マーケティングオートメーション(MA)とは。機能やメリット、導入からの流れを徹底解説
マーケティングオートメーションとは、マーケティング活動を自動化し効率よく見込み顧客を獲得する仕組みだ。営業やマーケティング部門の生産性向上を目的に、導入を検討している事業者もいるだろう。今回は、マーケティングオートメーションの概要や機能、メリットを解説する。最後に、導入から運用までの流れも紹介するため、自社に取り入れる際の参考にしてほしい。
目次
●マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客開拓を仕組み化すること
●マーケティングオートメーションツールの主な機能
●マーケティングオートメーションを導入するメリット
●マーケティングオートメーションの導入から運用までの流れ
●まとめ
マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客開拓を仕組み化すること
まずは、マーケティングオートメーションの概要と必要とされる背景、SFAツールやCRMツールとの違いについて紹介する。
概要
マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客開拓と呼ばれるさまざまなマーケティング活動を自動化し、効率よく進めるプロセスを指す。また、それらを実現するために利用するシステムを略してMAツールと呼ぶ。
マーケティングオートメーションの導入は、見込み顧客一人ひとりの興味関心に合わせた的確なコミュニケーションの実現や、良好な関係構築につながる。これらを実現するためには、一人ひとりの情報管理や趣味嗜好に応じたメルマガ配信などが必要となるが、日々繰り返されるそれらの煩雑な作業を自動化し、マーケティング活動を効率的に進めることもできる。
MAが必要とされる背景
以前は、企業が提供する製品やサービスの発信を行うチャネルは限られていたが、近年、スマホやSNSなどの普及により顧客接点は拡大している。その結果、情報が氾濫し顧客は興味や関心のない情報を積極的にシャットアウトする傾向にある。そのため、企業が製品やサービスの情報を顧客に確実に届けるためには、適切な情報を、的確なターゲットに向けて、最適なチャネルで、適切なタイミングで配信することが重要だ。
また、顧客の購買意思決定は価格よりも顧客体験を重視するように変化している。顧客との細やかなコミュニケーションを図るためには、人の力では限界があり、新たなテクノロジーで人々のニーズに応える必要がある。その、一端をになっているのがマーケティングオートメーションツールと言えるだろう。
MAツールとSFAツールやCRMツールの違い
マーケティングオートメーション(MA)ツールと類似しているツールに「SFAツール」と「CRMツール」がある。「MA」「SFA」「CRM」は、それぞれ、得意とする段階やマーケティング内容が異なる。
「MAツール」は、商談を創ることを目的としている。マーケティング活動を管理し、自動化による見込み顧客の獲得から育成までを効率的に行い、営業担当が見込み顧客を既存顧客にする際に効果的だ。
一方の「SFAツール」は、営業支援を目的としたツールだ。各営業担当の顧客に対する営業活動や進捗状況、売上情報などを記録し、メンバーとの情報共有・顧客へのアプローチ漏れの防止などを実現できる。営業担当へのサポートに有効的に活用できる。
さらに、「CRMツール」は、顧客との関係の維持や向上を行いリピート率を増やすことを目的としている。顧客情報を一元管理し、必要な部署や従業員に共有することで、顧客満足度の向上や効率的なオペレーションの実現などに役立てられる。
マーケティングオートメーションツールの主な機能
マーケティングオートメーションを導入することで、実現できることや解決できる課題は多岐に渡る。ここでは、MAツールの主な機能を紹介する。
リードを獲得する機能(リードジェネレーション)
リード(見込み顧客)を獲得する機能とは、リードジェネレーションとも呼ばれ、将来的に顧客となる可能性を秘めた見込み顧客を大量に獲得することだ。この代表的な機能の一つとして、「フォーム・LP制作」がある。この中では、リスティング広告やバナー広告をはじめとするWeb広告からLP(ライティングページ)に誘導し、資料ダウンロードやメルマガ登録のために、個人情報を入力してもらいリードを獲得する。MAツールを活用すれば、手軽にフォームやLPを作成でき、リード獲得に役立てることができる。
リードを管理する機能(リード管理)
リードを管理する機能とは、リードジェネレーションやメール、セミナーなど、さまざまな接点で獲得したリード情報を一元管理することだ。顧客の氏名やメールアドレスなどの個人情報以外にも、趣味や好みといった情報についても、顧客の属性として管理できる。管理できる見込み顧客は、個人が特定される実名化されたものに限らない。初めて自社サイトを訪問した匿名の見込み顧客には、Cookieを発行し、再訪問時にも継続してトラッキングすることも可能だ。
リードを育成する機能(リードナーチャリング)
リードを育成する機能とは、リードナーチャリングとも呼ばれ、獲得したリードに対して購買意欲を高めていくためのものだ。例えば、商品への関心度を高める「メール配信機能」や、Web上でリードの行動を把握する「Webトラッキング機能」などがある。
ほかにも、見込み客がサイトに訪問したタイミングで、関連する内容のメルマガを自動で配信することで興味関心を高める「シナリオ設計」などもある。
リードの絞り込みを行う機能(リードクオリフィケーション)
