[楽天] DXとOMOを加速へ 新会社を設立・それとは別にウォルマートから西友株式を取得
楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下 「楽天」)は、国内で実店舗を運営する小売り事業者を対象に、実店舗のデジタル化やOMO(注1)施策導入などのデジタルトランスフォーメーション推進を支援する新会社、「楽天DXソリューション株式会社」を2021年1月に設立することを公表した。
それとは別に、楽天、KKR & Co. Inc.(本社:米ニューヨーク州ニューヨーク、共同創設者、共同最高経営責任者:ヘンリー・R・クラビス、共同創設者、共同最高経営責任者:ジョージ・R・ロバーツ、以下「KKR」)およびウォルマート・インク(本社:米アーカンソー州ベントンビル、最高経営責任者:ダグ・マクミロン、以下「ウォルマート」)は、ウォルマートが保有する合同会社西友(本社:東京都北区、最高経営責任者:リオネル・デスクリー、以下「西友」)について、KKRが過半数株式を、楽天が新たに設立する子会社が少数株式を取得する(以下、本取引)ことで合意し、契約を締結(以下、本契約)したことを公表した。この取引における企業価値は1,725億円(約16億米ドル)となるという。
「楽天DXソリューション株式会社」を設立
新会社について具体的には、AIによる需要予測を活用した在庫管理や価格設定の最適化、スマートフォンなどによる実店舗における”レジ無し決済”の導入などを予定しているという。
さらにOMO施策として、オンラインとオフラインの購買データを融合し、ユーザーごとにパーソナライズされた情報を提供するなど、ユーザーにとってより便利な購買体験の実現を図るとしている。
なお、今後、「楽天DXソリューション株式会社」設立の趣旨に賛同する様々な事業パートナーと提携することを視野に入れており、その一環として、東急株式会社(本社:東京都渋谷区、取締役社長:髙橋 和夫)も、同新会社との提携を検討しているとのことだ。
楽天では、新会社設立に関して次のように述べている。
「昨今、消費者の行動様式や購買行動が大きく変容し、Eコマースやキャッシュレス決済を中心とするオンラインのサービスは、生活基盤としてますます重要な役割を担っています。スーパーマーケットをはじめとする小売りの実店舗を運営する事業者においても、オンラインでのサービス提供はもとより、オンラインとオフライン(実店舗)の垣根を越えた、ユーザーにとってより利便性の高いサービスの実現が求められています。
楽天はこれまで、『イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする』をミッションに掲げ、70以上のサービスの展開を通じて、テクノロジーを活用したユーザーや地域社会への貢献に取り組んできました。このたび設立する新会社では、それらの事業で培ったOMO施策やデータマーケティングなどにおけるさまざまなノウハウを生かし、全国の食品や日用品等の小売り事業者におけるデジタルトランスフォーメーションの推進を支援することで、実店舗の新たな形態の実現を目指します」
楽天とKKR、ウォルマートから西友株式を取得
同契約では、KKRは西友株式65%を取得、楽天は小売業のDX推進を目的に設立する新会社を通じて西友株式20%を取得し、ウォルマートは西友株式15%を継続保有する。同取引により西友には新たな株主が加わると共に日本で意思決定ができるようになり、さらには新たな株主が持つ専門性を活用しながらイノベーションを進め、顧客や取引先が恩恵を享受できるようDXを一段と加速できるようになるとしている。
楽天によれば、同契約は、3社が西友のより一層の成長と長期戦略の実現にコミットしていることのあらわれだという。西友は昨年、意欲的な成長戦略を掲げ、さらなる価値の提供、生鮮へのこだわり、オンラインとオフラインを融合した利便性強化に注力してきた。既に、市場シェア、顧客満足度、アソシエイト(従業員)満足度、業績など、ビジネスおよび財務に関する主要指標で目標を達成し、一部は目標超えを実現している。今後は株主3社がそれぞれの強みを投入することで西友がこれまで推進してきた戦略実行を加速化させ、日本を代表するOMOリテーラーとなるための取り組みを後押しするものとみられる。
今回のKKRと楽天の西友への出資を通じて、西友の利用者にはこれまで以上の利便性を提供することを目指すという。具体的には以下の施策が考えられるようだ。
[1]
デジタル・チャネル投資の加速化による、アプリを利用した買い物、決済、配達の実現
