本紙調査・通販各社の消費増税対応は 年度跨ぐ注文、半数が増税分自社負担

「実施か延期か、小刻みな税率アップか」と長らくその行方が注目されてきた消費税増税だが、安倍首相が「来年4月1日に消費税率を8%に引き上げる」と10月1日に表明し、正式に増税が決定した。新年度の税率変更に向け、通販各社も早急に準備を進める必要があるが、税率が変更される新年度間際の注文処理や商品価格の表示方法など、その方向性を決めあぐねている事業者も多いようだ。本紙調査から主要通販企業の消費増税時の対応について見てみる。

来年4月からの消費増税に際して、通販実施企業でも様々な対応を行う必要があるが、中でも問題となりそうなのが、「新年度間際の注文処理」。通販は店販と異なり、受注文から商品が届くまでにタイムラグがある。通販の場合、どの時点で「売り上げが立つか」という点で言えば、多くの企業では「受注時」ではなく、「商品配送時」であることから年度内の注文であっても商品配送が4月1日以降の場合、本来は顧客に新税率を負担してもらう必要がある。ただ、混乱を避けるため、またかつて消費税率を3%から5%に変更した際に同様の対処を採った企業も多いことから実際には4月1日以降の配送でも顧客には旧税率の負担とし、増税分は通販企業負担というケースも多いようだ。

では、実際のところ、通販各社はどのような対応を採るのか。本紙が主要通販実施企業約50社を対象に、「3月31日までの注文については顧客には旧税率の消費税を負担してもらい、増税分は自社負担とするか。4月1日以降の配送になりそうな注文については『新税率を適応します』として、顧客に8%の負担を求めるか」について調査したところ、有効回答を得られた企業のうち、およそ半数が「顧客に旧税適用、増税分は自社負担」とすることが分かった。注文時の税率の適用の方が分かりやすいと判断する企業が多く、混乱を生じさせないために、こうした対応を採る企業が多いようだ。ただ、「消費税は消費者が負担する」という消費税の本来的な趣旨で言えば、顧客に新税率を負担してもらうことが原則とも言えることから、少なからず、「4月1日以降の配送分は新税率適用」とする企業もあった。とは言え、「検討中」と対応を決めかねている企業も4割で他社の動きを見ながら、慎重に判断していくようだ。

また、再来年にも再度、消費税率を10%に引き上げる予定であることから、小売業者の負担軽減を図るために、商品価格の表示をこれまで義務付けられてきた税込の「総額表示」だけでなく、本体価格と消費税を分けて表示する「税抜表示」も一定期間、認められることになった。この商品価格表示について、同じく主要通販各社に「『総額表示のまま』にするか『税抜表示』にするか」を聞いたところ、表示が認められた「税抜表示」を行う企業は22%に留まり、「総額表示のまま」が3割を上回った。再度の税率変更の際に「税抜表示」の方がスムーズに表示変更ができそうだが、顧客は「総額表示」に慣れていることや税抜表示のためのシステム対応で手間やコストが生じる場合も多いことから、「総額表示のまま」とする企業が多いようだ。ただ「検討中」が4割と多く、やはり他社の状況を見ながら、方針を決めていく模様だ。

これらのほか、「消費増税に関連して対処に悩む・困る問題」聞いたところ、経過措置(※今年9月末までに発行した通販カタログなどで掲載した商品などを3月31日前に受注した分は新年度以降も旧税率の5%を適用する制度)が終わった今年10月以降で、来年4月を跨いだ期間の頒布会について、年度内に一括で旧税率を適用した代金を受け取った場合、「新年度以降の増税分はどう処理すべきか。増税分だけ後でお客様に頂くわけにはいかない」など対処に悩む事態も様々、発生しているようだ。

また、これも各社の関心事項の1つである消費増税前後の駆け込み需要および需要先食いの反動への対策について聞いたところ、カタログの増減刷や受注オペレーターの増員などを挙げた企業があった。

来年4月の消費増税までに通販各社が最終的にどのような対応を採っていくか。注視されそうだ。