EC事業とは?市場規模推移やメリット・デメリット、事業立ち上げから運営のコツまで

ECのミカタ編集部

EC事業とは

ECは英語のElectric Commerceを略した言葉。直訳すると「電子商取引」となります。広義ではインターネット回線を利用した取引の総称ですが、一般的には商品やサービスをオンラインショップで販売することとして捉えられています。一番身近なのは、Amazonや楽天などのオンラインショッピングではないでしょうか。

物品販売以外にも、コンサートのチケット販売や、旅行・飲食店の予約、保険の契約などもすべてEC事業に含まれます。また、消費者へ向けての取引だけでなく、企業間取引(BtoB)専門のEC事業もあります。

ECの市場規模・EC化率の推移について

インターネットが消費者の生活基盤になってきている近年、それに伴いECの市場規模も年々拡大傾向にあります。経済産業省の調査によると、2019年度時点で日本国内におけるBtoC(企業と一般消費者の取引)EC市場規模は、物販系分野で前年比108.09%の10兆515億円。サービス系分野は107.82%の7兆1,672億円。動画・音楽配信サービスを含むデジタル系分野が105.11%の2兆1,422億円。総計で19兆3,609億円にも上り、2018年度からの伸び率をみると7.65%となります。

どの分野においても拡大傾向にありますが、中でも物販系におけるEC取引額の割合(EC化率)は6.76%で、2010年度からの9年間で約2.5倍の成長速度を見せています。
参考:令和元年度 内外一体の経済戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

このデータは消費者のネット通販需要の高まりを表していると見て取れます。中でもカギとなるのが、消費者間のEC市場であるCtoCです。
フリマアプリのヤフオクやメルカリ、ハンドメイド作品の販売などがこれにあたりますが、近年その動きは活発になっており、2019年度の市場規模は前年比109.5%の1兆7,407億円となっています。

また、2020年には世界的な感染症の流行によって、接触を避けて買い物ができる手段としてECの利用率が以前にも増して活発になりました。それまでオンラインストアで買い物してきた層とは別に、今まであまりオンラインストアを活用してこなかった層も使いはじめています。

事業者側でも、今までは実店舗を中心として運営していたアパレル店や飲食店が、売上確保のために積極的にEC分野への参入をはじめています。実店舗のショップスタッフがSNS運用やライブ配信プラットフォームを使い、販売活動をするなどの形も普及しており、今後ますますEC市場規模は大きくなることが予想されます。

国内ECモールの売上ランキング上位5社について

国内のECモール売上高TOP5は次のとおり。ランキングはECモール運営各社の決算資料をもとに、2019年の1年間の流通総額で割り出しています。

1.楽天(4兆5,000億円)


トップは国内EC市場規模最大となる楽天市場。楽天市場の決算資料によると、2020年度の国内流通総額は4.5兆円で、前年比119.9%と大きな伸びを見せています。ただし、この流通総額はグループ各社の合計額となるため、楽天トラベルや楽天ブックス、ラクマなど他サービスの流通額も含まれており、ECモールとしての売上のみを純粋に比較すると、Amazonジャパンが1位となります。

しかし、楽天はグループ内の各サービスの連携を組み合わせて利用することで、お得になる仕組みを作り出しているため、顧客を楽天ユーザーとして総合的に囲い込むことに成功しています。

また、資料によると感染症流行によるEC需要の高まりから、「復活購入者」と定義する1年以上購入のなかったユーザーと新規購入者が前年度比127%も増加し、さらに顧客ひとりあたりの購入額も前年度比115%向上しています。

2.Zホールディングス(Yahoo!)(3兆2,200億円)


Zホールディングスの2020年度のEC売上高は3兆2,200億円、前年度比124.4%と大きく成長を遂げています。中でもYahoo!ショッピングやZOZOTOWN、PayPayモールなどのショッピング事業の成長が著しく、前年比145.1%と大幅な伸び率となりました。EC流通総額は、ショッピング事業のほか、ヤフオク!やPayPayフリマ、Yahoo!トラベルなどのサービス事業の合計となっています。

