ZOZOが2021年3月期決算を公表 売上高147,402百万円(昨対比17.4%増)、差引売上総利益140,033百万円(同23.1%増)
株式会社ZOZOは4月27日、2021年3月期決算を公表した。ここではその概要について、ポイントを絞って見ていく。また、4月28日はZホールディングスの決算日ともなっている。
決算概況
当該連結会計年度における商品取扱高は419,438百万円(前年同期比21.5%増)、その他商品取扱高を除いた商品取扱高は407,774百万円(同18.2%増)となった。
売上高は147,402百万円(同17.4%増)、差引売上総利益は140,033百万円(同23.1%増)となった。差引売上総利益の商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合(粗利率)は34.3%となり、前年同期と比較して1.3ポイント改善した。
商品取扱高については、新型コロナウイルス感染拡大を契機としたデジタルシフトによるプラス影響が、期初より継続し、当該連結会計年度においては、期初計画及び修正後計画を上回って好調に推移した。
第4四半期連結会計期間においては、前年同期の暖冬によるマイナス影響の反動もあり、デジタルシフトによるプラス影響が大きく、コロナ禍での消費活動の減速によるマイナス影響を大幅に跳ね返して着地した。PayPayモールの好調も全体の商品取扱高成長に大きく寄与したとしている。
売上高については、前年同期において有料会員サービス「ZOZOARIGATO」(~2019年5月末)の実施や、会員向けパーソナライズド値引の積極投下等、同社が原資負担をする値引施策を行っていたことが影響し、主に受託ショップにおいて前年同期比で商品取扱高の成長率を上回わったが、ZOZOUSEDやPB事業の事業規模縮小等がマイナスに影響し、全体では前年同期比で商品取扱高成長率を下回る伸び率となった。
粗利率改善の主な要因は、当該連結会計年度において同社原資負担値引施策の投下量が前年同期比で減少したことにより、受託販売手数料率(対商品取扱高)が改善したことや広告事業及びその他売上の増加等としている。
販売費及び一般管理費は95,889百万円(前年同期比11.7%増)、商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合は23.5%と前年同期と比較して1.4ポイント低下した。
ZOZOTOWNにおける販売力の最大化への取り組み
当該連結会計年度においては、期初より新型コロナウイルス感染拡大が継続し、新しい生活様式が徐々に定着してきた一方で、アパレル業界にとって厳しい市況となったとしている。この状況下で同社グループは、ZOZOTOWNにおいてはユニークユーザー数拡大及びコンバージョンレート(ユニークユーザーの購買率)向上を目指し、ユーザーとブランド双方にとって魅力的なサイト作りに一層注力してきた。
具体的には、2020年5月・9月・11月にセールイベント「ZOZOWEEK」の実施(2020年5月15日~24日の10日間、同年9月9日~13日及び18日~22日の10日間、同年11月6日~15日および19日~25日の17日間)や、同年11月及び2021年1月には、セールイベント実施と同タイミングでTVCMを放送し集客を強化するなど、ZOZOTOWNにおける販売力の最大化に取り組んだ。
D2C事業に注力
引き続き多様化するユーザーニーズに対応できるよう積極的に幅広いジャンルの新規ブランドの出店も進めてきた。商材拡張の一環としては、D2C事業やカテゴリー強化を積極的に進めている。当該連結会計年度より、才能やセンス溢れる“個人”とともにファッションブランドをつくるD2C事業「YOUR BRAND PROJECT Powered by ZOZO」を始動し、2020年10月22日より同社がインフルエンサーと立ち上げたブランドを順次販売開始している。
ZOZOMAT対応型数は2,500型超に
2021年3月には新たな著名インフルエンサーも加わり、春夏アイテムの販売も開始した。なお、D2C事業における商品取扱高は主に買取ショップに計上している。カテゴリー強化第1弾としては、「ZOZOMAT」を用いてZOZOTOWNでの靴カテゴリーの商品取扱高拡大を進めてきた。
2020年2月27日より足型の3Dデータ化を行い靴選びに必要な複数部位の計測を可能とする「ZOZOMAT」の配布を開始し、既に多くのユーザーが利用している。現在までにZOZOTOWNで販売している靴のうち、ZOZOMAT対応型数は2,500型超まで拡大しており、靴カテゴリーは順調に売上を伸ばしているという。
