【JARO】コロナ関連の広告・表示への意見総括版を公表

ECのミカタ編集部

公益財団法人日本広告審査機構は、新型コロナウイルス関連の広告・表示への意見、[2020/04~2021/03] 年度総括版を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

レポート概要

◆同レポートで対象とした苦情・意見(「コロナ関連の意見」という)。JARO「広告みんなの声」に寄せられた苦情・意見を分析。

[1]
新型コロナウイルスやそれに類する用語(ウイルス、新型肺炎、コロナなど)を明示・暗示した広告に対するもの。

[2]
新型コロナウイルス感染症への対策等に供すると思われる商品・サービス(マスク、除菌剤など)

[3]
新型コロナによる環境変化などにより、申立者がコロナに言及して広告への意見を述べるもの。

◆分析期間

2020年4月から2021年3月

各種件数

◆月別苦情件数

◆内容別件数

◆商品・サービス別件数

時期による傾向

◆2020年5月ごろまで「便乗、不当表示、価格、欠品・遅延関連が多い」

コロナ関連の意見は2020年1月末ごろから寄せられ始め、日本でも感染者が確認されるなどして不安や懸念が高まり、2~3月にはコロナ関連の意見が増加した。4月には初めての緊急事態宣言が一部の都道府県に出され、意見はさらに増加した。

この時期は、需要が高い商品の欠品や入荷遅延、イベントの中止、施設の休館など、広告の入稿時期等により告知内容と異なったことによる意見が寄せられた。その一方で、「コロナ」「ウイルス」などと安易に明示・暗示する便乗広告や、医薬品的な効果をうたう広告など、広告規制に違反するおそれのあるものも見られた。除菌剤などでは薬機法の規制に従い菌・ウイルス名を表示していないものに対し、これでは分からないとの意見もあった。

ウェブ広告については、バナー広告とリンク先サイトに書かれた価格が違うという意見や、広告の問題ではないがフリマサービスで出品されたマスクや除菌剤が「模倣品である」「空のボトルである」という意見もあった。

4月には広告表現に関する意見も寄せられ、人が集まったり楽しんだりするレジャーや飲食、人が病気になったり死をイメージする表現などに「今は広告すべきではない」「今はやめてほしい」といった広告時期に関する意見があった。また、医療従事者やその家族への差別的な取り扱いをやめるよう啓発する行政の広告に対し、意見が多数寄せられた。

◆2020年6~7月ごろ「GoToキャンペーンや除菌剤、マインドに関するものが多い」

GoToトラベルキャンペーンが開始されることとなり、その関連広告が出始めた時期である。交通レジャー、除菌関連商品、動画配信、クラウドサービスなどに意見が集まった。

除菌関連商品については、コロナ状況下で「ウイルス」「除菌」などと表示することにより新型コロナウイルスに効果があると誤認させる、意図的に誤解させようとしているといった意見が寄せられた。実際に商品を購入したわけではない人が多く、企業の表示に対する姿勢に意見を述べるものが目立った。また、「すべての菌に効くわけではない」との注釈は業界自主ルールに従った表示だが、消費者からは欺瞞的ととらえた意見が寄せられた。

大変多数の意見が寄せられたのは、映画や動画配信サービスの広告である。凄惨な事件、災害などを扱った内容に対し、コロナで不安なのになぜ流すのかといった声が多数寄せられた。また、「がんばるな」と訴える広告に対してもさまざまな声があった。これらについては、コロナに関する言及がなかったものは本集計に加えていないが、多数の意見が寄せられた。

◆2020年8月以降「除菌関連商品、検査関連、感染懸念に関する意見が多い」

8月ごろは感染者が増えていた時期であり、多人数が食事をして騒いでいる場面、狭い場所で大勢が歌っている場面など三密の場面を含む広告に意見が寄せられた。また、楽しんでいる様子の場面に対しては、「こうした広告は出すべきではない」「人の感情に寄りそう広告の仕方はできないのか」との意見のほか、テレビ番組内でコロナ感染防止を呼び掛けた直後のCMにおいて三密の表現が含まれていたことに対する意見もあった。

