米ウォルマート全店舗でAmazonと価格一致目指す

7期ぶり、既存店売上高の増加受け攻めの姿勢か

ロイターの報道によると、米小売の最大手ウォルマート・ストアーズは、全米約5,000店舗の責任者に向け、実店舗販売価格をAmazonなどオンライン小売企業の販売価格と一致させるよう促したということ。米国部門の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるグレッグ・フォラン氏が明らかにした。
競合他社の価格と一致させる方針はすでに多くの店舗で実施されており、この習慣がグループ全店舗に浸透していくよう指示を出した。

これに合わせる形で、「ブラックフライデー」と呼ばれる、毎年感謝祭(今年は11月27日)翌日の金曜日から始まる特売日を廃止することも発表した。
ブラックフライデーはクリスマス商戦の開始日で、小売業にとって大きな売上が期待できる日。深夜12時開店の店舗も多く、昨年では割引商品の奪い合いでウォルマート店内で負傷者が出るほど白熱したセールであった。
しかし近年では、スマートフォンなどの普及から消費者が即座に価格の比較を行うことができるようになり、「ブラックフライデー」というギミックを効かせた売り方が徐々に通用しなくなりはじめてきている。「ブラックフライデーだから安いはず」という顧客認識の熱狂度が冷め、ワンクッションおきスマホでチェックを行う人が増えているのだ。その結果、狂乱するほど激安ではないことが分かり、いわゆる「煽り売り」の効果は年々落ちてきているのだ。
そうであるならば、Amazonなど大手EC企業への大手小売業からの挑戦という意味も兼ねてか、価格のマッチングを行い着実な薄利多売を押さえる姿勢へとシフトしようといったところか。深夜行列を作り並び、焦燥感に駆られてショッピングする消費者への配慮という意味も含まれていそうだ。

また同ロイターによると、ウォルマートの第3四半期(8~10月)の決算は、小型店「ネイバーフットマーケット」が好調となるなかで米国での既存店売上高が7四半期ぶりに増加し、全体の売上も市場予測を上回ったとの報道もあった。
決算報告を受けてか13日午前の米国株式市場で、同社の株価は一時4%近く値上がりしたとも。総売上高は前年同期比2.9%増の1,190億ドルとなり、好調な事業全体の流れが今回の施策を強く後押ししたことが予測される。

冷静さ増す消費者の購買行動 実店舗小売店の「煽り売り」最盛期取り戻せるか

近年、テクノロジーの発達とともに消費者による価格比較が簡単にできるようになってきている。以前であれば、数字と言葉のマジックで実際の安さを何割増しにも見せ、「数量限定」「期間限定」などタイムリミット感を演出することにより購買意欲促進を実現できていたが、そのようなやり方は徐々に通用しなくなっていっている。実店舗の強みであったその手の売り方は、今やコスト削減で研磨された原価商材が珍しくなくなったネットに奪われ、ごまかしは効かない。実店舗も売り方をネットに寄せていく必要が生まれ始めてきているのだ。
消費者も、ちょっとやそっとの安売りでは飛びつかなくなってきている昨今、商売の美徳と謳われる「薄利多売」がワールドスタンダードとなっていく日はそう遠くはないだろう。