コロナ禍で加速する「価格競争」 フルカイテンが調査レポートを公表
小売企業向けに在庫問題を解決するクラウドサービスを開発・提供する、フルカイテン株式会社(本社:大阪市福島区、代表:瀬川直寛)は、小売業界において大手企業による値下げの動きが広がっていることを受け、コロナ禍で加速する「価格競争」についてジーユーやユニクロの事例を中心に考察するレポートを作成した。
コロナ禍における消費への影響
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの消費者の可処分所得は減少し、厚生労働省の毎月勤労統計によると、現金給与総額は2020年4月から10月まで7ヶ月連続で前年同月を下回っている。
経済産業省の商業動態統計によると、月ごとの商業販売額は2020年4月から9月まで前年同月比2桁の減少が続き、10月も5.5%減であった。そのため、大手小売が相次いで値下げに乗り出している。大手企業ほど店舗網が大きいため固定費負担が重く、値下げによって集客数を確保しなければ固定費をカバーするだけの売上を賄えないという事情がある一方で、資本力で優位な大企業ほど値下げ余力があるのも事実である。このため消費者の生活防衛意識に合わせて値下げを実行することで、客の奪い合いを制しようとしているとみられる。
コロナ禍と関係なく値下げを検討する企業も
ギャップジャパン、良品計画、ジーユーのアパレル3社は半年~1年ともされる企画から生産までのリードタイムなどを考慮すると、コロナ禍と関係なく値下げの準備をしていたことが考えられる。背景として、人口動態の変化に基づく小売市場の縮小があげられる。加速する高齢化、生産年齢人口割合の低下による影響などが消費者行動に表れ、2014年までの15年間で1世帯あたりの消費支出は全年代で下がり、最も下落幅が大きかった世帯主が44~49歳の世帯においては月間で6.2万円下がっている。
このような状況を踏まえ、上記アパレル3社は価格競争と企業淘汰で生き残るためのトライアンドエラーをいち早く始めていると捉えることができる。特にジーユーは、「中国と東南アジアに分かれていた工場を東南アジアに一本化」「工場の閑散期を利用して生産」などのコスト低減策を講じた。ジーユーは製造コストを下げたことで価格を据えおけば増益につながる状況であったが、そうはせず価格競争力で他社に圧倒的な差をつけたと言える。
「価格」以外の価値提供が必要不可欠に
上記のグラフは、ファーストリテイリングが公表しているファクトブックから客単価(既存店とEC)の対前年比のデータを指数化したものである。東日本大震災の翌年である2012年8月期を起点(100)にすると、2020年8月期は117となっており、8年間で17%上がっていることが分かる。ユニクロの国内売上高は8416億円(2019年8月期)であり、2019年まで9.2兆円前後で推移してきた国内アパレル市場のおよそ9%を1ブランドだけで占めている。そうした圧倒的な価格競争力を持つ国民的ブランドが、実は客単価を急上昇させている。これらの事実から2つの可能性が考えられる。
■ユニクロは十分すぎる値下げ余力を持っていること
■ユニクロはすでに価格競争から脱却していること
規模の大きい企業と同質の商品を作ろうとしても同じような価格にするほどの大量生産は不可能であることから、資本力で劣る大多数の企業は価格競争を避け、価格以外の価値提供が必要不可欠と言える。
価格競争以外のビジネスモデル
売上を上げる方法の一つとして「値下げ」を考える人も少なくない中、今回のレポートでもあるように価格競争以外の価値の施策が必要と言える。ブランド力の向上や商品の独自性などに焦点を当てたビジネスモデルの構築が小売業界にとって重要と言えるかもしれない。