2012年度のネット販売市場 主要300社で2兆3575億円の9.4%増

本紙姉妹誌「月刊ネット販売」で実施した調査によると、2012年度(12年6月~13年5月)のネット販売実施企業上位300社の合計売上高は約2兆3575億円だった。前年度(11年6月~12年5月)の約2兆1547億円から9・4%の増加となった。12年度のネット販売市場は、拡大傾向を維持しつつも、競争は激しくなっているようだ。ただ、依然アマゾンジャパンの"一人勝ち"は続いている。(「月刊ネット販売」10月号の「第13回ネット販売白書」に300社の売上高ランキング表と商材別の市場解説を掲載)

「月刊ネット販売」の売上高調査によると、12年度のネット販売(BtoCの物販)実施企業主要300社の売上高合計金額は2兆3575億円となった(左表は上位30位までを抜粋して掲載)。

伸び率は1年前の前回調査と比較すると9・4%の増加で、ネット販売市場のすそ野は広がっているものの、上位300社全体の動きを見ると伸び率はやや鈍化傾向にあるようだ。背景には各社間の競争激化があるとみられる。

順位を見ると、上位企業に大きな変動は見られない。依然としてアマゾンジャパンが2位以下を大きく引き離す格好でトップの座に君臨している。その後を千趣会とニッセンが追うといった構図になっている。

次に商材に分けて12年度のネット販売市場を詳しく見ていく。

アマゾンが“一人勝ち”

「総合」で見ると、12年度も1位は引き続きアマゾンジャパン。売上高は前年比18・2%増の6200億円と順調な成長が続いている。同社の施策の1つとして、物流網の拡充が挙げられる。12年5月に九州地区の佐賀県鳥栖市に「鳥栖フルフィルメントセンター(FC)」を開業。このほかにも中部地区では岐阜県に「常滑FC」と「多治見FC」を稼働したほか、神奈川県小田原市に最大規模となる「小田原FC」を設置した。

こうした物流面の強化に加え、販売面ではタイムセールを実施。また、書籍やDVDでの品ぞろえだけでなく競争相手が多いファッション分野を強化するなど"オールレンジ"で他社を圧倒していく狙いのようだ。

「総合」部門の2位は千趣会。同社のネット売上高は前期比12・1%増の813億8000万円。アマゾンとの差は大きいが、2桁増収とこちらも順調に規模を拡大している。前期はテレビCMを活用したクロスメディアプロモーションや送料無料企画などで新規顧客を獲得し結果、ネット販売の売り上げ拡大にも寄与したもよう。同社のネット受注比率は3・1ポイント上昇し、67・9%に拡大している。

一方、3位のニッセンが前期比2・9%の減収とやや振るわず、今後の巻き返しが期待されるところだ。

「衣料品」では「ゾゾ」が独走

「衣料品」部門では、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが独走している。

とはいえ、同社も前期(13年3月期)は苦戦を強いられた。CM放映やテレビ番組への協賛といったプロモーションで思うような成果を出せなかった。発刊した「ゾゾカタログ」や千葉市幕張での予約販売会「ゾゾコレ」の成果も限定的なものにとどまった。また、12年11月には10%のポイント還元を開始したが、取引先ブランドの反発などから3カ月間で従来の1%に戻す事態に。

結果的に、同社の前期業績は既存会員のアクティブ化や新規の獲得が未達となり、売り上げにも響いた。それでも、年間購入者数は1年間で50万人以上増えて248万人に、売上高も期初の計画には届かなかったものの、350億円に拡大した。2位のユニクロ(206億円)、3位の丸井(180億円)の有店舗企業を大きく引き離すことになった。「ゾゾ」の販売総額を示す商品取扱高で見ると、959億円となっており、この数字はネットの売り場としては突出したものになっている。

「化粧品・健食」DHCがトップ

「化粧品・健食」では、ディーエイチシーがEC売上高の推定値259億円となりトップに。2位がオルビス(推定176億円)、3位がファンケル(同160億円)という順になっており、通販市場での主要なプレーヤーが上位を占めている。いずれもネット経由の売上高は5割程度に達している。

特徴として、1to1マーケティングを志向する動きが見られる。例えばファンケルは昨年、顧客情報管理システムを刷新。通販・店販・ネットなどチャネル別に管理していた顧客情報の一元化により行動分析面の強化を図っている。オルビスも年内に大規模なシステム刷新を行う予定だ。
「食品」の首位はイトーヨーカ堂

