物流の自動化とは?倉庫で活躍するロボットや事例、デメリットを解説

ECのミカタ マーケティング部

物流の自動化とは?倉庫で活躍するロボットや事例、デメリットを解説

EC事業において物流の自動化は、業務効率を上げる重要な要素です。

本記事では、物流、特に倉庫における自動化について、実用化されているシステムやメリット・デメリットを交えて解説していきます。

物流の自動化とは

物流倉庫の自動化とは、商品の出入荷、ピックアップや保管など、倉庫内における一連の業務を自動化することです。

新型コロナウイルス感染症の影響などにより、オンラインショッピング需要が急激に増え、物流倉庫は人員不足や作業品質向上といった課題を抱えています。

事業者のあいだでは、倉庫業務を自動化することで、作業の効率化を図る動きが拡大しつつあります。

自動化の進化の中心となっているのは、物流倉庫での作業を効率化するシステムです。具体的には、ピッキングや梱包、ソーティングなどの業務をロボット技術や人工知能(AI)が支え始めています。

物流倉庫のロボットについて

当記事ではソフトウェアなどを含む包括的な意味合いで「システム」、実体のある機器を指して「ロボット」と呼びます。

物流倉庫内で多岐にわたる業務を自動化するロボットは、効率化を図る鍵です。人間の作業をサポートするだけでなく、時には代替する役割も果たしています。

物流倉庫で用いられる代表的なロボットは、以下の3つです。

ロボットの種類 できること 期待する効果
ピッキングロボット 商品を棚から取り出す 作業員の負担を減らすだけでなく、作業の速度と正確性が増す。
搬送ロボット 商品を指定された場所に移動する 商品が適切な場所に置かれていることで、作業員の負担や人的なミスが軽減される
仕分けロボット 注文ごとに商品を分類し、梱包ラインへ送る 出荷までのスピードを速められる。注文ミスや分類ミスによるエラーの削減。

上記のようなロボット技術は、物流作業の効率化とコスト削減に大きく貢献します。今後も技術の進歩に伴い、さらに高度化したロボットが、多様な業務に対応するようになるでしょう。

物流倉庫内の業務を自動化するシステム

物流倉庫の業務を自動化するシステムは、効率性と正確性の向上を目指して技術開発が行われ、あらゆる倉庫で導入が進んでいます。

業務を自動化するシステムの一例として、以下の3つを挙げます。

  • ピッキングの自動化システム
  • 検品の自動化システム
  • 荷物の搬送と保管の自動化システム
  • 倉庫管理システム

ピッキングを自動化するシステム

ピッキングとは、出荷指示のあった商品を探して集めることを指します。ピッキングの自動化において用いられるのは、自動ピッキングシステムです。物流倉庫においては、商品バーコードをハンディターミナルで読み取って管理するものが一般的です。

自動ピッキングシステムは、出荷指示書の商品バーコードをもとに、指定された場所でピッキングして、バーコードを読み込んで照合します。バーコードで管理するため、ピッキングにかかる時間を短縮できるうえ、作業員がピッキングするよりも正確です。

そのほかにも、ヘッドセットの音声指示に従ってピッキングするシステム、デジタル表示をもとに保管場所を把握してピッキングするシステムなどがあります。

検品を自動化するシステム

自動検品システムは、これまで目視で行っていた入荷や出荷、棚卸の検品作業を効率化し、人為的なミスを減らしてくれるシステムです。

ハンディターミナルやスマホ、AI技術を用いた画像認識システムなどを利用し、倉庫管理システムから出力したデータと照会することで、スピーデイかつ正確に検品作業を実施できます。

また、人間が行った場合には、経験者と初心者では作業効率の差が生まれますが、検品システムに作業を任せることで、均質化した作業品質を保つことが可能です。

荷物の搬送を自動化するシステム

荷物の自動搬送システムも、物流倉庫内での業務を大幅に効率化してくれます。

搬送システムには、コンベア、昇降システム、ソーティングシステム(商品仕分けを行う搬送システム)など、用途によってさまざまな種類があり、倉庫システムと連携して活用されるケースが一般的です。

自動搬送ロボット

自動搬送ロボットは、ピッキング対象の商品があるラックや商品自体をプログラムされたルートに従って移動させるロボットです。

アームを使用してラックやパレットを作業スペースまで移動させるアーム型、レールに沿って荷物を台車で運ぶレール型などがあります。

作業員が倉庫内を歩き回ってピッキングする場合に比べて、時間を大幅に短縮できます。

また、ロボットの普及に伴い、AIの活用も増加しています。ロボット自体の学習機能によって効率的に稼働するため、ピッキング作業を自動で最適化することが可能です。

例えば、自動マッピング機能により独自のルートを算出し、効率的に搬送作業を行うロボットなどがあります。

荷物の保管を自動化するシステム

荷物の保管を自動化するシステムは「自動倉庫システム」とも呼ばれ、保管だけでなく、商品の入庫から出庫までの一連の流れを自動で一元管理するシステムです。

自動倉庫システムには以下のような種類があります。

  • パレット型
  • バケット型
  • フリーサイズ型
  • 移動棚型
  • 縦型回転式自動棚
  • 冷凍(冷蔵)対応型自動倉庫
  • 傾斜式流動棚型(フローラック)