3.Amazonジャパン(2兆1,714億円/推定)


アマゾンジャパンの2020年度の売上高は、約2兆1,714億円(推定)で、前年比127.8%となっています。こちらも巣ごもり需要に応えたAmazonパントリー(生活用品をひと箱にまとめて受け取れるサービス/2020年8月24日をもってサービス終了)や、さまざまな会員特典を受けられる、Amazonプライム会員サービスによる顧客の囲い込みが成長を支えています。

4.ZOZOTOWN(4,194億円)


Zホールディングスに含まれるZOZOTOWNですが、2020年度の単体での売上高は4,194億円で前期比121.%と好調。PayPayモールへ出店していることも業績に大きく貢献しているようです。上位3つのモールと比較すると流通額は低いように思えますが、ファッションに特化したモールでこの流通額はなかなかのものではないでしょうか。

5.Qoo10(3,000億円弱/推定)


Qoo10は業績を非公開としているため、あくまで推定となりますが、2020年の売上高は3,000億円弱と言われています。若い女性向けのコスメやファッションに強いサイトとして知られています。

EC事業を始めるメリット

EC事業の最大のメリットは、なんといっても時間や場所の制約を受けずにビジネスができることです。具体的には以下で解説します。

店舗がなくても始められる


実店舗を持たず、インターネットができる環境さえ整っていれば、どこででも事業を始めることが可能です。もちろん実店舗と併用してECサイトを運営することもできるため、販路の拡大につながります。

対象が国内全国・海外へと拡がる


日本国内はもちろん、近年注目されているのが海外展開のできる越境ECです。販路を海外にまで広げられるため、事業拡大の場として注目を集めています。

24時間注文を受けられる


ECサイトはインターネット上の空間にあるため、24時間年中無休で販売が可能です。いつでも好きな時に消費者がお買い物を楽しめるため、店舗営業時間という制約に捉われずに商品の販売が行えます。

リピート購入・定期購入がしやすくなる


顧客が店舗まで足を運ばなくても、気軽に買い物ができるため、リピート購入や定期購入つながりやすくなります。

EC事業を始めるデメリット

メリットがある一方で、EC事業にはデメリットも存在します。たとえば次のような問題点です。

接客・コミュニケーションが難しい


対面で接客する実店舗と比べて、お客様の顔が見えない中での接客をすることになるため、顧客の要望を直接聞くことや、反応を見ることができません。そのため、オンラインでのコミュニケーションが非常に重要となります。

競合他社との差別化が難しい


モール内には競合他社が多く出店しているため、他社との価格競争が激しくなります。そういった価格競争に巻き込まれないためには、自社のブランドを確立するなどして差別化を図らなければいけません。

集客が難しい


広大なインターネット空間の中、競合他社がひしめき合う中で、いかに自社のサイトを見つけてもらいアクセスしてもらえるかが大きな課題です。集客はEC事業を行う上で最も困難なため、自社内にWebマーケティングに強い人材を確保し、中長期的に施策を行っていく必要があります。

EC事業を立ち上げる7ステップ

では、実際にECを立ち上げる際にはどのようなことを考えないといけないのでしょうか。以下に7つのステップで解説します。

1.市場調査・競合分析


ECサイトを立ち上げる前に、まず市場調査と競合分析を行うことが重要です。市場は「自社が取り扱う商品・ジャンルの市場規模、動向、成長性、売れ筋商品」を見るようにしましょう。

市場調査の方法は取り扱うジャンルによって異なりますが、実際にインターネットの検索結果から信ぴょう性のある参照元を探す、総務省統計局の情報を見るなどがおすすめです。顧客情報はリアル店舗へ足を運んだり、口コミサイトや各ECモールのレビュー、SNSで口コミを探したりするなどが参考になるでしょう。

