ライブコマースとは?市場規模や日本での成功事例なども解説
ライブコマースは、販路拡大の選択肢の1つとして有用です。
今回は、ライブコマースについて詳しく解説するとともに、ライブコマースに適している商品や「日本では流行らない」といわれる理由についても紹介します。プラットフォームや企業の比較もおこなっているので、販売手法として取り入れる際の参考にしてくださいね。
なお、この記事では2024年7月時点の情報を掲載しています。
ライブコマースとは
ライブコマースとは、「ライブコマース」とは、販売したい商品のライブ動画を配信し、商品の内容を詳しく説明しながら購入を促す販売形態です。視聴者とリアルタイムでやりとりすることで、高い販促効果を発揮します。
視聴者は配信中に直接質問し、回答の内容を考慮して商品の購入を検討できます。双方向のコミュニケーションのとりやすさが、ライブコマースの魅力の1つです。また商品の購入率も、通常のECサイトよりも高い傾向にあります。
ライブコマースは特に中国で広がっていて、現在は多くのブランドやインフルエンサーが利用しています。日本でも近年、企業が積極的に取り入れている方法です。
仕組み
ライブコマースでは、企業やインフルエンサーが特定のプラットフォームにて商品を紹介します。視聴者はリアルタイムで商品の使用感や利用シーンを確認しつつ、疑問があればコメントできる仕組みです。
配信画面に表示される購入リンクやQRコードから、すぐに商品を購入できる機能が用意されているプラットフォームもあります。
視聴者はライブを通して、実際に店舗でショッピングしているように感じられ、随時質問もできるため、不安を取り除いた上で商品を購入できるのです。
市場規模
日本における物販分野のBtoC-EC市場規模は年々拡大しているため、販促方法の1つであるライブコマースも、認知度の上昇や視聴者の増加にともない、市場が拡大していると推測できます。
少し前の調査ですが、2018年に日本人を対象におこなわれたライブコマースについての調査では、ライブコマースを知っている人の割合は31.9%で、視聴経験があると答えた人は3.9%だったようです。調査から5年以上が経過しているので、現在は認知度・視聴経験ともに上昇していることでしょう。
ちなみに、視聴経験者のうち、商品を購入した経験のある人の割合は、54.8%と半数を超えています。
出典:
令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書|経済産業省
「ライブコマース」に関する調査結果|NTTコムリサーチ
ライブコマースのメリット・デメリット
ライブコマースを取り入れるかどうかは、メリット・デメリットを念頭に置いて検討すべきです。ここからは、ライブコマースを導入するときに期待できる効果や懸念される点を解説します。
メリット
臨場感のある購買体験が提供できる
リアルタイムの配信であるライブコマースは、配信者と視聴者がコミュニケーションをとりながら商品を購入するという購入体験を提供できます。そのため、消費者は実店舗において実際に店員と会話しながら商品を購入しているような感覚や臨場感を味わえます。
商品の魅力を的確に伝えられる
購入を検討している商品について、チャットで質問するとリアルタイムに配信者が答えることができるため、より商品の魅力を的確に伝えられます。商品によっては、開発者や生産者など作り手が登場し、直接商品にかける思いや魅力を伝えることも可能です。
新しい客層を獲得できる
ライブコマースでは、多くのファンやフォロワーを持つタレントやインフルエンサーにライブ配信をおこなってもらう手法も活用できます。これにより、通常では接点のないような顧客へのアピールにつながり、新しい客層の獲得が期待できるのもメリットです。
商品開発やキャンペーンのヒントが得られる
チャットを通じて視聴者とコミュニケーションをとることは、販売以外にも顧客のニーズを知る機会となり、商品開発やキャンペーンのヒントが得られます。例えば、色やサイズについての質問が多い場合には、色とサイズ展開をもっと幅広く対応することで、より売上が上がる場合も考えられます。
