ECサイト開発のフレームワークとは?ECシステムやプログラミング言語を解説
ECサイトに限らず、Webサイトやアプリを設計する際、フレームワークに対する理解は必須です。どんなプラットフォームがあり、それぞれにどんな特徴があるかを理解しておくと、開発をスムーズに進められます。また、プラットフォームとあわせて、プログラミング言語やCMSについてもチェックしておきましょう。
フレームワークとは
フレームワークとは、アプリケーションやWebサイトを開発する際、土台となるソフトウェアのことです。アプリケーションフレームワークとも呼ばれており、「骨組み」や「構造」などの意味で用いられています。
フレームワークのメリットは、開発にかかる工数や費用を抑えられる点です。ベースとなる部分は既存のソフトウェアでまかなうため、スムーズに開発を進められます。一方、フレームワークには独自のコードが使われているケースも少なくありません。そのため、プログラミング言語だけではなく、フレームワークのコードも理解しておかなければいけません。
ECサイトを構築できるプラットフォーム
ECサイトを構築する際にもフレームワークを利用できます。具体的には、カートASPやクラウドECなどのSaaS、オープンソースやECパッケージなどのオンプレミスです。それぞれのプラットフォームごとに、デザイン・機能の自由度、開発にかかる費用や工数が異なるため、適切なプラットフォームを選択するとよいでしょう。
以下では、ECサイトを構築する際のプラットフォームについて解説します。
カートASP
カートASPとは、クラウド上で利用できるECシステムです。デザインや機能の面では制約が多いものの、コストを抑えて手軽に導入できる利点があります。
カートASPの手軽さは、導入や運用の難易度にあります。オンプレミスでECサイトを構築する場合、導入に際してサーバーの準備やインストール、システムの調整などが必須です。運用にあたっても日常的な保守業務、セキュリティ対策などを講じる必要があり、社内に専門部署がないと難しいといえます。
一方、クラウド上でシステムが提供されるカートASPは、運用中の保守や環境整備をベンダーに任せられます。専門的な知識がなくても構築から運用までできるよう、チューニングされているため、システムのことはよくわからないが、ECサイトを構築したい事業者におすすめです。
オープンソース
オープンソースとは、ソースコードが無償で公開されているECシステムです。誰でも自由に利用できる仕組みとなっており、導入や運用に際して利用料もかかりません。もっともリーズナブルな方法のようにも思えますが、注意すべきポイントもあります。
オープンソースのソフトウェアは、すべて自己責任で運用するのが基本です。無償で提供されているシステムのため、ベンダーのサポートはなく、ECサイトの構築から運用中のトラブルに至るまで、すべて自社で対応しなければいけません。もちろんオープンソースを用いたECサイトの開発・運用代行サービスを提供する企業もありますが、アウトソーシングする場合、カートASPとは比較にならないほどのコストがかかります。
一方、自由度の高さはオープンソースのメリットです。無料で利用できることに加えて、ソースコードの改変も認められているため、デザインや機能の追加も自由自在です。専門的な知識をもった担当者がいれば、コストを抑えて本格的なECサイトを構築できるでしょう。
ECパッケージ
ECパッケージとは、ベンダーがパッケージ化して販売しているECシステムです。オープンソースと同様、基本的な機能を標準で備えていますが、ECパッケージはEC構築に強いベンダーが独自開発しているため、ベースの機能が充実しています。
また、拡張性の高さもECパッケージの特徴です。前述のとおり、ベースの部分は共通していますが、クライアントの要件によって機能の追加や変更が可能です。大規模サイトにおいて求められるような、複雑な要件にも対応できる仕様となっており、本格的なECサイトの構築方法としておすすめできます。
しかし、専門知識をもったベンダーが導入や運用をサポートする分、コストは高くなります。目安として年商1億円以上の売上が見込めないと難しいでしょう。
クラウドEC
クラウドECとは、カートASPと同じく、クラウド上で利用できるECシステムです。ただし、デザインや機能の幅はカートASPよりも格段に広く、ECパッケージにもひけをとらないレベルといえます。