感染拡大時期だったためか、コロナへの効果を明示・暗示する健康食品、建材、クリーニングなどのほか、除菌剤のテレビCMにも意見が寄せられた。秋ごろから増えたのは、検査キット、医療機関による検査サービス、パルスオキシメーター、空気清浄機などである。広告表現については、感染者数の増加に合わせ、感染の懸念を訴える意見が目立つようになり、大きな声を出すもの、マスクをせずに近距離で話をするもの、必要以上に来店を促すものなどに意見が寄せられた。

内容分類別主な意見

◆[表示]便乗と思われるもの

感染が広がった初期から最初の緊急事態宣言が出た4~5月ごろを中心に目立った。

【2020年4-5月】

・「新型コロナ対策実施中」「髪の毛についたシャンプーでは落とせない汚れ/ウイルスを綺麗に取り除く魔法の水」などとうたっている。(美容院、4月)

・「購入者にマスクプレゼント」と書かれた店頭ポスターだが、そこにマスクの性能として「コロナウイルス、PM2.5、放射能」などと書いている。(衣料品店、4月)

・新型コロナウイルス感染症対策と称して、車検基本作業が無料だと表示している。(自動車修理業、5月)

【2020年8月以降】

・新型コロナウイルスと関連づけて免疫向上を強調し、感染者数の少ない県でよく食べられている食品を使ったサプリメントを開発したと言っている。問題ではないか。(健康食品、8月)

・単なる温度計であるにもかかわらず、体温計と誤解させるような表示を行っている。購入者にはマスクをプレゼントとの表示もコロナ対策を想起させる。(通販会社・温度計、2月)

◆[表示]不当な表示・効果をうたうもの

年間を通じて多かった項目で、特に感染者数が増えた後に苦情が増えた。

【2020年4-5月】

下記以外に次亜塩素酸水、水素、ケイ素、ハーブ、酸性水、銀イオン、オゾン、プラセンタ注射などがあった。

・美容外科のSNS広告に、新型コロナウイルス対策をうたってビタミンC点滴を提供している旨が書かれているが、問題ではないか。(美容外科、4月)

・新型コロナウイルス除去率99%超とうたう空気清浄機だが、こんなに簡単に除去できるなら世界は困っていないと思う。(空気清浄機、4月)

・漆喰がウイルスを死滅させるかのように書かれており、あまりにも信憑性に欠ける。(住宅メーカー、5月)

【2020年6-7月】

GOTOトラベルキャンペーンが開始されたこの時期は交通レジャーが目立ったほか、マスク、除菌関連商品、通信サービス、健康食品などがあった。

・県内在住者限定の超格安キャンペーンに申し込み、予約を受け付けた旨のメールを受信したが、その後一方的にキャンセルされた。同様の人が多いらしくネットで炎上している。(宿泊施設、6月)

・マスクの広告に消臭性、調湿性があると表示されていたが、よく見ると一部の素材の効果だと小さく書いてあった。マスク自体に効果があると誤認させる。(マスク、7月)

【2020年8月以降】

・ヒト・コロナウイルスを5分間で100%死滅させると表示しているがよく読むとCOVID-19ではない上、漆喰に付着させた試験結果であり空気中の結果ではない。そもそも「100%」や「死滅」と表現することに問題があるのではないか。(住宅メーカー、8月)

・コロナに対して有効性が確認された抗菌加工を施しているとうたっているが、事実であればもっと大ニュースになっていると思う。うその情報で客を呼び込もうとするのはいかがなものか。(クリーニング、9月)

・店内に展示している家電製品に「除菌ができる」「家中安心」という目立つPOPがあちこちに貼られている。店員に聞くとコロナウイルスへの効果をうたうものではないと言う。今の時期にこのような表示は不適切ではないか。(量販店、10月)

