「キャンセル料に不満」約6割 消費者庁が解約料の実態に関する研究会を開催

奥山晶子

2023年12月11日、消費者庁が解約料の実態に関する研究会を実施した。解約料に関する消費者の意見、解約トラブル例の提示やネットショッピング利用の実態等も報告され、EC事業者にとって注目に値する大事な研究会となった。

直近10年における「解約料」に関する消費生活相談は、3万件を超える水準で推移

解約料に関する消費生活相談の件数は高水準で推移している。また、法律(消費者契約法第9条第1項第1号)では違約金の規定について「平均的な損害」の額を超える解約料は無効としているが、どこまでが「平均的な損害」といえるかについては明確に解釈化されていない。

これらの状況を問題視した消費者庁が、「解約料の実態に関する研究会」(以下「研究会」)を立ち上げた。実際のビジネスにおける解約料の実態や消費者の解約料の支払に対する意識を明らかにし、解約料に関する適切なルール作りを検討していく。

第1回の研究会では、まず解約料に関する消費生活相談件数の推移が示された。ここ10年の相談件数は3万件あまりでほぼ横ばい。解約料に関するトラブルの主な商品やサービスとしては光ファイバーの契約、パソコンサポート、中古車販売・買取、健康食品、化粧品、美容医療などが示された。

解約料に関するトラブルの主な内容

研究会ではPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された消費生活相談情報から、解約料に関するトラブルの主な内容が抜粋された。

「車のリース期間中に新車のリースを利用したら、リースの残金と違約金が高額だった」といった高額な解約料の請求に関する相談、「誤操作でホテルを予約してしまい、キャンセルしたが100%のキャンセル料を請求された」「コロナで挙式を延期したら契約金額全額を請求された」「サブスクの解約料等が分かりにくい」といった意見が寄せられている。

なお、過去1年間にキャンセルをしたことがある人の約6割がキャンセル料の支払に対して不満と回答しているとの調査結果が示された。理由としては「キャンセル料が高額だったから/返金がいっさいまたはほとんど無かったから」「説明が分かりにくかった」などがある。

出典元:解約料に関する現状等について(消費者庁)

ネットショッピング利用世帯の割合の推移

研究会では、電子商取引の市場規模が拡大していることも示された。経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2023年8月公表)によると、2022年時点で物販・サービス・デジタル合わせて22兆7449億円(2022年)の市場規模を持ち、10年でほぼ2倍となっている。

電子商取引が拡大している事由として、世帯あたりのスマートフォンの普及率が年々増加していることが挙げられる。また、物販におけるスマートフォン経由のBtoC-EC市場規模も年々増加しており、全体の56.0%を占めている。

これに付随して、二人以上の世帯におけるネットショッピング利用率(インターネットを利用して財やサービスの注文をした世帯の割合)は年々増加。全体としては2021年から横ばいになっているものの、世帯主の年齢が65歳以上の高齢者世帯の利用率は引き続き増加している。

出典元:解約料に関する現状等について(消費者庁)

「平均的な損害」の額について議論が交わされた

消費者契約法第9条第1項第1号は、契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し又は違約金を定める条項(解約料条項)につき、当該消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超える部分を、無効としている。

会では、この条項についてどのような場合に「平均的な損害」の額を超えると考えるべきか、解釈が明らかではないとの指摘がなされた。裁判例においても、「平均的な損害」を構成する損害類型について複数の捉え方が存在している。

EC事業者にとってネット通販の利用者層が厚くなったことは喜ばしいことだ。その反面、懸念点も増えてくる。高齢者のスマホ利用が増えた現代においては、キャンセル料についての説明を丁寧に行わなければトラブルに繋がる恐れがあるだろう。

出典元:第1回解約料の実態に関する研究会(2023年12月11日)


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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