クラウドECの利点は、SaaSとしてのメリットを残しつつ、ECパッケージ並の機能性を実現している点です。まず、システムはクラウド上で構築されているため、クライアント側で保守やセキュリティ対策を行う必要はありません。さらに、要件に応じたカスタマイズを前提に開発されており、スムーズにECサイトを構築できます。
一方、コストの面ではECパッケージとほぼ変わらず、構築や運用にかかる費用は高額です。近年ではECパッケージとともに、採用率の高い構築方法ではありますが、予算的に余裕がある事業者でないと導入はおすすめできません。
フルスクラッチ
フルスクラッチとは、既存のシステムを利用せず、ゼロから開発されたECシステムです。ECサイトのベースとなる環境はもちろん、ECサイトを運用・編集するためのシステムに至るまで、独自開発されたものを利用します。
ひと昔前までは、要件の多いサイト制作にはフルスクラッチが選ばれていましたが、近年では、機能性に長けたECパッケージやクラウドECの台頭によって、フルスクラッチが選ばれるシーンは多くありません。しかし、ZOZOTOWNやユニクロのように、スピーディーなPDCAを実現する目的でフルスクラッチを選択する企業もあります。
また、インハウス開発を得意とする企業にはフルスクラッチが適しています。社内に専門の開発陣がおり、既存のシステムもインハウスで開発しているようであれば、自社製のフルスクラッチの方がスムーズに進む可能性が高いでしょう。
ECサイト開発に必要となるプログラミング言語
ECサイトをはじめ、Webシステムを開発する際には、プログラミング言語が必須です。一部、カートASPのようにノーコードで開発できるシステムもありますが、基本的にはコーディングをして開発するケースが一般的です。とくに、デザインや機能をみずから編集したい場合には、コーディングの知識がないと難しいでしょう。
しかし、プログラミング言語にはさまざまな種類があり、用途に応じた言語を習得する必要があります。
以下では、ECサイト開発の必要なプログラミング言語について解説します。
クライアントサイド言語
クライアントサイドとは、クライアント側で実行されるプログラムです。ECサイトにおいては、商品を購入するユーザーがクライアントにあたります。サイトのデザインやUIなどの部分は、クライアントのブラウザ上で処理されるため、クライアントサイド言語と呼ばれます。
HTML
HTML(Hyper Text Markup Language)とは、Webページの構造をあらわす言語です。Webページにある見出しやテキスト、リンクなどは、HTMLによってそれぞれの役割を定義されています。そのほかにも表や箇条書き、テキストの装飾(太文字や下線)なども、HTMLを記述して実現できる要素です。
HTMLはただ記述するだけだと、一つのテキストファイルにすぎませんが、HTMLファイルをサーバーにアップロードするとWebサイトとして表示されるようになります。
CSS
CSS(Cascading Style Sheets)とは、Webページのテキストの色やサイズ、レイアウトなどは、CSSによって定義されています。HTMLを記述しても同様のデザインはできますが、Webサイトの中には複数のWebページが同様のデザインになるケースがあります。その場合、HTMLにデザインを記述するにはすべてのページのHTMLファイルに記述する必要がありますが、CSSを利用すれば複数のWebページに一括で同じデザインを適用可能です。
また、CSSでは動きのあるデザインも実装できます。複雑な挙動はJavaScriptで定義しますが、ボタンの表示を切り替えたり、画像を一定時間ごとに変更したりする程度であれば、CSSでも実装可能です。
JavaScript
JavaScriptとは、ブラウザ上で動作するプログラミング言語です。動きのあるデザインを実装できるため、Webサイトのデザイン性を高めたり、新たな機能を加えたりできます。たとえば、ECサイトで商品をカゴに入れると合計金額が算出される仕組みなどです。
また、JavaScriptは汎用性の高い言語としても知られています。リアルタイムでの動作が求められるチャットやスマートフォンアプリなども開発できます。
サーバーサイド言語
サーバーサイドとは、サーバー側で実行されるプログラムです。ECサイトにおいては、ECサイトを管理する企業のサーバーがサーバーサイドにあたります。たとえば、サーバー上に構築されたデータベースを参照して、ECサイト上に情報を反映するような処理は、サーバーサイド言語と呼ばれます。
Java
