BtoB-ECとは?導入のメリットとデメリット、構築手法や導入時の注意点
BtoB-ECとは、企業間における電子商取引のこと。BtoB-ECを活用して、業務の負担を減らし効率的に業務を進めたいと考えるEC事業者も多いだろう。一方で、どのように構築したらよいのかわからないといった場合も少なくないようだ。今回は、BtoB-ECの概要と導入におけるメリット・デメリット、BtoB-ECサイトの構築手法などを紹介する。実際に、システムを導入するときの注意点も紹介するため、自社サイトを構築する際の参考にしてもらいたい。
目次
●BtoB-ECとは?概要やBtoC-ECとの違い
●BtoB-ECを導入するメリットとデメリット
●BtoB-ECサイトの構築手法
●システムを導入する際の注意点
●まとめ
BtoB-ECとは?概要やBtoC-ECとの違い
はじめに、BtoB-ECの概要やBtoC-ECとの違いを確認していこう。
ECにおけるBtoBとは?
BtoB-ECとは、デジタルの仕組みを活用しオンライン上で企業間や法人間の取引を行うことを表す。BtoB-ECは、企業間専用のECシステムを構築して行うのが一般的だ。BtoB-ECには、主に以下の3パターンある。
1.受注型BtoB-EC
受注型BtoB-ECとは、自社の商品やサービスを得意先や新規企業等に向けて販売するためにECを活用すること。これまで電話やFAXを通じて受けていた受注を、Web上で行うものだ。BtoB-ECでは、一番多く活用されているパターンであり、「Web受発注システム」とも呼ばれる。
関連記事:Web受発注システムとは?導入するメリットやシステム選定のポイント
2.発注型BtoB-EC
発注型BtoB-ECは、自社の仕入先への発注や在庫、納期、出荷などの状況確認を効率的に行うためにECを活用するケースだ。電話やFAXなどアナログで対応していた発注業務をECサイト上で完結できるため、業務の効率化を図れる仕組みとして近年ニーズが高まっている。仕入れ先が多い企業には業務効率化のメリットが大きいと言える。
3.自社内展開型BtoB-EC
自社内展開型BtoB-ECとは、複数の店舗を展開する業態が、本部と各店舗の商品や部品、備品などの受発注をスムーズに行うためにECを活用する手法。本部側の集計業務と、店舗側の発注業務を大幅に削減する仕組みとして注目されている活用方法だ。
BtoB-ECの需要は年々上昇しており、EC化におけるBtoBは成長市場としてますます拡大していくと予想される。
関連記事:BtoB-ECにおける市場規模の拡大。背景と今後の動き
BtoC-ECとの違い
BtoB-ECと比べられる取引形態として、BtoC-ECがある。両者の最も大きな違いは、取引の対象者だ。BtoB-ECの対象は企業であるのに対し、BtoC-ECの対象は消費者だ。これ以外にも、対象が企業であるか消費者であるかによって、両者の間に「掛率管理」「決済管理」「販路管理」といったサイトの機能面に違いが出てくる。それぞれの違いは以下の通りだ。
まず「掛率管理」は、BtoC-ECの場合一物一価でしか管理できないのが基本だが、BtoB専用のECサイト構築では、一物多価での管理が可能だ。これは、BtoBの商習慣を前提としたもので、取引量や条件の違いによって、同じ商品でも取引先ごとに異なる価格で販売することになるため、掛率管理に違いが出てくるのだ。
次に「決済管理」では、BtoC-ECの場合クレジットカードやコンビニ払いが一般的だが、BtoB-ECではこれらに加えて、掛け売りや銀行振込なども利用されることが多く、取引先ごとに決済方法の柔軟性があるのが特徴だ。
「販路管理」では、BtoC-ECの場合は掲載している商品は全て消費者が閲覧でき購入できる仕組みとなっているが、BtoB-ECでは、特定の取引先のためだけに生産しているケースも多い。例えば、特別な発注に合わせた商品や大口の取引先のみに販売している商品などがあるため、BtoB-ECの場合さまざまな販路パターンがあると予想される。
BtoB-ECを導入するメリットとデメリット
BtoB-ECの導入を検討するにあたり、メリットとデメリットを把握しておくことは重要だろう。導入によって得られるメリットと、それによって伴うデメリットを紹介する。
メリット
メリットは「業務負担の軽減」「ヒューマンエラー及びコストの削減」「新規顧客の獲得」の3つが挙げられる。
企業間取引にECの仕組みが構築されると、商品の単位やスペック、在庫情報なとが全てデータ形式で管理ができる。そのため、電話やFAXで行われていた確認が不要となり、作業工数を大幅に軽減できる。
また、従来の業務フローにある電話で聞いた内容を伝票に起こす作業や、数字や文字を目視で確認しながら手入力する作業はどうしてもヒューマンエラーにつながりやすい。ECサイト上で受発注の管理が可能となれば、誤った発注や出荷を防ぐことができる。併せて、業務で行っていたコピーや押印作業、書類管理などのコストの削減にもつながるだろう。