・「コロナに勝つ体を作る」など、今の時代に誰もが持つ不安につけ込む悪質な広告である。「血液検査の結果を持って来たら分析します」とは医師法違反である。(整体、12月)

・結果が出るまで「最短3時間」とあり検査キットを多数注文したが、実際にやってみると1週間以上かかった。これではPCR検査の意味がない。(検査キット、2月)

・加湿器に入れると空間除菌ができるという水の広告に「身の回りのあらゆる菌を除菌」と書かれている。「あらゆる菌」などというとコロナにも効くのかと思ってしまう。(除菌剤、2月)

・「換気」とうたっているが、この製品は吸気機能があるだけで排気機能はない。コロナ下で勘違いを誘導するうたい文句だと思う。(空気清浄機、2月)

・大手通販サイトで医療認証品と表示されたパルスオキシメーターを購入したが、医療機器として必要な添付文書や医療機器認証番号が取れていないものだった。(パルスオキシメーター、2月)

◆[表示]対象範囲を誤認させるもの

主に除菌関連の商品・サービスで、2020年度上半期が中心である。

【2020年4-5月】

・広告にアルコール濃度70~75%と書かれていたが、商品には記載がなく、企業の窓口に濃度の根拠を尋ねると、メーカーから口頭で聞いただけだと言われた。 (通販会社、4月)

・ハンドジェルの通販ページに「除菌」「殺菌」「消毒」などと書かれていたが、購入した商品にアルコール濃度の記載がなく、通販会社に問い合わせるとアルコール濃度30%であることが分かった。コロナウイルス感染予防のために買ったのにこれでは意味がない。(通販会社、4月)

・「99.99%除菌」と表示されていたので何の菌に効果があるのかをメーカーに聞いたが、「医薬品ではないので答えられない」と言われた。問題ではないか。(除菌剤、4月)

【2020年6-7月】

・さまざまな菌に効果があるように宣伝しながら、小さな文字で「すべての菌に効くわけではない」と表示している。(除菌剤、7月)

・室内丸ごと抗菌しコロナに効果があるかのようにうたっている。そもそも菌とウイルスではその特性も違い、抗菌でウイルスを不活性化できる根拠はないにもかかわらず効果があると言い切っていて、危険ではないかと思う。(住宅メーカー、7月)

※業界によっては「除菌」の表示をする場合の自主基準があり、全ての菌種・菌数について実証されているかのように誤認させないよう、全ての菌を除菌するわけではない旨の表示をするよう規定している。

◆[表示]価格に関するもの

価格に関する意見の多くはマスクに対するもので、4月をピークに、5月には落ち着いた。

【2020年4-5月】

・アルコールの代わりに除菌スプレーを購入したが、不当に高額で、成分の表示が雑である。「○日入荷」と表示しているが、日付が毎日変わる。(通販会社、4月)

・広告にはマスクが「緊急入荷」「数量に限りがある」などと書かれ、現状に不安を抱えている人の心理を利用するような文言が並んでいる。原価を考えてもここまで高騰することはなく、非常に不快である。(通販会社、4月)

・送料無料と書かれたバナー広告にマスクも掲載されていたのでクリックして通販サイトに行ったら、すべて送料別と明記されていた。(通販会社、5月)

・「コロナ支援価格」として食品が30%引と表示されているが、母の日特価など理由を変えてずっと同じ販売価格で提供している。割引額を大きく見せる有利誤認表示ではないか。(通販会社、5月)

【2020年8月以降】

・GoToトラベルで交通機関が50%OFFにあったので申し込んだが、半額にならなかった。広告主に苦情を言ったところ、違うページから申し込んでいると言われた。(交通レジャー、8月)

・旅行予約サイトから旅行予約をしたら、GoToトラベルの割引適用はサイトの会員登録が条件だった。結局、高いキャンセル料を支払って取りやめた。申し込み画面上で割引が適用になっているか契約成立前に確認できるような表示にすべきだ。(交通レジャー、11月)