Javaとは、C言語をベースに開発されたプログラミング言語です。あらゆる環境下において実行できるように開発されており、家電やカーナビをはじめ、さまざまな場で利用されています。
ECサイトの運営において必須というほどではありませんが、ECサイトまわりでWebアプリを開発する場合にはJavaの知識が求められるでしょう。
PHP
PHPとは、動的なWebページを作成する際に用いられるプログラミング言語です。動的なWebページとは、アクセスしたタイミングによって表示される内容が変わるWebページです。たとえば、いつアクセスしても同じ情報が表示されるコーポレートサイトは静的なページ、アクセスしたときに最新の投稿が表示される掲示板サイトは動的なページにあたります。
ECサイトにおいて動的な処理が必要となるのは、ショッピングカートです。カート画面では、あらかじめ決められた内容ではなく、ユーザーの選んだ商品によって動的に表示しなければいけません。
ECサイトにおすすめのCMS
ECサイトを管理する際は、CMS(Contents Management System)を利用すると便利です。CMSとは、Webサイト内のコンテンツを作成・編集できるシステムです。
専門的な知識がなくても運用できるようになっており、担当者が設定などを済ませておけば、誰でも直感的な操作でサイト内のコンテンツを編集できます。
以下では、ECサイトにおすすめのCMSについて紹介します。
EC-CUBE
EC-CUBEは、国内トップシェアのオープンソースCMSです。オープンソースソフトウェアの多くは海外製となっており、日本語の情報が少ない点がデメリットとしてあげられますが、EC-CUBEは日本語の情報が充実しています。
また、デザインテンプレートやプラグインなども豊富にそろっているため、カスタマイズの幅も広がるでしょう。
Welcart
Welcartは、世界的に有名なCMSであるWordPressのEC用プラグインです。WordPressはもともとWebサイトを構築するために開発されたプラットフォームですが、デフォルトではECサイトに必要なカート機能や決済機能を備えていません。そのため、ECサイトを構築する際は、プラグインをインストールして機能を追加しなければいけません。
また、WordPressを利用すると、メディアサイトとECサイトが一体となったメディアコマースを実現できます。メディアサイトのように情報を発信できるため、SEOにも強いECサイトになるでしょう。
Magento
Magentoは、Adobeが提供するオープンソースCMSです。欧米を中心に人気となっており、越境ECサイトを構築できる点が強みです。越境ECサイトにおいては、多言語や多通貨への対応をはじめ、特殊な要件が盛り込まれますが、Magentoであれば問題なく対応できます。
EC-Orange
EC-Orangeは、EC-CUBEをベースに開発されたパッケージCMSです。あらゆるビジネスモデルに対応できる仕様となっており、BtoBやマルチテナント、オムニチャネルにも対応可能です。
また、EC-Orangeは月間数十億円の売上がある大規模サイトの構築にも適しています。
ecbeing
ecbeingは、国内トップシェアのパッケージ型CMSです。中堅企業・大手企業を主なターゲットとしており、JRやタカラトミーをはじめとする有名企業にも導入されています。
マーケティングサポートも提供しているため、ECサイト構築後のコンサルティング設けられます。
MakeShop
MakeShopは、GMOグループが提供するカートASPです。月額1万円から導入できるため、はじめてECサイトを構築する事業者にもおすすめできます。
基本的な機能に加えて、SNSとの連携、各種サポートなども含まれており、万能なサービスといえるでしょう。
osCommerce
osCommerceは、ドイツ発のオープンソースCMSです。公式サイトは英語となっていますが、日本語にも対応しているため、英語がわからなくても利用できます。
越境ECサイトにも対応できるほか、無料のプラグインが充実しており、機能を追加しやすい点も特徴です。
まとめ
ECサイト以外でもWebサイト構築する場合、フレームワークに対する最低限を理解があればスムーズに開発を進められます。各プラットフォームへの知識をはじめ、プログラミング言語やCMSなど、専門的な知識まではなくとも、概要が分かるだけでも差が出ます。もしECサイトの開発を検討している場合、一度フレームワークに関する情報を調べてみることをおすすめします。