[2]
新たなキャッシュレス決済の導入
[3]
オンラインとオフライン(実店舗)を融合させたサービス体験の向上
[4]
消費者のニーズを先取りしたエブリデー・ロー・プライス(毎日低価格)商品群の拡充
KKRは長年にわたり大企業グループの子会社への投資を通じて各社の潜在力を引き出し、独立した会社としてさらなる成長と価値拡大を実現させてきた実績がある。KKRが抱えるアドバイザー、ポートフォリオ企業、専門家のネットワークを活用しながら、西友に対しても業界のベストプラクティスおよびオペレーション改善にかかる知見を投入し、小売りビジネスのトランスフォメーションと価値創造を支援するという。
楽天とウォルマートは既に、戦略的提携のもと、楽天と西友の合弁会社を通じてネットスーパー事業「楽天西友ネットスーパー」を協働運営し、順調に成長させているほか、米国においても電子書籍サービス「楽天Kobo」の展開において協業している。同取引もその一環であり、楽天は新会社「楽天DXソリューション(仮)」を通じて、楽天が保有する1億以上の会員基盤やテクノロジーを活用して、西友を含む日本の小売業のさらなるDX推進を支援するとしている。
また、西友は今後も引き続きウォルマートのベストプラクティス、グローバル調達網、プライス(価格)・リーダーシップと価値提供を可能にするスケールメリットを活用していく方針とのことだ。西友のCEOであるリオネル・デスクリーは移行期間中、引き続き西友の事業統括にあたり、その後はウォルマートにおいて新たな役割を担います。西友の新たな取締役会は、KKR、楽天、ウォルマート各社が選出する取締役で構成し、日本で意思決定ができる体制を実現。また、案件完了時を目途に新たなCEOを指名する予定としている。
ウォルマート国際部門の社長兼CEOであるジュディス・マッキーナ氏は以下のように述べている。
「この一年は57年間の西友の歴史の中でも特筆すべき年でした。アソシエイトの皆さんは当社にとってかけがえのない存在です。お客様が必要としているときに必要なサービスを提供できるよう常に迅速に対応してきました。当社の変革に向けた取り組みについても計画を超えるパフォーマンスを達成しています。ウォルマートはこれまで18年間にわたり西友の株主として協業してきたことを誇りに思うと共に、今回新たな株主を迎えることに大きな期待を抱いています。西友にとって最も相応しいパートナーを迎えて最適な組織を組成し、日本の市場に根差した最強のビジネスを構築することに注力できるからです。今後はKKRや楽天と協業しながら、ウォルマートは少数株主として引き続き、西友の成長を支えてまいります」
KKRアジア・パシフィックのプライベート・エクイティ共同責任者でありKKRジャパン代表取締役社長の平野博文氏は次のようにコメントしている。
「KKRは、私たち生活者に欠かすことのできない役割を担っている国内有数の小売業者である西友に投資する機会をいただいたことを大変光栄に思います。コロナ感染拡大という厳しい環境の中で日々消費者のために働いているアソシエイトの方たちに感謝をするとともに、今後は西友のさらなる発展に向けて共に働くことを楽しみにしています。将来的にはデジタル化を一段と進め、大きく変わりつつある消費者のニーズをとらえながら買い物がより利便性の高いものとなるよう、経営陣やアソシエイト、そして楽天やウォルマートと連携し、協業してまいります。今回の投資はKKRジャパンにとって大きなマイルストンであり、日本企業の長期的な成長と価値創造の実現にコミットしていることの表明です」
楽天の副社長執行役員 コマースカンパニー プレジデントである武田和徳氏は次のように述べている。
「『楽天西友ネットスーパー』協業での成功から得たノウハウに加え、Eコマースやデータマーケティングなど楽天の有する知見を生かし、西友の実店舗におけるデジタル・トランスフォーメーションを加速させます。これにより、オンラインとオフラインの垣根を越えた最高の購買体験を、西友のお客様に提供できることを楽しみにしています。さらに、このたび、西友を含む国内の小売り事業者におけるデジタル・トランスフォーメーション推進を支援することを目的に、新会社『楽天DXソリューション(仮)』を設立する予定です」
またKKRはアジア・プライベート・エクイティ・ファンドから投資を実行するという。同取引は規制当局の認可を得た上で、2021年第1四半期に完了する予定としており、楽天とあわせて、OMOを通した流通とECの面でのさらなる展開に視線が集まりそうだ。