市場調査の次は競合分析です。複数の競合サイトをピックアップし、商品の価格、レビューの内容、どんな人が購入しているかなどを分析します。この競合調査を行うことで、自社のサイトがその業界でシェアを獲得できそうか、どうやって差別化を図るかなどの戦略が見えてきます。この競合を明確に設定できているかどうかで、ECの成功確率が大きく変わります。

このとき、ただサイトを見回るだけではなく、実際に競合から商品を購入することが大事です。ポイントはお客様目線で買い物をすること。実際に購入者の目線になることで、サイトのよい部分と改善するべきポイントを洗い出してみます。サイトの利用のしやすさはどうか、商品が届くまでのフローや、梱包状態、同梱物のチェック、アフターフォローはどうなっているかも見ておくとよいでしょう。

2.取り扱う商品・商材の選定


市場分析と競合調査を行ったうえで、自社のEC事業で扱う商材を決め、仕入れ先や製造先などを検討します。

3.在庫量や倉庫、物流・カスタマーのバックエンド部分を決める


ECを立ち上げる際に見落としがちなポイントが、バックヤードの業務です。まず、在庫の確保ですが、「立ち上げたばかりだから…」と、在庫数を少なくしてしまうと、予想外に売れた場合などに機会損失が大きくなります。

せっかくアクセスを集められたのに、在庫が無くて買えないという状況は、消費者の購買意欲を著しく低下させます。もしかしたらリピーターになってくれたかもしれない顧客までも、逃してしまうことにつながりかねません。仕入れまでにかかる時間から逆算し、適正量の在庫を用意しておく方が安心です。

倉庫はECサイトを運用するうえで、後になればなるほどコストが一番かかる部分になります。初期段階であれば、在庫管理データなどの引っ越しもすぐに済みますが、取り扱う商品点数や在庫数が増えてから外部倉庫に移転しようとすると、なかなかにたいへんな労力がかかります。そのため、月商100万円以上を狙う、どんどん事業規模を大きくしたいという場合には初期段階から倉庫の契約を視野に入れておくのもよいでしょう。

配送・物流周りもきちんと決めておきたいポイントです。これも基準は月商100万円以内か、それ以上の規模を狙うかで変わってきます。売上が上がると、必ず出荷業務は自社内で回らなくなります。それどころかEC運営のコア業務に携わる時間が減ってしまうため、元も子もありません。月商100万円以上、事業を大きくしたいのであれば物流周りも外部委託する方向で最初から考えておくのがベターです。

4.事業計画の作成


市場調査、競合分析、バックヤード業務も考えがまとまったところで、最終的な事業計画を固めます。どんな商品を、誰に、どうやって販売するかのコンセプトを固め、5年先を見た事業計画を立てます。ECシステムの減価償却は5年なので、EC構築の計画も5年単位で考えます。将来的にECサイトの規模を大きくする展望があるのであれば、その際必要となるシステムなどもすべて考慮する必要があります。

5.出店する場所を決める(自社EC・ECモール)


事業計画が完成すれば、次に売り場を決めましょう。ECは売り場を変えることにたいへんな労力がかかるため、最初に適切な売り場を選ぶことが重要なポイントです。よく、「自社ECかモールに出店するか悩む」という声もありますが、結論は両方もつことがおすすめです。

まず、自社ECに来るお客様とモールに来るお客様は被りません。モールを渡って買い物をするユーザーは全体の数パーセントしかいないため、単純に複数店舗をもつことで多くの顧客を獲得できます。

また、ECモールはその知名度の高さから、モール自体の集客力が高いです。そのため、新規顧客との接点においてはECモールが圧倒的に有利になります。さらに、ECモールはモールとして販促イベントを定期的に開催するため、購入前提のユーザーが多く集まります。一般的に自社ECサイトのCV率は1~2%と言われますが、モールのCV率は5%前後あることから、売上が期待できます。