上記は、保管する商品の数や形などによって、適性が異なります。

自動倉庫システムを導入することによって、人間が管理する際には利用が難しい天井などの立体スペースまで有効活用できます。

また、自動倉庫システムを導入することで、人間とシステムの作業分担もスムーズに進められます。

倉庫管理システム

倉庫管理システムとは、倉庫内の在庫情報・入出荷情報・納品書発行などの作業を一元管理するシステムです。倉庫内の入出荷の動きをリアルタイムで確認し、ピッキングや検品をより効率化できます。

在庫管理システムと連携すれば、在庫数の自動集計もできるうえ、保管場所をリアルタイムで把握できます。さらに、販売管理システムと連携すると、受注過多や機会損失を防ぐことも可能です。自社の業務体制にあったソフトウェアを選択することで、適切な倉庫管理を実現できるでしょう。

ラベリングシステム

ラベリングシステムは、出荷先の情報や追跡コードを印刷し、商品に貼り付けるまでのプロセスを自動で行います。人頼みの作業ではなくなるため人的エラーが減り、人件費も削減できるでしょう。

包装システム

商品の梱包作業を自動化・半自動化する包装システムも、迅速かつ正確な出荷に貢献します。完全自動かつ高速で箱を組み立てるシステムもあれば、一部手動のものもあります。包装のサイズや形状、資材のタイプに合わせて、さまざま包装ロボットが存在しています。

物流を自動化するメリット・デメリット

物流倉庫の業務を自動化することは、EC事業者に多くのメリットをもたらす一方で、デメリットとなる部分もあります。

メリット・デメリットの両方を理解して、自社にあった自動化の導入を検討しましょう。

メリット

物流倉庫を自動化すると、作業の効率化を図れるだけでなく、生産性や業務品質の向上も期待できます。導入にはコストがかかりますが、コスト以上のメリットを得られる可能性もあるため、一度チェックしてみるのがおすすめです。

以下では、物流倉庫の自動化によって得られるメリットを紹介します。

生産性・作業効率の向上

物流倉庫を自動化すると、ピッキングや出入庫をはじめ、人的作業を減らせます。人的作業を減らすメリットは、業務の効率化だけではありません。

手作業の場合、シフト調整や業務交代の手間が生じるほか、休憩時間を設ける必要があります。特に、危険性のある場所や商品を取り扱う場合には、よりシビアな環境整備が必須です。しかし、システムやロボットはフルタイムで稼働できるうえ、場所や商品を問わず、安全に作業できます。

また、重い商品の取り扱いや危険な作業から人間を遠ざけることで、不慮の事故や怪我を減らすことができます。

人員コストの削減

作業量が増えるたびに、対応できるだけの人材を確保する場合、人件費がかさみます。システム導入コストよりも、人件費のほうがかかるケースもあるでしょう。また、人材を確保する場合には、スキルアップや教育にかかる人員コストもあるため、総合的に考えると自動化システムを導入したほうがコストを抑えられる可能性が高いと考えられます。

業務品質・製品品質の安定

人の手による作業は、ヒューマンエラーを避けられません。どんなに注意していてもミスが発生する可能性はあります。

しかし、自動化システムを導入すると、ピッキングミスなどを減らせます。つねに一定のスキルで作業できるため、業務品質の安定も見込めるでしょう。

また、業務品質だけではなく、製品品質も安定します。倉庫内に人の出入りが多いと、虫や異物の混入、温度や湿度などの環境悪化を招きやすくなります。自動化によって人の出入りを減らすことにより、製品品質の安定化を図れることもメリットの一つです。

デメリット

物流倉庫の自動化は、生産性や業務品質の安定が見込まれる一方、デメリットもあります。導入を検討するうえでは、デメリットについても理解しておくことが大切です。

以下では、物流倉庫自動化によるデメリットを紹介します。

導入コストがかかる

倉庫の自動化におけるデメリットは、導入コストがかかることです。汎用性の高いシステムや設備の導入には、多大な初期費用がかかります。そのため、実際に導入した場合、どの程度コストを削減できるかを計算したうえで、導入コストと比較して検討すべきです。

もし、資金面に不安があれば、自動倉庫をレンタルしたり、ロボットをリースするという方法もあります。レンタルやリースであれば、初期費用を抑えつつ、倉庫業務にかける時間や人員コストの削減につながるでしょう。

システムトラブルによる業務停止の可能性

自動化された倉庫ではシステムや設備にトラブルが起きた場合、業務が止まってしまうリスクがあります。機械やシステムの障害により、一時的にでも業務が停止すれば大きな損失がでます。そのため、導入時には不具合が起きた際の対応をマニュアル化し、周知することが重要です。

特にシステムへの依存度が高い場合には、業務の遅延や停止を招く恐れがあります。

また、システムの影響範囲をチェックしておくことも必要です。システム障害により顧客に支障がないかを検証したり、バックアップなどの対応を検討したりすることをおすすめします。

