OEM・ODMビジネスを劇的に変える新たな戦略! 株式会社いつもがSNIFFと提携を発表

奥山晶子

ECサイトの運用代行や物流サポートなど、EC事業の総合的な支援サービスを行う株式会社いつも(以下、いつも.)が、2023年11月15日に品川プリンスホテル(東京都港区)でセミナーを開催。セミナーでは、Alibaba Group 1688.com(以下、「1688」)のCEO余涌氏、その1688の日本正規パートナーとなった杭州直行便供应链有限公司(本社:中国杭州市、CEO:吴烨彪、以下「SNIFF」)のCEO吴 烨彪氏、そしていつも.の代表取締役社長坂本守氏が登壇。各社が連携した新サービス公開を機に、スピーチを行った。

株式会社いつもがSNIFFと連携した新サービスを発表

全国のブランドメーカーに向けてEC・D2Cの総合支援、M&A・成長支援を行う総合的なECコンサルティングサービスを提供するいつも.が、日本の中国輸入代行事業でNo.1の実績を持つSNIFFと、2023年11月より事業提携を発表し、注目を集めている。

SNIFFは仕入代行サービスで、高品質な製品の製造・供給やスピード出荷、生産コスト削減サポートなどに強みを持つ。「#中国輸入をもっと簡単に。」とうたうサービス「THE直行便」では、日本のECセラーに対し商品調達から仕入業務までを一気通貫で提供している。そのSNIFFが中国最大のECモールを運営するアリババグループのプラットフォームである1688と、日本市場における戦略的パートナーシップを締結したことで、さらなる発展が期待できるようになった。

こうした中、いつも.はSNIFFとの事業展開を行うため、10月には100%子会社である株式会社いつも.SNIFF(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:坂本守、以下「いつも.SNIFF」)を設立。日本のEC事業者、中小企業、インフルエンサーなどを対象にサービスを提供していくという。

ECサイトにおいて確実に売れ筋となる商品をより早くオリジナル生産し、低コストで流通する「いつも.SNIFF」

日本の小売市場はさまざまな外部環境の変化に直面している。インターネットでの販売比率の高まりからEC対応が求められる一方、ドライバー不足による物流網の課題、人口減少から市場規模の大幅な減少が予測され、加えて近年SHEINやTemuなど低価格戦略を中心としたグローバルな越境EC企業が急速に拡大。今後の日本の小売市場に大きな影響を与えると考えられている。

激しく変化するECビジネス市場へ柔軟に対応するため、いつも.SNIFFが提供を始めるのが、新しいバリューチェーンサービスだ。年間16兆円のGMVを誇る1688のビッグデータ・サプライチェーンを活用し、商品戦略に合わせた小ロット多品種のOEM・ODM製造を提案。さらにトレンド予測やリサーチ、デザイン支援機能を持つ商品企画支援サービスを提供することで、自由自在なものづくりをサポートする。

EC総合支援企業としてのいつもと、商品開発から生産、物流までをフルサポートするSNIFFが提携することで、ECサイトにおいて確実に売れ筋となる商品をより早くオリジナル生産し、低コストで流通するEC総合支援プラットフォームが完成する。

イベントで語られたのは、中国大手ECプラットフォーム最新のサービスを活用したODM・OEM、海外仕入の攻略法

本セミナーで、まず登壇したのは1688の余涌CEO。

今や年間取引金額が10兆円以上となったアリババグループから派生した1688について説明したのち、「中国の製品は安いが質が低いというイメージの方も多いでしょう。しかし中国も今は、中産階級や高齢者、デザインを重視する若者を中心に質の高いものが求められています。品質が高く安価なブランド例に、日本の無印良品やユニクロがあります。このように日本の需要に合った製品をご提供していきたい」と語った。

またそのために顧客へ提供する3つのコアバリューとして「売上20%増」「コストの30%減」「中国企業をローカライズし日本の需要に合った製品の提供」を宣言した。

続いてSNIFFの吴 烨彪CEOが登壇。

まずは「世界の貿易をもっと簡単に」という目標を掲げ、直行便サービスを運営仕入から発送まで一気通貫で請け負う総合代行サービスを展開してきたSNIFFについて説明し、「日中貿易に関わる全てのプロセスを徹底的に簡易化、効率化することに尽力。このたびその実績が認められ、世界で初めてのアリババ1688の公式パートナーの認定を受けました」と語った。

このたびの提携については、「ワンストップサービスをしっかり提供させていただき、全面的なIT化を徹底していきたい。安く仕入れて高く売る時代もあったが、今はより良い商品、より良い工場、より安心な物流、よりコントロールできるプロセスが大事。このプロセスをIT化したい」としたうえで、「もっとお客様の本音を聞きながら、サービスを強化させていただくという戦略で頑張ろうと思っています。日本で企画して、世界生産、世界販売を実現したいですし、パートナーが増えたことに心より感謝しています」と締めくくった。

続いて株式会社いつもの坂本守社長が登壇。

まずは言葉の壁や距離の壁を越えてグローバルにビジネスを展開していくことの難しさを語り、「日本にいながらでも日本語を使いながらでも、中国のアリババと取引ができるモデルを日本の皆様に提供していきたいと考えたのが今回の提携の一番大きなポイント」とプロジェクトのきっかけを明らかにした。

「日本人には日本人の感覚がある。でも今後は日本の中だけではやっていくわけにはいきません。そのために、世界で支持されるアリババ1688のプラットフォームと、世界での物販サポートを展開するSNIFFのプラットフォームを活用し、日本の中小企業を支援させていただくというのが、当社の今回の大きな役割です。日本で売れているeコマースの商品やマーケティングデータを使いながら、1688のデータをどう使っていくのかが重要です。そのサポートをさせていただきたい」

また、「いずれは商品開発のサポートもしていきたい」「直接アリババのスタッフと話したり、世界中で売れている物のデータを提供したり、最新AIの勉強会をして皆さんをサポートしていきたい」と、今後の展開についても意気込みを見せた。

高水準のものづくりを世界に発信し、日本経済の活性化を

格安ECサイトとして世界中で成功しているSHEINやTemuは、特にアメリカで爆発的な人気があるが、日本ではそこまで成功はしていない。日本人は安いだけでなく、品質も求める国だからだ。

日本のものづくりの強みは、高品質であること。このことから1688の余CEOは「日本市場で成功すれば、他の国でも成功できると思っている」とも話した。今回のプロジェクトでは、1688が持つ100万社の工場の中から管理体制等が優良な3万社を絞り込んだといい、日本が求める高品質なものづくりに対応できる体制が整った状態だ。

一方でものづくりは大量生産、大量消費の時代が長く続いている。在庫を抱え、倒産に追い込まれる会社も少なくない。しかし今後は人口減少や物流業界で懸念が高まっている「2024年問題」もあり、必要な物を必要な分だけ作っていかなければならない時代が来るだろう。小ロットから対応可能な今回のプロジェクトは、その手助けとなりうる。

いつも.とSNIFFの提携は、これまで大手企業しかアクセスできなかった中国の工場と、中小企業や個人が繋がるビジネスチャンスともいえる。日本経済を活性化する道が一つ、示されたことになるだろう。


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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