ただし、ECモールではお店独自の世界観や固定のファンは作りにくい傾向にあります。ある程度母体のデザインが決まっているため、他店との差別化が難しく、またモール内検索で訪れたユーザーは購入したお店の多くを覚えていません。ECモールはあくまでも集客と売上を得る場だと考え、世界観の演出やファンを創出する場として自社サイトを運営するのがよいでしょう。

6.ECサイトのデザインや機能を決める


売り場を決めたら、あとはECサイトのデザインや機能面を決めていきます。

ECサイト立ち上げの際は、完全オリジナルデザインではなく、参考サイトをいくつかピックアップしておくことがベストです。なぜなら最初から完全オリジナルで独自の世界観を打ち出す必要があるのは、オリジナル商品を自社のチャネルで販売するD2Cのみだからです。仕入れ商品を取り扱うECサイトでは、オリジナルデザインを開発しても費用がかかるばかりで、とくに売上に大差は出ないからです。

また、機能面はECサイトに最低限必要な以下の4つの機能さえ揃っていれば十分です。
1.商品レビュー:口コミ効果で購入の後押し
2.再入荷お知らせ:売り逃しの機会損失を防ぐ
3.お気に入り登録:買い逃しを防ぎ、購入率を上げる
4.カートのリマインド:かご落ちによる機会損失を防ぐ

せっかく自分のECサイトを立ち上げるのだからと意気込むあまりに、多くの機能を実装した結果、サイトが重くなったり、見にくくなったりすることで逆に使い勝手の悪いECサイトになってしまう場合があります。
ECサイト運用をしているうちに、必要な機能や改善点が見えてくるので、はじめは少ない機能から実装して、タイミングが来たら改装を行えるように予算はおいておきましょう。

7.ECサイトを制作する


デザイン、機能面を決めたらあとは実際にECサイトを制作していきます。自社内に開発者がいる場合は社内で、開発者がいない場合は外部のサイト制作会社に依頼しましょう。

EC事業・ECサイト運営3つのコツ

最後に、ECサイト事業・サイト運営のコツについて解説します。

売上目標に合わせた売り場を決める


先述しているように、まずは自社のECサイトの規模をどこまで大きくするかで売り場を決めますが、このときあまりにも初期費用がかかるようなシステムを選ぶことは避けてください。最初からECシステムと基幹システムを連携させるようなものを作っても、数千万円以上かかるため、初期費用の回収見込みが立ちません。

とはいえ、将来的に基幹システムが必要になった場合に、システム連携ができないものでは困るため、きちんと事業計画を立てたうえで5年後に必要となるシステムの洗い出しを行い、システム選定をする必要があるのです。

集客方法について検討する(SNS・SEO・広告)


最初からブランド力があり、一定数の認知がある企業であれば集客には困りませんが、ブランド力が弱い企業の場合はWebマーケティングを行い集客する必要があります。先述したECモール出店も、この一環です。モール出店以外の集客方法として、SNSの運用やSEO対策、広告運用が挙げられます。

一番簡単に始められるのは広告運用です。リスティング広告やショッピング広告など、短期的な集客施策として行うとよいでしょう。ただし、このような広告効果は短期集中で限定的なため、広告出稿をやめてしまうとECサイトへの集客、注文も無くなってしまいます。そのため検索エンジンからの集客を増やすSEO対策で、中長期的な施策を行いましょう。また、ブランドの認知力をあげるには、自社のSNSアカウントをインフルエンサーに育てることも有効です。

サイトを分析し日々改善する


ECサイトの運営を行う上で一番大事なことは、日々サイトの動向を確認・分析して素早く改善をすることです。
また、失敗を恐れずにチャレンジを繰り返すことも大事だと思います。新しい施策をどんどん試し、しっぱいすれば改善するために考える。これこそが、ECサイト運営のコツだと思います。

まとめ

元々EC市場は年々成長し続けていましたが、近年のコロナ禍によって更に加速的に伸びています。店舗のみで事業展開していた方も、今後新規参入を検討している方も、ぜひ本記事を参考にECサイト運営を始めてみてください。

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