ECサイトで購入した商品にレビューを書くよりも、ライブコマースでコメントを残すほうが気軽にできるため、多くの視聴者の声をデータとして集め、よりよい商品やサービスを生み出す手段としても活用できます。
デメリット
コストがかかる
ライブ配信をおこなうために、準備や運営に時間とお金がかかるのがデメリットです。商品のターゲットとなる視聴者層が集まる時間に配信することが大切なため、夜や休日などに対応が必要になります。
そのため、配信対応できる人材や時間の確保に苦戦する企業もあります。またリアルタイムの配信では、トラブルに臨機応変に対応できる体制を整えることも必要です。
成果が配信者に左右される
商品の購入率が配信者の力量や配信内容に左右されることも、懸念すべきポイントです。リアルタイムの質問やコメントに対応するために、配信者には高いコミュニケーション能力と商品に関する知識が求められます。
話すのが得意でも、視聴者への誠実さや商品知識が欠けていると、視聴者の誤解を招いたり、ブランドイメージを低下させたりする可能性がある点に留意しましょう。
資産性が低い
ライブ配信は基本的にその場限りのものになるため、そこで商品が売れなければ時間やお金が無駄になってしまいます。良質な配信の後はアーカイブを残し、ライブ配信に来れなかった人にも見てもらう工夫が大切です。
ライブコマースは「日本では流行らない」という声も?
ライブコマースは「日本では流行らない」という声もみられます。ここからは、このようなネガティブな意見がみられる理由を解説します。
ライブコマースにおける日本の現状
一部でライブコマースが「日本では流行らない」といわれるのは、大手企業がECモール型プラットフォームに参入したものの、売上が伸びずに撤退した例が複数あるためかもしれません。
また成功事例があまり知られていないことや、ライブコマースをおこなう配信者が少ないことも、ライブコマースが流行らないといわれる原因の1つと考えられます。たしかに、動画配信やSNSでの商品宣伝をおこなうインフルエンサーは増えていますが、ライブ配信に必要な能力をもつ人は多くありません。
しかし、近年は大手百貨店やアパレルメーカーなどがライブコマースを導入し始めています。また、配信用プラットフォームも増えています。ネガティブな声もありますが、悲観的に考える必要はないでしょう。
ライブコマースと日本のECサイトの相性
結論、日本のECサイトは、ライブコマースとの相性はよいといえます。ライブコマースの導入によって、従来のECサイトでは満たしきれなかった、利用者の「安心して商品を購入したい」というニーズに応えられるでしょう。
また、ライブ配信中に限定割引や限定商品を提供することで、ECサイトとライブコマースの相乗効果を狙えます。
一方で、技術的な準備や配信者のコミュニケーション能力、商品知識を向上させることなど、解決すべき課題も多く存在するのも事実です。これらの課題を改善することで、日本のEC市場におけるライブコマースの普及が進むと期待されています。
ライブコマースに適した商品
ライブコマースを活用する場合には、生配信の特性をより活かせる商品を選定することが重要です。
例えば、「グルメ」「衣料品」「化粧品」「日用品」「アウトドア用品」などは動画配信でも見栄えが良く、ライブコマースにおいて定番の商品といえます。
一方で、ライブコマース市場の利用は、若年層に多いことから、高年齢層を対象とした「健康サプリ」や「健康グッズ」などの商品は、ライブコマースには不向きな可能性が高いでしょう。
日本でのライブコマース成功事例
日本では、さまざまな企業がライブコマースを導入し、成功を収めています。ここでは、ライブコマースの成功事例を解説します。
資生堂
化粧品メーカーである資生堂のオンラインストア「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」では、新商品のメイクアップ法を紹介したり、イベント会場からの中継をおこなったりと、ライブコマースを活用しています。
リアルタイムで商品についての質問をしたり化粧品の使用方法を確認したり、対面販売に近い体験をオンラインで実現した結果、コロナ禍でも売上増加に成功しているようです。
出典:SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE ライブ配信 | SHISEIDO | 資生堂