ZOZOCOSMEを拡充、肌の色計測ツール「ZOZOGLASS」も投入
2021年3月18日より、ZOZOTOWNのリニューアルを実施し、同時にコスメカテゴリー強化を図る「ZOZOCOSME」及び国内外のラグジュアリーブランドを取り揃えた「ZOZOVILLA」を開始した。ZOZOCOSMEはローンチ時より国内外の500以上のコスメブランドを取り扱い、女性アクティブ会員比率が7割を占め、コスメとの親和性の高いユーザーを既に抱えているZOZOTOWNにおいて、コスメカテゴリーの商品取扱高拡大を目指している。
高精度で肌の色を計測できるツール「ZOZOGLASS」を用いて、計測した肌の色に最も近いファンデーションの色を提案する購入アシスト機能を実装しており、ユーザーに新しい購入体験を提供。ZOZOVILLAは国内外の90以上のラグジュアリーブランドを集めたZOZOTOWN内のラグジュアリー&デザイナーズゾーンで、創業以来ファッションと共に成長してきた同社が、改めて「服好き」のユーザーへ「ファッションを楽しむ場」を提供し続けたいという想いを込め開始したとしており、ZOZOTOWNのブランドイメージ向上を企図しているとのことだ。
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「PayPayモール」へZOZOTOWNを出店
ZOZOTOWNの新たな決済方法として、PayPay株式会社(以下、PayPay㈱)が提供するキャッシュレス決済サービス「PayPay」を2020年8月20日より導入した。PayPayはオフラインを中心に3,500万人以上のユーザーに利用されている決済手段であり、導入により既存ユーザーの利便性向上や新規ユーザー獲得を期待する。随時PayPayが主催するPayPayのオンラインキャンペーンにも参加し、ユーザー周知を積極的に行ってきた。
2019年12月17日よりヤフー株式会社(以下、ヤフー)が運営するオンラインショッピングモール「PayPayモール」へZOZOTOWNを出店している。ZOZOTOWNに出店している約9割のショップがPayPayモールでも販売し、徐々に売上を拡大しているという。出店以来、PayPayモールの大幅なポイント還元による価格優位性を強みに、従来のZOZOTOWNユーザーとは属性の異なる幅広いユーザーとの接点を増やすことで、新たな顧客層の拡大を進めてきた。
当該連結会計年度においては、大規模セールやボーナス還元などを展開する「超PayPay祭」の実施(2020年10月17日~11月15日及び2021月3月1日~28日)等、ヤフーによるPayPayモールへの販促費用投下に積極的に取り組んだ。同社は、親会社グループとの連携深化を促進し、シナジー効果を最大化できるよう、最大限の取り組みを推進しているとしている。
フルフィルメント支援「Fulfillment by ZOZO」を開始
その他の事業としては、PB事業で培ったノウハウを活かして2019年秋より開始したMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業については、参加ブランド及びアイテム数を拡大し販売を継続してきた。
BtoB事業については、2019年10月より、ZOZOTOWNの出店ブランドを対象にZOZOTOWNと自社ECの在庫一元化を図ることで両者における機会損失の最小化を目指す、フルフィルメント支援に特化したサービス「Fulfillment by ZOZO」を開始し、引き続き注力している。
また、当該連結会計年度はコロナ渦でデジタルシフトが進んだことで、ブランド各社が自社ECの活用をより積極化するなど、事業環境への追い風が吹いている状況だとしている。
前澤氏退任後初の決算
今回の決算は、2019年9月に前澤氏が同社の経営から退き、同年11月にZホールディングス傘下に入った後、通期を終えた初の結果ともなる。前述したとおり、各カテゴリにおいても積極的な施策が展開され、年間購入者数の大幅な増加など全体での好調な結果にもつながっているようだ。
カリスマ的な経営者の退任と、EC市場におけるモール型プラットフォーム間のし烈な競争、ショップやブランドとのロイヤリティ醸成、ECプラットフォームとしてのZOZOの差別化と訴求力の向上など、山積する課題を前に、その行方を危ぶむ声も一部にあったが、今回の決算内容からすれば、いずれも杞憂となったとも言えそうだ。いずれにしろEC市場とユーザー動向の変化、そして社会情勢そのものが激動の渦中になる中で、同社の快進撃とその挑戦の行方には引き続き視線が集まることになりそうだ。