◆[表示]欠品・遅延、おとりが疑われるもの

感染拡大初期におけるマスクや除菌関連商品が中心である。

【2020年4-5月】

・勉強に急きょパソコンが必要になり、外出自粛中なので家電量販店の通販でパソコンを購入した。サイトの表示も注文確認メールも「在庫あり」「翌日出荷」と記載があったが、注文後に電話で確認すると、在庫がなく7~8週間先になると言われた。納期が大幅に遅れるならメールで案内するべきではないか。(量販店、4月)

・チラシアプリに掲載されたスーパーのチラシで、商品名も価格も伏せて「店頭でご確認ください」と表示されており店舗に出向いたが、チラシの品がどれであるかの分からなかった。新型コロナの影響で買いだめ騒ぎが起きている中、いたずらに集客だけを促すようなチラシは出すべきではないと思う。(スーパー、4月)

【2020年8月以降】

・「朝食ブュッフェ付」という名称のプランを予約したが、出されたのはホテルのものではない安い弁当だった。「コロナの影響によりお弁当対応になる場合がある」と書かれているが、そうであればこのようなプラン名を付けるべきではない。さらに「場合がある」ではなく、すべて弁当にしているようだ。(宿泊施設、8月)

・コロナ感染した選手が出場するかのような広告をずっとしている。(番組宣伝、8月)

◆[表示]表示その他

【2020年4-5月】

・次亜塩素酸水の広告で、口に入ったり飲んだりしても大丈夫であるかように記載している。新型コロナウイルスの名称を表示して効果をうたっているが薬機法上表示できないはずだ。(除菌剤、5月)

【2020年8月以降】

・午後○時までに届けば当日検査し、早ければ当日夜には結果報告とあるが、実際には最速で2日後の結果報告である。結果を急いでいる人がほとんどだと思うので、この広告では結果が間に合わないケースが出る。(検査キット、12月)

・偽陰性の可能性に言及せず、安易な唾液によるPCR検査が可能であると宣伝している。陰性だからと言って今後感染しないわけでも無いし、偽陰性の可能性がある以上、その検査で陰性であることは自身が新型コロナウィルスに感染していないことを担保し得ない。(医療機関、12月)

・コロナの状況下、日本で認証を受けていないパルスオキシメーターで正しい数字が出ないと生死に関わる。厳格にするべき。このような製品は通信販売をやめたほうがよい。消毒液とマスクのように転売規制や販売に規制をかけるべきだ。(パルスオキシメーター、1月)

・病院のベッドに重症患者が横たわっている映像など感染の不安をあおるPCR検査の広告だが、検査は100%正確ではなく、検査時点での陽性・陰性が分かるだけのもので、検査を受けること自体に感染拡大を抑制する効果はない。不安と誤解を広めるのではないか。(医療機関、1月)

◆[表現]感染の懸念に関するもの

感染拡大の懸念から、多人数・3密、外出・移動・旅行、新しい生活様式などの表現に対して寄せられる意見である。感染拡大の初期より、第2波(7~8月ごろ)以降で増えた。

【2020年4-5月】

・他人の口元に付いた食品を指で取ってなめるシーンがあるが、新型コロナやインフルエンザがある中で衛生面に問題があるのではないか。(4月)

・新型肺炎が流行っている中、食べ物を素手でつかむことを勧める内容は好ましくない。(4月)

【2020年8月以降】

・車内で大声で歌っている広告。平時であれば楽しいシーンだが、コロナ禍では三密の環境であり、今流すのは不適切だと思う。(9月)

・密を避けた飲食を提案しているが、広告のシーンでは全く密を避けられていない。(11月)

・飲み会のクラスターが多いと注意喚起されている状況下に飲み会、忘年会、新年会といったシチュエーションの広告はふさわしくない。コロナ前に作られた広告をそのまま使用しているのだろうが、画像処理をするとか対策を講じるべきではないか。(12月)

・GoToキャンペーンで安くなると広告しているが、現在キャンペーンを停止しているのに旅行や外出を推進するようなCMは良くないと思う。(12月)