ユニクロ
「UNIQLO LIVE STATION」は、総合アパレルブランド「ユニクロ」が提供するライブコマースサービスです。UNIQLO LIVE STATIONでは、商品紹介だけでなく日々のスタイリングの提案もおこない、視聴者の購買意欲を高めています。
商品やコーディネートの紹介を中心に、切り口の異なるさまざまな特集企画を配信しているのが特徴です。
チャット機能での質疑応答や、アイコンクリックで商品の購入ページに飛べる機能などが充実していることや、プレゼント企画などで特別感も得られることも、視聴者から支持される理由といえるでしょう。
参考:ライブ配信メディア「UNIQLO LIVE STATION」年間累計視聴者数1,000万人突破|UNIQLO ユニクロ
UNITED ARROWS
アパレルショップ「UNITED ARROWS」が展開する「LIVE Shopping」も、ライブコマースの成功事例の1つです。月に1、2回程度のペースで、店舗スタッフが新作商品やおすすめ商品を紹介しています。
商品が気になった視聴者は、配信画面からUNITED ARROWSの公式サイトに飛び、商品を購入できます。
また出演するスタッフが質問に答えるだけでなく、商品の着心地やサイズ感、コーディネートのコツなども紹介していて、配信の視聴後に店舗に足を運ぶ人が増えているようです。
参考:UNITED ARROWS LTD. LIVE Shopping|ユナイテッドアローズ公式通販
【比較】ライブコマースのプラットフォーム・ツール
現在、さまざまなライブコマースのプラットフォームやツールが存在しています。ここからは、それぞれのサービスの特徴を解説します。
インスタライブ
インスタライブは、ライブコマースを始める企業の8割が利用するといわれています。無料で導入でき、すでにいるフォロワーがライブを視聴しに来てくれる点がメリットです。
一方で商品を購入するには、配信から一度抜ける必要があるため、視聴者は重要な情報を聞き逃してしまう可能性があります。配信アーカイブを残し、ゆっくりと買い物できる工夫をおこなうべきです。
HandsUP
HandsUPとは、5,000万人のユーザーを抱える17LIVE株式会社が運営するライブコマースのプラットフォームです。スターバックスコーヒーやファンケルなどの大手企業のライブコマースをサポートした実績があります。
ライブ配信の視聴中でも商品をスムーズに購入したり、ログイン不要で誰でもコメントしたりする機能が導入されているほか、配信アーカイブを残すことも可能です。
ブラックリストやNGワードをブロックする機能も標準装備されていて、配信中でも特定のコメントを非表示にできるため、安心して配信できます。
Live kit
BIPROGY株式会社が提供する「Live kit」は、自社のECサイトやWebサイト内で商品を販売できるライブコマースのプラットフォームです。ヤマダ電機やピーチジョン、阪神タイガースなどが導入しています。
配信を見ながら、同一サイト内で商品を購入できるのがメリットです。また視聴者はアプリをダウンロードする必要がないのもうれしいですね。
【一覧】ライブコマース企業
ライブコマースのサポートをおこなう企業の例は、以下のとおりです。
企業名 | 特徴・サービス |
---|---|
17LIVE株式会社 | 「HandsUP」では、導入から成功まで 伴走型コンサルティングをおこなっている。 使いやすい操作性とサポート体制がある ライブコマース支援ツールも利用できる。 |
BIPROGY株式会社 | 「Live kit」では、自社ドメインで配信できる。 EC領域全般のノウハウをもつコンサルタントが企画や配信、 撮影後の分析までバックアップしてくれる。 |
株式会社タートルミュージック | 「ライブコマース コンサルティングパック」では、 機材の導入から番組制作のノウハウまで、 ライブ配信を総合的にコンサルティングしてくれる。 |
株式会社Moffly | 「TAGsAPI」は、ライブコマースだけでなく、 ショートムービーにも対応している。 企画立案から配信までトータルでサポートする ライブ配信代行サービスもある。 |
