スタートトゥデイの新サービス始動、「ウェア」の実力は?  着こなしレシピが主力に

スタートトゥデイ10月31日、新サービス「ウェア」の提供を始める。専用アプリで服のバーコードを読み取って通販サイトに誘導する機能を持つことから商業施設が警戒する中での船出となったが、同社が描く消費者の利用風景は少し異なるようだ。

「『ゾゾタウン』を超えよう!」を旗印に、「ウェア」を手がける社内チームは燃えているという。

主力のファッション通販サイト「ゾゾタウン」は約10年をかけて500万人超の会員を抱える巨大サイトに成長したが、同社が来年3月末の目標として掲げる「ウェア」専用アプリのダウンロード数は500万件。日々のユニークユーザー数で「ゾゾタウン」を上回る規模感だ。

一見、かなり高い目標設定にも映るが、そこには服の買い手にとって便利な機能が搭載されているだけでなく、「ゾゾタウン」には登場しない小規模なショップ運営者も参加できる仕組みが関係していそうだ。

そもそも、新サービス「ウェア」は、ネット販売専業が仕掛ける実店舗の"ショールーミング化"という構図が極端にクローズアップされているが「実際のところ、バーコードスキャンの利用はごく一部。主力のサービスはコーディネートレシピ機能を想定している」(前澤友作社長)と言うように、一般ユーザーがアパレル販売員や他のユーザーが投稿するコーディネート画像を閲覧して、着こなしの参考にする実用的なアプリだ。

主婦などが料理作りの際にチェックするレシピサイト「クックパッド」のファッション版のような位置付けで、毎朝、どんな格好をするか悩んだときに必要とされるアプリを目指している。

前提として、日頃から消費者に着こなしの提案をするブランドの協力なくしてはサービス自体が盛り上がらないため、スタートトゥデイでは多くのアパレル企業が参加しやすい環境を整備。10月31日のサービス開始時はセレクトショップなど約200ブランドと限定的だが、オープン後すぐに、誰でもブランド登録、ショップ登録をできるようにする。

その際、今年7月に子会社化した無料通販サイト構築サービス「ストアーズ・ドット・ジェーピー(=ストアーズ)」を手がけるブラケットとの連携を図る。

例えば、地方のショップオーナーが「ストアーズ」で通販サイトを開設し、同じように「ウェア」にも無料で商品情報とショップ情報を掲載する。店長自ら商品を着こなしてファンを集め、商品を購入したい消費者は「ウェア」経由で「ストアーズ」の自社サイトに来店してもらう。こうした「ウェア」と「ストアーズ」の連携で実績ができれば、いよいよ「ゾゾタウン」から出店依頼が来るというシナリオもあるようで、「ブラケットを子会社化したときに、そういう構想を描いていた」(前澤社長)とする。

将来的には世界中のアパレルショップがPRの場として活用できるオープンなアプリを目指すとしている。

服の買い手である一般ユーザーに向けた「ウェア」の利用促進策としては、まずはファッション好きが集まる「ゾゾタウン」の顧客をターゲットにする。

「ウェア」には、自分が持っている服をアプリ上で管理できる"マイクローゼット機能"を搭載しているため、「ゾゾタウン」で商品を購入した際には、当該商品を「ウェア」のクローゼットに登録するよう促すほか、「ゾゾタウン」でお気に入り登録している商品を「ウェア」内の「セーブ」フォルダにワンクリックで反映させることもできるという。

リアルの場でも、ブランドの協力を得て手提げ袋に「ウェア」のチラシを入れてもらい、購入商品のコーデを見てもらえるよう案内することも検討。「買った服をどう着こなすかは共通の悩みで、それに応えていきたい」(前澤社長)とする。

スキャンも多彩

一方で、バーコードスキャンの機能については、商品バーコードを読み込む以外にも、実はいろいろな使い方を用意している。

例えば、「ゾゾタウン」では商品購入者に納品書を同梱しているが、納品書についたバーコードを読み込むと購入商品を使ったコーデがアプリ上に表示できるため、次の買い物の参考になる。

また、「ウェア」の他のユーザーのページを閲覧して着こなしの参考にしたいと思ったら、各ユーザーに割り振られたバーコードをスキャンすることで当該ユーザーをフォローできる。この機能を使えば、店舗スタッフが自分のバーコードを印刷したショップカードなどを顧客に渡してスキャンしてもらうことで、販売員のページでお薦めコーデをチェックしてもらえるなど来店時以外でも顧客との接点が持てる。

また、"マイクローゼット機能"については、毎日の自分のコーデも登録できるため、このシャツはいつ、どんな組み合わせで着たかなどもアイテムごとに検索できる。つまり、SNSには参加せず、コーデを他人に見られたくないというユーザーでも、自分のためのアプリとして利用できるわけだ。

こうしたさまざまな機能を持つ「ウェア」だが、バーコードスキャン機能はほとんどの商業施設が利用を認めていない。

それでも、このほどパルコが大型商業施設としては初めて「ウェア」の試験導入に名乗りを上げた。バーコードスキャン機能が利用できるようになる11月8日から約半年間、パルコの4店舗(渋谷、池袋、名古屋、千葉)でテストを実施することが決まっており、商業施設での"スキャン解禁"への突破口となるか注目される。

【前澤友作社長の真意は?】パルコが試験導入へ

──商業施設が警戒する中でのスタートだが。

「『様子を見たい』というデベロッパーさんが多いのは事実だ。ただ、当初はスキャンして読み込んだ商品をネットで買う場合、『ゾゾタウン』にしか飛ばない限定的なサービスという情報が独り歩きしてしまい、感情的になられていたと思う。ようやく少し状況が変わってきて、話を聞いてみたいというデベロッパーさんも出てきた。今回のパルコさんの試験導入で、興味を持ってもらえる企業が増えることを期待している」

──ブランドの路面店中心だとサービスが広がりにくい。

「商品情報を読み込むこと自体は法的には問題ないが、賛同されていない商業施設でサービスを強行するわけにはいかない。NGを出している商業施設ではスキャンできないようにする機能を途中で追加したことで、当初の開始予定から1~2カ月遅れてしまった」

──スキャン機能を立ち上げるには具体的にどうすればよいのか。

「スキャン機能を使用できる店舗には、店頭や壁面などに大きなバーコードマークを記載したポスターが貼ってあったり、専用のポップなどが設置されている。パルコさんが試験導入する際のイメージ画像にもあるが、壁や床などに大型バーコードが貼ってあり、これを読み込むことで初めて、商品をスキャンする画面が立ち上がる仕組みだ。不正使用を防ぐため、システムの裏側では位置情報も確認している」

──「ゾゾタウン」とブランドの自社通販サイト以外に誘導することはできるのか。

「もちろんできる。なるべくブランドさんの希望に沿える形にしていきたい。遷移先の通販サイトとのデータ連携が必要になるので、例えば、アマゾンさんのサイトなどに飛ばすことも先方の了解が得られれば可能だ。今のところ、自社通販サイトにだけ飛ばしたいというブランドはない。各社とも、顧客の利便性を考慮して購入先を複数選択できるようにしている」