「食品」部門ではイトーヨーカ堂が首位で、同社のネットスーパーの売上高は前期比14・3%増の400億円。2月末時点でネットスーパーに対応している店舗数は141店で、1店舗当たりのネットのシェアは数%程度となっている。

一方、2位のオイシックスは売上高132億8600万円と規模感ではイトーヨーカ堂に大きく引き離されているものの、増減率では前期比13・4%と好調に推移している。野菜飲料「Vegeel」など独自商品の展開が奏功し、顧客の健康ニーズを開拓した。同社はリアル店舗展開を強化しており、直営店のほか東急ストアへの商品供給により顧客接点を増やす狙いだ。

「家電・PC」は企業ごとに明暗

「家電・PC」部門の1位は上新電気で、EC売上高は推定で570億円。同社は「楽天市場」や「ヤフー!ショッピング」の大賞常連企業。実店舗の売り上げは減らしているものの、ネット販売については前期も売り上げを伸ばしているとみられる。

同部門3位のヨドバシカメラも前期比33・6%増の458億円と大幅増収となっている。同社は当日配送サービスの対象地域を拡大。さらにネット販売売上高1000億円の早期達成を目標としており、今年2月に書籍の取り扱いを始めるなど、取扱品目の拡充にも着手している。こうした展開により既存顧客の購入回数を増やし、売り上げの底上げを狙っている。

なお、カメラ量販店のライバルとなるビックカメラは240億円で「家電・PC」部門で8位。子会社のソフマップとコジマを合計するとヨドバシの売上高を上回る計算になる。

「家電・PC」の4位はジャパネットたかた。推定値ではあるが、大幅な減収になったとみられる。同社は薄型テレビの需要を先食いする形で大きく売り上げを伸ばしたものの、その反動に苦しんでいる。

今期は「覚悟の年」と位置付け、10年度に達成した過去最高益の更新を絶対目標に掲げ、高田社長自ら「達成できなければ社長を辞める」と宣言。テレビなどデジタル家電中心のMD構成の変革や、ネットと自社専門チャンネルの強化を推進している。

また、「書籍、CD・DVD」部門では、アマゾンジャパンのトップが続いている。同部門の売上高は推定で約2480億円とみられる。同社は物流拠点の拡充を積極的に行うなど一層の規模拡大に向けた取り組みに動いている。

同部門の2位はセブンネットショッピング。同社の「書籍、CD・DVD」関連の売上高はおよそ214億円と推定され、規模ではアマゾンジャパンに大きく引き離されているものの、2桁増収と順調に推移している。

同部門3位は、ローソンHMVエンタテイメントとCCCグループのT‐MEDIAホールディングスの2社がともに推定売上高150億円でランクインしている。このほか、タワーレコードは売上額が不明のためランク外だが、直近のネット販売売上高は前期比80%増で推移しており、動向が注目される。

表の見方

調査は2013年7~8月、通販・通教実施企業約1000社に対して行った。無回答の企業に関しては取材データや公表資料、民間信用調査を基に本紙推定値(「※」)を算出した。「受」は受注比率から算出した売上高を示す。

調査対象は「個人向け物販」でデジタルコンテンツやチケット販売、宿泊予約、金融などの非物販のほか、オフィス用品などBtoBは調査対象から外した。

「前期実績」は12年6月~13年5月に迎えた決算期、「今期見込み」は13年6月~14年5月に迎える決算期。増減率は前の期の数値が判明していない企業や変則決算のため比較できない場合については掲載していない。

表内項目の「全通販売上高の占有率」は原則、総通販売上高に占めるネット販売売上高の占有率を示す。

表中、企業名横の「◎」は次の理由による。(5)デルは個人向けの推定値(7)イトーヨーカ堂はネットスーパーの売上高(10)(20)ディノス・セシールは13年7月に合併(18)MOAは卸を含む売上高(27)ストリームは単体の売上高(30)ローソンHMVエンタテイメントは旧HMVジャパンのEC売上高の推定値(30)T―MEDIAホールディングスは13年7月にTSUTAYA.comから商号変更。宅配レンタルや映像配信事業を除くEC売上高の推定値