株式会社The Unit | 「ライコマ」では、独自ツールの提供から ライブコマースの導入・活用までサポートしてくれる。 |
ライブコマースを成功させるには、自社に合ったサービスを利用しましょう。
ライブコマースには問題点も……
ライブコマースには、問題点がいくつかあることも押さえておきましょう。
例えば中国では、ライブコマースで商品を購入した人からの苦情が増えています。具体的には、虚偽や誇大表現が含まれる違法な宣伝がおこなわれたり、配信時の説明と異なる品質の商品が届いたりするなどの問題が発生しています。
こういった背景から中国広告協会は、ライブコマースの規範化に向けた自主ガイドラインを制定・施行しました。
また、ライブコマースはSNSと同様に悪質なコメントが多くなりやすいのも、問題点の1つです。迷惑行為をくり返す視聴者をブロックする機能がない場合は、迷惑行為が加速してしまいます。違反・禁止行為によるトラブルから、ライブコマースのサービスを終了する企業もあるのです。
クリエイターの活動や作品に対して、敬意のない迷惑行為が多発したという理由で、ライブコマースを禁止しているハンドメイドのイベントもあります。
ライブコマースを始める上での注意点
ライブコマースは便利ですが、ただ商品を紹介するような配信をしても、ライブ視聴はおろか、商品購入までつなげることは難しいです。ライブコマースを始める上での注意点を紹介します。
配信トラブル
ライブコマースは生配信が基本となるため、配信トラブルには十分注意しましょう。
通信回線が不安定で途中で配信が途絶えたり、カメラやマイクなどの機材トラブルで、配信が中断したりすることがないよう、事前の配信テストは必須です。また、配信者がライブコマースに不慣れな場合には、台本を用意してリハーサルをしておくなどの対策を講じることで、スムーズな配信につながります。
事前告知による集客
ライブコマースは配信中に視聴してもらうことが大前提となるため、事前告知による集客が最も重要です。
プレスリリースの配信やメルマガ会員へのメール通知、SNSのフォロワーに対する告知などを活用しましょう。配信時間や内容を告知する際に、限定セールの予告をおこなうなど、ライブコマースを視聴するメリットをはっきり伝えることで、視聴者の増加を狙いやすくなりますよ。
配信者の選定
配信者の言動によっては、ブランドや企業に対するイメージダウンにつながり信用をなくすケースも考えられるため、配信者の選定にこだわることも重要です。
起用するタレントやインフルエンサーに、商品の仕様や魅力を事前に理解してもらう、配信中にトラブルが起きたときに臨機応変に対応してもらうといったことを、事前のリハーサルで確認しておきましょう。
配信のクオリティと時間設定
ライブコマースでは、商品の購入だけでなく、配信自体を楽しみたいと考えている視聴者も多いです。そのため、視聴者が楽しめるようなコンテンツを用意したり、商品に応じた的確な配信時間を設定したりしましょう。
また、商品の宣伝だけではなく、月1回のイベント開催や配信者同時のコラボ企画などエンタメ要素を取り入れるなどの工夫をすることで、リピーターの獲得につながります。
ライブコマースを含めたECの課題は、ECのミカタに相談しよう◎
ライブコマースには、視聴者との双方向のコミュニケーションによる売上の増加が期待できます。一方で、運営するにあたって時間やコストがかかったり、商品の購入率が配信者の力量や配信内容に左右されたりするといったデメリットがあることも忘れてはいけません。
売上アップにつなげるためには、自社の扱う商品がライブコマースに向いているかどうかを、しっかり見極める必要があります。
自社がライブコマースに適しているのかという疑問の解消や、実際のライブコマースの運用方法などについて、自社だけで模索するのは難しいと感じる方は、ECサイト運営のコンサルティングを検討しましょう。
ECのミカタでは、ECサイトに特化したメディアを運営する専門コンシェルジュが、丁寧にヒアリングし、最適な運営代行会社を紹介するサービスを提供しています。
コンシェルジュへの相談や、運営代行会社の紹介は無料です。ライブコマースの導入を考えている方は、ぜひ一度ご相談くださいね。