・会食は飛沫がかかるリスクが高いとして自粛が要請されているのに、友人たちを招いたパーティーを勧めるようなCMを流していいのか。「3密に注意」と表示しているが、参加者の距離は明らかに近い。店での会食は駄目だが、家でのパーティーは大丈夫との誤解を与えかねない。(1月)

・緊急事態宣言の中、パーティーを推奨するCMは非常識だ。(1月)

◆[表現]広告時期に関するもの

広告内容ではなく掲載・放送時期に関する意見で、4月(60件)をピークに主に8月まで寄せられた。

【2020年4-5月】

・新型コロナが流行している中で、死や病気、入院などを表現した広告は、時間帯、番組、量などを考えて放送すべきではないか。高齢の母がテレビを見て不安になっている。(4月)

・外出自粛の時期に、人を集めるセールやキャンペーンの広告は不適切だと思う。(※飲食店、小売店など複数の業種で寄せられた、4月)

・緊急事態宣言が出され、都道府県から外出自粛要請がなされているのに、外出や移動、小旅行を思わせるシーンが不愉快だ。(4月)

【2020年8月以降】

・以前から放送しているCMだが、パソコン画面を2人でのぞき込む内容は、コロナ流行中の現在にはふさわしくないのではないか。(8月)

・家庭内で大勢で飲食しているシーンだが、家庭内感染も増加している中で今放送すべき内容ではない。(8月)

※「いま広告すべきではない」という意見でも、コロナ前半期には広告時期がふさわしくないことを理由するものが多かったが、後半では感染の懸念を理由とするものが多かった。

[表現] 倫理面に関するもの
コロナ禍を商売に利用、公的なものと誤認、地域性、性・差別・無配慮、商品・サービスや業種そのもの、出演者などに関して倫理面を訴えるものが多かった。
4月ごろには政府広報、司法書士事務所への意見が目立った。

【2020年4-5月】

・「重要なお知らせ」という広告は、新型コロナウイルスに関する国などの注意喚起と誤認するので問題である。(4月)

・緊急事態宣言を受け外出自粛が呼び掛けられる中で、無神経なCMが多すぎる。せめて宣言を反映したテロップを流すなど工夫するべきだ。(4月)

・休校のため子どもが学習でパソコンを使う機会が増えたが、ポータルサイトのトップページに児童ポルノのような広告が表示され、親として大変不愉快だ。(4月)

・医療従事者の子どもが保育園などで断られる事例があるという広告だが、これは一部の例である。すべての保育園やタクシーに問題があるかのように受け取られるおそれがある。(4月)

・医療従事者だけCMで取り上げるのはおかしい。 (4月)

・啓発CMで「コロナ」と言っているが、同名の会社や店、人名などがありいじめにつながっている。正式名称である「COVID-19」と言うべきである。 (5月)

【2020年8月以降】

・新聞各社はGoToキャンペーンに批判的な記事を書いておきながら、同じ紙面に旅行商品の広告を載せている。これでは新聞報道の信頼性が崩れてしまうのではないか。(8月)

・コロナで帰省できなかったり、失職や亡くなった方もいるのに、人の感情に寄りそう広告の仕方はできないのか。(8月)

・働きやすさを訴求する広告なのに、飲食店で密になって大声を出している場面があるので、おちょくられている気分になる。(8月)

・CM冒頭の音声がニュース速報や緊急地震速報と似ている。昨今のコロナのことを考えると、意図したものでないとしても警告と似た音を使用していることに不快感をおぼえる。(1月)

・緊急事態宣言が出ている最中に育毛剤の広告で「頭の緊急事態宣言です」と言っているのは非常識だ。(1月)

・乳児にマスクをつけた広告があるが、厚生労働省では窒息等のリスクから2歳未満の着用を推奨していない。私が乳児を連れて店に入ろうとしたら子どものマスク不着用を理由に断られたことがある。このような広告は誤認を助長する。(1月)