リードの絞り込みを行う機能(リードクオリフィケーション)とは、大量のリードの中から成約確度の高いリードを選別することだ。
絞り込みの際に役立つ「スコアリング」機能は、メールの開封や資料ダウンロード、サイトの訪問などのリードの行動に対して、一人一人に点数を付与する仕組みだ。例えば、メール開封5点、資料ダウンロード10点、価格シュミレーション30点など、購入する顧客によく見られる行動に高い点数を設定する。この点数化により、それぞれの顧客の行動で成約確度の高い顧客の抽出が可能となる。
マーケティングオートメーションを導入するメリット
ここまで、マーケティングオートメーションの概要や機能について紹介してきた。これまでの解説をもとに、より具体的な導入メリットを見ていこう。
顧客との関係構築によりブランド価値が向上する
現代は、顧客がチャネルを自由自在に使いこなし、自分にとって必要な情報を選別する時代だ。だからこそ、MAツールによるパーソナライズされた情報発信は、顧客との良好な関係構築につながり、ブランド価値向上の効果が期待できる。
人力では不可能な大規模の見込顧客に対して、1to1コミュニケーションを実践し、個々のニーズをいち早く察知して、「あなたにとっての最適」な情報提供が実現できることで、自社ブランドのファン増加につながるだろう。
マーケティングプロセスの可視化により収益が向上する
収益向上のためには、営業の生産性が最も重要だ。MAツールを利用すると、マーケティングプロセスを可視化できるため、優先度の高い見込み顧客が判別できる。その結果、購入意欲か高い見込み客に的を絞って営業を仕掛けられるため、効率的な収益向上が期待できる。
また、複雑化したデジタル時代において、顧客一人ひとりの意識と行動を、人の力だけで把握することは困難と言える。MAツールをはじめとするマーケティングテクノロジーの導入によって、ルーティンワークを効率化し、得られた時間でより価値の高いマーケティング活動に取り組むことも可能だ。
マーケティング施策の効果が証明できる
個々の見込み顧客の行動履歴を視覚化することで、マーケティング施策の効果が証明できることもメリットだ。
購入意欲のスコアリング、受注率アップとマーケティング施策との関連性などが、分析により証明される。そのため、これまで営業やマーケティング施策の効果を漠然としか実感できなかったという担当者の、モチベーションアップにもつながるだろう。また、施策の効果が見えることで、予算の最適配分も期待できる。
他部門との連携強化が図りやすい
データによる可視化は、根拠に基づいた見込み顧客の情報につながるため、マーケティング部門と営業部門との連携強化が図りやすいというメリットも挙げられる。
両部門が連携するには、マーケティングが使用するMAツールと、営業で使用するCRMやSFAツールを連携するなど、システム上での連携が鍵になる。顧客情報が紐づけられることで、営業担当者は顧客の情報を成約前にさかのぼって閲覧でき、マーケティング担当者も成約後の顧客情報を継続して把握ができる。このような「この顧客に対して、誰が、どのようなアプローチをしているか」という対応履歴の共有は、部門間の連携につながるだろう。
マーケティングオートメーションの導入から運用までの流れ
最後に、マーケティングオートメーションの導入から運用までの流れを紹介する。
1、課題の洗い出し
まずは、現状把握を行い、どのような課題があるのか洗い出しを行うことから始めよう。洗い出しでは、「見込み顧客の獲得が弱いのか」「見込み顧客は多いが的確なアプローチが行えていないのか」など、具体的な問題点を把握することが重要だ。
自社の課題が把握できたら、それに基づいてマーケティングオートメーションの導入目的を明確にしていく。目的に応じて、最適な施策を洗い出すことで、必要になる機能が明確になるだろう。
2、導入ツールの選定
導入目的が明確になったら、自社に必要な機能を有しているマーケティングオートメーションツールの選定に入る。この時、機能の有無だけでなく、その機能で自社のやりたいことを実現できるのかの見極めが重要だ。
さらに、サービス選定時は価格にも注意したい。マーケティングオートメーションツールは、クラウド型の月額課金モデルで提供されることが一般的であるため、長く使えば使うだけコストがかかる。必要な機能に対して、必要なコストをかけていくことを意識し、不必要な機能でコストを圧迫することを避けよう。
3、各種設計とフローの構築
ツール導入完了後は、マーケティングオートメーションをどのように活用していくのか具体的な設計が必要となる。具体的には、ターゲットとなるペルソナ設定やマーケティングシナリオの作成などだ。導入する機能に応じて、設計やフローを構築していこう。
4、他部署との連携
各種設計が完了し運用を開始する際は、他部署との連携も忘れてはならない。特に、営業部門とは密接な連携体制を整え、互いに何をどこまで実施するのか役割分担を明確にしよう。円滑な運用には、互いに情報共有しながら、効果検証を継続的に行うことが重要だ。
シナリオ設計やスコアリングなどにより提供された見込み顧客が、実際の商談や顧客創出につながっているのか、日々確認することで、マーケティングオートメーションツールを最大限に活かすことにもつながるだろう。
まとめ
見込み顧客獲得に向けた仕組みを作る際に役立つ、マーケティングオートメーションツール。見込み顧客との1to1コミュニケーションを実現し、最適なマーケティング施策を展開していくためには、なくてはならないツールの一つと言える。今回紹介した、マーケティングオートメーションの機能や運用の流れをもとに、導入を検討してみてはいかがだろうか。