キリンと三菱重工グループが「自動ピッキングソリューション」の導入を決定 2024年12月に海老名物流センターにて本格稼働
キリンビバレッジ株式会社とキリングループロジスティクス株式会社は、三菱重工業株式会社と三菱重工グループの三菱ロジスネクスト株式会社とともに行った、飲料出荷拠点への「自動ピッキングソリューション(※1)」(以下:本ソリューション)導入に関する共同実証において、物流現場への実効性が検証されたことから、海老名物流センターに本ソリューションを導入することを決定した。
※1:三菱重工グループが開発した、ピッキング作業を自動化・知能化したソリューション
2024年問題の対応を加速させる
本ソリューションは、これまで物流現場の作業者自身が効率化を考えながら行っていたパレット上に積み付ける作業(ピッキング)を自動化・知能化し、コンベヤーなどの固定設備を使わずに、無人フォークリフト、無人搬送車、ピッキングロボット(※2)を連携させて導入することができる可動式で汎用性が高いソリューションである。
飲料が入った重量のある段ボールを人の手を介してピッキングを行う重筋作業や、フォークリフト搬送を自動化し、作業環境の改善やピッキング人員を検品など他の作業への再配置を進めることが可能となる。結果として、物流センター全体の人手不足の解消、待機車両時間を短縮できることから、2024年問題の対応を加速させるという。
また、本ソリューションは自動化・知能化した設備のため、原則的に完全自動化(※3)への切り替えが可能となる。しかし、今回は有事の際に人による作業が可能なハイブリッドなオペレーション設計にすることにより、停電・自然災害などによる事業継続計画を考慮した構成となっている。
※2:飲料ケースなどの製品を自動で整列させてパレット上に積み付ける装置
※3:ロボットで搬送可能なケースを対象
ピッキングソリューションによる生産性42%向上
「自動ピッキングソリューション」共同実証の概要と結果については、以下の通りとなる。
◆期間:2022年11月~2023年6月
◆場所:三菱重工業 Yokohama Hardtech Hub内 実証施設「LogiQ X Lab」(神奈川県横浜市)
◆内容
▷キリンビバレッジの倉庫オペレーション状況下でのピッキングソリューションの検証
▷ピッキングソリューションの生産性確認及び、倉庫導入に向けた生産性向上の検証
▷キリンビバレッジの倉庫の自動化範囲と人的作業範囲の最適化検討、運用プロセス確立
▷キリンビバレッジの倉庫向け設備・システム仕様の検討
◆結果
▷海老名物流センターを前提としたピッキングソリューションの設備・システム仕様の構築
▷ピッキングソリューションによる生産性42%向上(実証前比)
自動ピッキングフローについて
三菱重工グループが開発した「自動ピッキングソリューション」は、これまで作業者自身が効率化を考えながら行っていたピッキング作業を、ピッキング実績データを基に、三菱重工が研究開発を進める「ΣSynX(シグマシンクス)」によって自動化・知能化したソリューションである。
可動式で汎用性が高いことから、賃借倉庫などの中小型倉庫での導入、物流環境やマーケットトレンド、雇用状況に柔軟に対応可能となる。
◆従来のピッキングフロー
◆自動ピッキングフロー
※ AGF(Automated Guided Forklift:無人フォークリフト)、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)
飲料業界が抱える様々な課題を解決する
現在、倉庫や工場内の保管場所から商品を取り出して配送先ごとに仕分けるピッキング作業のほとんどは人の手を介して行われている。飲料業界においても、重量のある段ボールを人力でピッキングしていることから、重筋作業として負担が大きいことや、誤作業のリスクが課題とされている。
キリングループでも製造現場の自動化が進む一方、物流現場は有人フォークリフトや作業者による手作業が中心となっており、2024年問題に関連して労働時間管理が厳格になり重筋作業が要求される現場での作業オペレーター確保が課題となっていた。
「自動ピッキングソリューション」は飲料業界が抱える様々な課題を解決すると同時に、現場の作業効率化、持続可能な物流環境の実現などに貢献するはずだ。
なお、本ソリューションは2024年12月に本格稼働を開始する予定としている。今後は、2023年6月に内閣府より発出された「物流革新に向けた政策パッケージ」に対応すべく、夜間帯での無人作業も検討するなど、より一層の取り組み強化が期待される。2024年問題への対応を加速させる両社のこれからに注目したい。