「ブランドの世界観を一貫して伝える」施策ができているD2Cブランドは約3割、認識と実行のギャップに課題
BXプラットフォームBOTCHANを提供する株式会社wevnalは、全国のD2C商品を販売する事業者のマーケティング担当者(有効回答数:105)を対象に「自社ECサイトにおけるブランド体験に関する意識調査」を実施した。
今回は前編として、D2C事業者の担当者が日々現場でどのような課題を抱え、対策を講じているのか、調査結果を紹介する。
商品購入までの導線設計を工夫している担当者は8割以上
UI、UXなど消費者が商品を購入するまでの導線設計を工夫しているか聞いたところ、「工夫している(48.6%)」「やや工夫している(36.2%)」と回答したのは合計84.8%だった。
また、EFO施策など消費者が製品やサービスを購入する一連の流れを最適化する工夫をしているか尋ねたところ、「工夫している(49.5%)」「やや工夫している(37.1%)」と回答したのは86.6%であった。
このことから、ECサイト上で消費者に対して心地よい体験を提供する工夫をすることが一般的になっていると考えられる。
約半数が消費者からの問い合わせに1時間以内に回答
製品やサービスの購入を検討している消費者から問い合わせがあった場合、どれくらいの時間で返答できているか聞いたところ、「その場での回答をしている(16.2%)」「30分以内(9.5%)」「1時間以内(20.0%)」の合計45.7%が、1時間以内に回答していることがわかった。
一方、4社中1社は回答までに6時間以上かかっていることも明らかになった。
同社が以前実施したD2C商品購入頻度が高い消費者に聞いた「D2C商品の購入におけるブランド体験に関する意識調査」において、商品や購入に関する問い合わせをした際、回答に求める時間を聞いたところ、最も多かった回答は「30分以内(20.0%)」で、「その場で回答がほしい(18.0%)」と即時の対応を求める声も多かった。1時間以内と回答した人は19.8%で合計すると57.8%の人が問い合わせてからすぐに回答を求めていることがわかっている。
事業者側の問い合わせ対応に時間がかかってしまう背景として、自動化できておらず人力で対応しているなどの原因が考えられる。
8割以上がD2Cブランドとしての社会的責任を重要と認識
SDGs、ジェンダー、サーキュラーエコノミーなど企業が求められる社会的責任を重要だと認識しているか聞いたところ、「認識している(44.8%)」「やや認識している(41.0%)」と回答したのは合計で85.7%だっ た。
さらに、具体的にどのような施策を実施しているか尋ねたところ、おもに「環境への配慮」と「ジェンダーへの対応」に関する回答が多かった。一方で、実施していない、できていない理由として「予算の都合」「対応の難しさ」が挙げられ、一部で「商品力」だけに頼る姿勢も見られた。
以前同社が実施した「D2C商品の購入におけるブランド体験に関する意識調査」では、Z世代が特に「ブランド・商品の社会的意義」を意識している結果が出ており、商品力を高めるだけでなく、消費者に社会的に責任を果たそうとする姿勢がブランドの惹きつけになっていると考えることができる。
実施している社会的責任に関する施策とできていない理由
D2Cブランドの自社ECサイトを担当するマーケティング担当者に対し、実施している社会的責任に関する施策、あるいは実施できていない理由を自由回答で聞いたところ、以下のような回答が挙げられた(一部抜粋)。
◆環境への配慮
・製造する商品の原材料に生分解可能な材料を積極的に使用している
・素材の端材を再利用して、ごみ削減で環境問題に取り組んでいる
◆ジェンダーへの対応
・性別に関わることなく、昇進、昇級ができる
・地域共生、ユニセックス製品の取り扱い
◆実施できていない / しない理由
・予算や時間がないのであまりできていない
・しっかりとした商品なので、自信を持っている
・SDGsは不要だと考えている
ブランドの世界観を一貫して伝える施策ができているのは3割未満
「製品やサービスなどのブランドの世界観を、消費者に一貫性を持って伝えることは重要だと思うか」と聞いたところ、「そう思う(47.6%)」「ややそう思う(41.0%)」と回答したのは合計で88.6%だった。
上記回答者に対して、「一貫性を持って伝えるための具体的な施策があり、実施しているか」聞いたところ、「施策があり、現在実施している」と回答したのは29.0%にとどまった。また、「施策があり、今後実施する予定である」回答を選択した担当者が47.3%と最も割合が高く、一貫性をもたせるのは重要だと考えているが、実行に移すにはハードルが高いことがうかがえる。
UI、UX、問い合わせへの対応など、ECサイト上の消費者の体験は工夫できているが、それ以外の対応は遅れている結果となった。
同社が過去に実施した「D2C商品の購入におけるブランド体験に関する意識調査」では、一度商品を購入したことがあっても、それ以降で商品やブランドのイメージにギャップを感じると、次からは買わないと思った経験に関しては「よくある(11.8%)」「たまにある(42.0%)」で全体の53.8%を占めている。
LTVやリピート率に課題を感じる場合、ブランドの世界観に一貫性を持たせられていない点が落とし穴になっている可能性が考えられる。
「ブランドの世界観を一貫して伝える」、認識と実行のギャップに課題
今回の調査結果で特に目立っているのは、「ブランドの世界観を一貫して伝える」ことの重要性に対する認識と実行度のギャップだ。9割近くのD2Cマーケティング担当者がその重要性を認識しているものの、具体的に実行に移せているのは約3割にとどまっている。
ユーザーが心地よく商品を購入できるようにするための動線設計や、ユーザーの疑問や困りごとに迅速に回答する仕組みづくりといったファネルごとの改善も重要だが、これからのD2Cブランドには、部分最適ではなく、ブランドの世界観を最上位として、それをあらゆる場面に落とし込んでいくことが求められているのではないだろうか。