・コロナ関連の記事が見たいのに広告が動いて記事が見えない。大手ポータルサイトに苦情を言ったが改善されない。(8月)

◆[表現]マインドに関するもの

恐怖・不安を与える、陰鬱、死・病気・けが、広告の頻度・回数、大声や耳障りな音声、娯楽や楽しむ様子などに対して、「うんざり」「イライラ」「不安」などを訴える意見である。2020年3月まではあまり寄せられなかったが、感染が拡大した7月ごろに不安等を訴える意見が増えた。コロナに関する言及がなかった意見は本集計に加えていないが、事件や災害、ホラーなどの映画やドラマ、動画の広告に非常に多数の意見が寄せられた。

【2020年4-5月】

・日本中が不安な状況にあり、コロナ疲れしている中で暗い内容のテレビCMは見たくない。(5月)

・多くの国民が自宅待機を強いられているのをいいことに、広告は通販が大多数である。(4月)

・一定時間の間に健康食品の広告が3回も流れる。新型コロナウィルスでうんざりしているので、耳障りな声が不快だ。(4月)

【2020年6-7月】

・大雨やコロナで頑張っている人が多い中で、頑張らないよう訴えるコピーは適切ではないしタイミングが悪い。(7月)

・明るい気分になりたいからバラエティ番組を見ているのに、凄惨な事件を扱う動画の広告が入る。コロナ下であのような暗いドラマを見たくない。(7月)

・現在の状況で災害をテーマにした映画・ドラマのCMを流すことをやめてほしい。不安で見られない人もいるのに平気で流す神経が分からない。(7月)

・タレントに替え歌やカバーをさせる広告が多く、外出自粛でテレビをよく見ているので、こう頻繁だとうんざりする。(7月)

・CM冒頭の音の大きく、怒鳴るような言い方が不快だ。コロナ禍でただでさえイライラしているのでこのような方法はやめてほしい。(7月)

・人の死を扱う広告はコロナで苦しんでいる時期に見たくない。(7月)

【2020年8月以降】

・コロナ禍で子どもが不登校になり、学校へ行こうと頑張っている子どもの前でこのCMが流れるたびに緊張が走る。違う言葉でCMを考えていただけないか。(8月)

・新コロナ禍で外出自粛の折に、浮かれた映像は傷ついた心を逆なでする。(10月)

・危険な状況にある子どもたちを扱う広告だが、コロナ禍で気が滅入りがちな時期だということも考慮すべきではないか。寄付を募るのはいいが、その寄付により明るい未来を子どもたちに届けられるということを強調すべき。(12月)

・働き盛り世代の人が亡くなり、葬儀に友人や恩師が集まるという表現があるが、自分も同世代であり、コロナで死が身近に感じられる中、若い人が亡くなるという表現に不快感をおぼえる。(12月)

EC関連の広告露出が増加

EC関連の広告露出が増加

2020年度はJAROに寄せられた「苦情」全体が前年比124.0%と大きく伸びた。これは、さまざまな調査により人々のメディア接触時間がコロナ下で増加したことが示されていることから、広告に触れる機会が増えたことが一因と思われると分析している。また、ステイホームという行動様式の変化に合わせEC関係の広告露出が増え、中にはコロナの不安に便乗して売ろうとする事業者も少なからずあったと考えられるとしている。

その中でコロナ関連の意見は888件寄せられ、「表示」関連465件、「表現」関連423件と同程度だった。表示関連の中にはJARO業務委員会で審議した事例もあり、「家族で吸えばコロナにならない」などとうたった水素酸素吸入器や、「一吹きで雑菌を99%除去」「ウイルスにかからないか心配」などと標ぼうした除菌剤に「見解」を発信して表示の改善を求めた。

一方で、感染の懸念や不安感、自粛疲れなどから来る「表現」に対する意見も多く寄せられた。コロナ以前であれば特に問題にならなかった表現にも意見が寄せられ、特に病気や死、事件・事故、災害などを扱うものには意見が多い傾向が見られた。

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