約3900件の意見に AI事業者ガイドライン案(第1.0版)を経産省・総務省が取りまとめ公表へ

宮地彩花【MIKATA編集部】

総務省と経済産業省は、2024年4月19日、AI(人工知能)の開発・提供・利用にあたって必要な取り組みについての基本的な考え方を示すものとして「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を公開した。これは2024年1月19日から2月19日まで、総務省と経済産業省が行った「AI事業者ガイドライン案」への意見募集を基にしたもの。ECのミカタではその際に「AI事業者ガイドラインとは?」「EC事業者が注意すべきこと」について記事で紹介(※1)しているが、改めて同ガイドラインの概要を振り返る。

※1 関連記事:AIはEC事業者の救世主たりえるか? “人間中心”とはなにか? 国が「AI事業者ガイドライン案」に関する意見募集

AI事業者ガイドライン(第1.0版)取りまとめの経緯

2024年4月19日、経済産業省と総務省は、生成AIの普及を始めとする近年の技術の急激な変化等に対応するため「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を取りまとめた。これは関連する既存のガイドライン(※2)について、有識者等と議論を重ね、統合・アップデートしたもの。

ガイドライン検討の契機になったのは、2024年5月26日に開催されたAI戦略会議(座長:松尾豊 東京大学大学院工学研究科教授)。会議で取りまとめられた「AIに関する暫定的な論点整理」において、既存のガイドラインに関して必要な改訂を検討する必要性が示された(※3)。その際、経済産業省及び総務省の両省でそれぞれ「AI事業者ガイドライン検討会」(座長:渡部俊也 東京大学未来ビジョン研究センター教授)と「AIネットワーク社会推進会議」(議長:須藤修 中央大学国際情報学部教授)を開催。両会議での検討を踏まえて「AI事業者ガイドライン案」を取りまとめ、同年1月20日から2月19日まで意見募集を行った。

その後、3月14日に合同で開催した「AI事業者ガイドライン検討会」と「AIネットワーク社会推進会議」における議論と、今回募集した意見をAI戦略会議にて報告し今回の取りまとめに至った。今後は必要な更新を継続して行っていく予定としている。

※2、3:AI開発ガイドライン(平成29年、総務省)、AI利活用ガイドライン(令和元年、総務省)、AI原則実践のためのガバナンスガイドラインVer1.1(令和4年、経済産業省)

意見提出は約3900件

2024年1月20日から2月19日まで、31日間で行われたAI事業者ガイドライン案の意見募集。総務省と経産省の資料によれば、意見提出者は法人・団体が441件(47法人・団体)、個人3506件と計3947件にも及んだ。

法人・団体で集中した意見は「高度なAIの定義」について。2024年1月に発表されたAI事業者ガイドライン案本編 第1部 AIとは(※4)、別添(付属資料)の第1部関連「A.AIに関する前提」「B.AIによる便益/リスク」(※5)の部分が対象だ。この箇所からは、三菱電機や日本マイクロソフト、Googleなど10社から意見が提示された。

■10社から出された主な意見(一例)

※出典元:総務省・経済産業省「『AI事業者ガイドライン案』に対するご意見及びその考え方」

上記質問に対し、総務省・経産省は「ご意見として承ります。広島AIプロセスでの定義を引用しており、生成AIシステムや今後出てくるであろう高度なAIも対象に含められるような定義としております。今後の更新・改訂の検討にあたり、参考とさせていただきます」と記載。

広島AIプロセスとは、世界中の人々が安全・安心・信頼してAIを利用できるようになるために立ち上がったサミット(※6)。2023年5月に開催されたG7広島サミットの結果を受けて、今後は生成AIについて国際的なルール作りを行っていくという。EC事業者にとっては、文章作成や画像作成などでAIを使う機会は増えていくだろう。AIによる規制で、被害を被らないためにも一度本資料は目を通しておきたい。

※4 出典元:AI事業者ガイドライン案(総務省、経済産業省)
※5 出典元:AI事業者ガイドライン案 別添(付属資料) 2024年1月 (総務省、経済産業省)
※6 参考元:広島AIプロセス(総務省)