物流倉庫業務の自動化システム導入にかかる価格相場

物流倉庫業務の自動化システム導入にかかる費用は、どのシステムを導入するかによって異なります。また、設置環境や規模によっても金額は大きく変わってくるでしょう。

実際のロボットや機器を導入する場合は、多額の設備投資が必要になりますが、小規模な自動倉庫システムでも1,000万円以上の導入費用がかかるとされています。

ただし、メーカーやシステムの提供元によっても異なるため、正確な価格や費用を知りたい場合は、見積もりを取ることが大切です。

また、自社で自動倉庫システムを導入するよりも、委託倉庫の利用料のほうが安い傾向にあります。コストを抑えつつ、倉庫業務を自動化して効率化したいという場合は、委託倉庫の利用も選択肢に入れておきましょう。

内部リンク:https://ecnomikata.com/ecnews/38861/

物流の自動化における課題

物流業界における自動化の推進は、「物流の2024年問題」にも関係があります。働き方改革関連法により運送ドライバーの労働時間に上限が設けられるため、物流業界全体として、配送能力の維持確保に努めなければならないのです。

その解決策の1つとして注目されている物流の自動化ですが、初期投資コストのほか、運用における技術力不足が課題となっています。

持続可能な物流システムの構築と業界の継続的な発展のため、その課題に対処しながら、自動化を進めていく必要に迫られています。

物流の自動化に成功した企業事例

物流の自動化に成功した企業事例として、以下の3社を紹介します。

  • 株式会社ファーストリテイリング
  • 日本通運株式会社
  • 日清食品
  • タカラトミー
  • ファンケル
  • 東洋水産
  • ユニ・チャーム

株式会社ファーストリテイリング

ユニクロやGUを運営する株式会社ファーストリテイリングは、物流倉庫の自動化に大きな投資をしています。代表的な取り組みとして、産業用ロボットを手がけるダイフクやMUJIN、Exotec Solutions SASとの連携があります。

従来は難しいとされていた衣料品のピッキングシステムを整備することで、商品の企画から10日後に店舗に届く仕組みづくりを目的としています。

日本通運株式会社

日本最大規模の総合物流企業である日本通運では、作業者の不足という課題を自動化システムの導入で改善しました。

具体的には、自動フォークリフト(AGF)とオートレーター(自動垂直昇降機)を連携させ、既存倉庫での「夜間の出荷準備作業の自動化」を実現したのです。

この導入により、深夜時間帯での自動搬送を実現し、年間で約3,000時間、人件費では約1,000万円の削減を達成しました。

日清食品

カップヌードルを販売する日清食品は、ロボット技術を活用した自動化に力を入れています。

主な目的は、ヒューマンエラーの防止とフードディフェンスの向上です。導入後は、不良品の100万分の1以下に抑えており、導入目的を達成できています。

タカラトミー

トミカやリカちゃん人形を販売するタカラトミーは、出荷体制を整えるべく、倉庫管理システムを導入しています。従来の1.5倍の面積を確保したうえで、機械化によって1日あたり1,500件の注文を処理できるシステムを実現しました。

ファンケル

化粧品を販売するファンケルは、物流拠点集約に伴う倉庫の自動化を実施しています。倉庫管理システムのもと、ケース自動倉庫を導入しており、物流インフラを大幅に強化しています。

東洋水産

マルちゃんで有名な東洋水産は、倉庫管理の徹底や物流業務の効率化を目的に、自動化倉庫を導入しました。冷蔵や冷凍の商品も取り扱っているため、エリアごとに温度帯を分けたうえで、ロボットによるスムーズな入出庫を実現しています。

ユニ・チャーム

衛生用品メーカーのユニ・チャームは、倉庫の自動化によって物流フローの効率化に成功しました。パレット自動倉庫や高速搬送台車を導入したため、無人稼働にも対応できるようになり、夜間も対応できる環境を整えています。

アスクル

オフィス向けの事務用品の通信販売を手がけるアスクルでは、EC事業拡大による倉庫作業の人手不足を改善するために、自動搬送ロボットと自動ピッキングシステムを導入しています。結果的に倉庫作業でもっとも負担となる「歩く」作業が軽減され、省人化と省力化に成功しています。

コストを抑えながら物流を自動化したい場合はアウトソーシングがおすすめ

自動化システムの導入には多くのメリットがある一方で、コストの高さがボトルネックになります。

そこで、検討したいのが、物流自動化を備えた業者へのアウトソーシングです。アウトソーシングとは、特定の業務を外部へ委託することをいいます。

自動化にかかる費用だけでなく、自社物流でかかる固定費も、物流アウトソーシングを利用すれば抑えることが可能です。

さらに、専門性を生かし、スピードも質も向上した物流業務を提供してくれるため、EC業務の効率化や顧客満足度の向上も期待できます。

物流プロセスの効率化実現に向けた提案をしてくれることもあるので、コストの削減を図りながら、業務全体の改善にも着手できるでしょう。

このようにみてくると、多彩な商品を取り扱う物流代行業者へのアウトソーシングは、人手不足、急激な事業拡大に直面している企業にとって、特に有効な選択肢といえるのではないでしょうか。

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