さらに、BtoB-ECでは自社の取り扱っている商品をECを通じて広く公開できる。自ら営業に出向かずとも、特定の商品や関連する情報を検索している企業が新規顧客となる可能性もあるのだ。ECサイトに訪問し問い合わせをしてくれた企業を見込み客として、積極的な販促を行えば販路の拡大が見込めるだろう。
デメリット
BtoB-ECを導入するデメリットは「導入コスト」と「既存顧客へのフォロー」の2つだ。
自社にECシステムを立ち上げるには、導入費用が発生する。スムーズに運用するためには、社内の関係部署での調整や社内の業務フローの見直しが必要となり、社内研修などの時間も確保しなければならない。EC化実現までには、多くのコストがかかることが予想されるため、具体的な費用対効果をシュミレーションすることが不可欠だろう。
また、受発注に関わっている外部企業へのフォローが必要となることも忘れてはならない。電話やメールなど従来の発注方法に慣れている既存顧客は、新しいECサイト経由の発注に抵抗を感じる場合も考えられる。既存顧客に切り替えをスムーズに行ってもらうために、マニュアル作成やデモサイトでの操作説明などを行うことが大切だろう。
BtoB-ECサイトの構築手法
BtoBでECサイトを構築するには以下の、3つの方法が考えられる。それぞれの特徴を紹介するため、自社のサイトに適した方法を検討していこう。
ASP(クラウドサービス)
ASPとは、「アプリケーション・サービス・プロバイダー」の略称で、クラウドサービス(SaaS)とも呼ばれる。提供会社のシステムを月額使用料を払いながらレンタルしてサイトを構築するため、自社でシステムを構築する必要がない。導入コストを抑えられ、稼働までの時間が短いことが特徴だ。また、バージョンアップやセキュリティ対策なども提供会社が行うため、運用が安易といったメリットもある。
一方で、各社ごとに応じたカスタマイズが難しいことや、基幹システムなどと外部連携がしづらいというデメリットがある。特殊なフローがある場合には、不向きなケースもあるだろう。
ECパッケージ
ECパッケージは、業務に必要な機能がパッケージ化されおり、必要に応じてカスタマイズが可能な整品のことだ。パッケージを販売する会社によって特徴は異なるが、業務で必要となる在庫や商品管理などの機能は備わっているため、一から構築する必要はない。
なお、ECパッケージは、ECシステムが数年で古くなることに注意が必要だろう。また、カスタマイズが可能といっても、できる範囲に限りがある場合もある。販売会社を選ぶ際は、自社の業務フローに対応したパッケージECの選択や、自社に近いBtoB-ECの事例があるか確認するとよいだろう。
フルスクラッチ
フルスクラッチは、ASPとは反対に、ゼロからECシステムを構築する方法となる。自社に合わせてオーダーメイドの仕様となるため手間やコストがかかるが、全ての要望を実現できることが最大のメリットだ。
一方で、ゼロから開発を始めるため、運用の際に必要に応じて逐一改修が必要となる。また、セキュリティ対策を自社で対応する可能性があるため、システムに知見がある担当者が必要となることも留意しておくとよいだろう。
システムを導入する際のポイント
最後に、ECシステムを導入する際の見極めるポイントを紹介する。利便性やコストばかりにとらわれず、総合的に判断していくために確認していこう。
自社サイトに合ったシステムを検討する
BtoB-ECの場合は、自社の商習慣と業務内容を考えて自社にあったシステムを検討することが重要だ。現在稼働している社内の基幹システムとの整合性を意識して選択するとよいだろう。
また、実際にシステムを活用する現場担当者の意見の確認も忘れてはならない。運用するにあたり、支障がないか使用しやすい内容なのか入念な確認を行うことで、使いやすいシステムの導入につながるだろう。
セキュリティ対策をしっかり施す
自社でシステムを運用する場合は、セキュリティ対策をしっかりと施すことが必要だ。BtoB-ECは、Web上でのやり取りが多くなるため、セキュリティ面で問題が発生すると信用問題に発展するケースも考えられる。セキュリティ専任の担当者を配置することや、社内全体にセキュリティに関する知識レベルを高めるなど、問題が起こらないよう対策を講じることが重要だ。
まとめ
BtoB-ECとは、企業間の取引をデジタルの仕組みで行うことだ。業務の負担を軽減したい、新たな顧客を開拓したいなど、ECサイトの戦略を考える際、欠かせない位置づけとなるだろう。BtoB-ECの構築手法はそれぞれに特徴がある。そのため、システム運用の担当者と意見を交えながら、自社の環境に適した展開を進めていってはいかがだろうか。