に好かれるサービスではなく、顧客ぞれぞれのニーズに沿った様々なパターンのプロダクトを作っていく方向に舵を切った。「価値観や好み、利用・離脱背景などの心理データが溜まっていなかったんです。解約が多い時期は問題が多い時期。なぜ利用するのか、なぜ解約するのかを聞いていくと心理データが蓄積されていきます」と山畑氏は語った。

わずか3時間半という時間の中で、多くのトピックが語られた「サブスクサミット2019」は非常に濃密な時間であった。

アライドアーキテクツでは7月に「コスメサミット2019」を開催していたが、今後もこういった特化型のサミットを開催していくようなので、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。

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記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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