公取委、改善措置確認後に審査終了へ 楽天「共通の送料込みライン」

ECのミカタ編集部

楽天は、「『楽天市場』における『共通の送料込みライン』導入にかかる 公正取引委員会による審査終了に関するお知らせ」を公表した。

紆余曲折の楽天送料無料化

楽天は、同社が運営するECプラットフォームである楽天市場における、いわゆる送料無料ライン問題に関して、公正取引委員会の審査が終了しすると発表したことを受け、「『楽天市場』における『共通の送料込みライン』導入にかかる 公正取引委員会による審査終了に関するお知らせ」と題した文書を公表した。

楽天は、2019年に楽天市場へ参加している各EC事業者を対象に送料無料制度の義務化へ向けた情報を発表。同年8月には義務化を開始したが、一部の送料無楽天出店事業者が反発し、公正取引委員会が緊急停止命令を申し立てる事態に発展した。

その後、楽天側は2020年3月に義務化の一律実施を延期する措置をとり公正取引委員会も申し立てを一旦は取り下げたが、同年6月から7月にかけて送料無料化制度を導入しない出店者が不利になるともとれる措置の導入を検討していることがわかり、楽天は2021年5月には事前の通告なく出店プラン変更の際の義務化を開始したが翌月にはその義務化の実施も凍結している。

そして、2021年12月6日に公正取引委員会が送料無料の義務化は独禁法の疑いがあるとの指摘を行った。
そもそも独禁法とは、公正かつ自由な競争の実現を目指す法律で、今回のケースでは、商取引において優越的な地位にある事業者が、立場の弱い事業者に不当に不利益な行為を強いる「優越的地位の濫用」にあたるかが焦点となっていた。

楽天が公表した適時開示文書の全文

当社が運営する「楽天市場」の施策である「共通の送料込みライン」(以下「本施策」)の導入方法について、公正取引委員会は独占禁止法第19条(同法第2条第9項5号ハ)違反の疑いがあるとして審査を継続していましたが、当社が申し出た改善措置の実施を確認したうえで、本件の審査を終了することが発表されましたのでお知らせします。

2019年の本施策の発表以降、当社では全国47都道府県における出店店舗(以下「店舗」)との意見交換会やタウンミーティング、店舗をサポートする営業担当者、店舗向けのサイトなどを通じて本施策の説明やご意見の収集を行い、様々な見直しを行ってきました。

これまでも店舗への丁寧な説明を心懸けてきましたが、公正取引委員会との協議を踏まえ、改善措置として以下のコミュニケーション方針を定め、各店舗にご案内するとともに、社内での周知徹底を行うこととしました。

・法令遵守を前提とし、加えて、本施策の導入をお願いする際、もしくは導入後に適用対象外申請を検討される各店舗に継続をお願いする際には、各店舗の意思についてお話を傾聴します。

・本施策を導入していない店舗に対して、指摘を受けた事例で言及されたような、導入店舗であることのみを理由として優先して検索結果の上位に表示すること、その他導入店舗を著しく優遇すること等の、不利益な取り扱いを行わず、そのようなことを示唆しません。

・万が一、上記に反する行為があった場合には、以下の苦情・相談窓口に連絡するよう、各店舗に案内します。

楽天市場苦情受付窓口
(当窓口は、他の部署等から独立した窓口であり、申し立ていただいた内容について客観的に第三者的な立場で公平に対応を行います。当窓口へ申し立ていただいた事項をもとに店舗が不利益を受けることはございません。)

当社は、公正取引委員会からのご指摘を真摯に受け止めるとともに、店舗やユーザーの皆様のお声にも耳を傾け、今後も本施策の改善に努めてまいります。

岐路に立つ送料無料化問題

楽天はまた「共通の送料込みライン」は、「楽天市場」の対象店舗において同一の注文であれば、3,980円(税込)以上の注文の際に別途送料費目を取らない形で商品を販売する共通のルールだとしたうえで、同社は「楽天市場」での「買い物における送料のわかりやすさを向上させ、ユーザーにとってより魅力的なプラットフォームとすることで出店店舗の売上を伸ばしていくことを目的に、2020年3月より、同施策の導入を任意で開始し、現在では約92%の店舗が参加している」としている。

また同施策の開始後「送料のわかりやすさに関するユーザー満足度は大きく改善し、同施策開始時と比較して約15ポイント向上しており、導入店舗の売上の成長率は未導入店舗と比較して約18ポイント高く推移し、その結果として、3,980円(税込)以上の注文の95%以上が送料無料となっている」としている。

今回の公正取引委員会の指摘により、楽天市場における送料無料の義務化は、大きな転機を迎えたとも言え、今後の同社の動向が注視される。いずれにしろ楽天は、引き続き各出店事業者に対する丁寧な説明が必要となるだろう。

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