化粧品物流とは。特徴や必要な倉庫での保管許可について解説
化粧品を扱うECサイト運営をしていくうえで「リソースが物流作業に割かれ、コア業務に集中できない」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
化粧品は、人体へ影響をおよぼす可能性があることから、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に則った製品管理が求められます。また、製品が出荷されるまでの作業工程が多いことも特徴です。
今回は、化粧品物流の基本的な流れ、特徴や必要な許可を解説します。アウトソースする際のポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
化粧品物流の基本的な流れ
化粧品物流とは、薬機法で定められている「化粧品製造業許可」を持つ倉庫でおこなう物流業務のことを指します。
化粧品製造業許可は、製品の加工・充填などをおこなう「一般区分」と、法定ラベル表示や製品の包装・保管をおこなう「包装・表示・保管区分」の2種類があります。
ここでは後者の「包装・表示・保管区分」の業務を化粧品物流と定義します。
製品を加工し、保管、発送するという流れは一般物流と同じですが、化粧品を市場流通させる前の製造段階や保管・梱包時には化粧品物流特有の作業工程が発生します。
1. 製品入荷
国内または海外から製品を入荷します。
外箱にダメージが無いか、納品伝票と数量の差異は無いかを確認します。
2. 検品・包装・表示
入荷した製品の検品を行い、化粧箱や内容物に問題がないか確認します。
必要に応じ法定ラベルの貼付や添付文書の封入をおこない、日本の市場流通ルールに従った包装にします。
3. 出荷判定
製造業者が2の工程の結果を確認し、製造所の責任技術者(製造所を実地で管理する者)が出荷判定をおこないます。
4. 市場出荷判定
3の工程で適合となった製品に対し、製造販売業者(国内における製品の最終責任者・メーカーや輸入業者等が該当)が市場出荷判定をおこないます。
5. 保管
4の工程で適合となった出荷前の製品を保管します。
必要に応じ温湿度管理をおこないます。
6. ピッキング・梱包・発送
荷主のオーダーに基づき、製品のピッキング・梱包・発送をします。
出典:
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索
化粧品を初めて製造・製造販売する方へ|宮城県公式ウェブサイト
化粧品物流の特徴
化粧品はオンライン・対面・toB / toCなどさまざまな販売形態があることから、工程が複雑になりがちです。
また薬機法に則った製品管理をおこなう必要があり、物流においても高い品質が求められます。
梱包工程が複雑になりがち
サンプル品・カタログの同梱や何種類もあるギフトラッピングの対応により、化粧品の梱包は複雑になりがちです。
出荷先によって包装形態が変わることもあり、梱包ミスを無くすのは至難の業です。
繁忙期・閑散期の波がある
化粧品はクリスマスコフレや春の新作コスメのシーズンが繁忙期です。
繁忙期はアソート商品やギフト対応も多く、作業工程もより複雑になります。
追加の人手の確保や教育はもちろん、在庫スペースの確保が課題となるケースも多くみられます。
トレーサビリティの確保が必要
トレーサビリティは日本語で「追跡可能性」と訳します。
製品の原材料から流通、加工、消費者に届くまで全ての工程で記録を残し、追跡ができる状態にすることです。
化粧品は薬機法上でトレーサビリティの確保が求められています。
いつ・だれが・どこで・何をしたかの記録を全行程で残すことで、万が一不具合が起きた場合の製品回収や原因究明をスムーズにおこなうためです。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の概要|厚生労働省
化粧品物流にかかわる許可や資格について
先述の通り、化粧品は薬機法に則った管理が求められるため、取り扱いには許可や資格が必要です。
また、使用している原料によっては危険物に該当する場合もあるため、注意しなければなりません。
化粧品製造業許可
化粧品を市場流通させるには、製造所での「出荷判定」が必要です。出荷判定ができるのは、化粧品製造業許可を持っている倉庫だけです。
化粧品製造業許可を取得するためには、厚生労働省令で定める基準に適合している構造設備をもち、要件を満たした責任技術者を設置していることが求められます。
化粧品製造業の包装・表示・保管区分で必要とされる構造設備は下記の通りです。
- 製品等及び資材を衛生的かつ安全に保管するために必要な構造及び設備を有すること
- 作業を適切におこなうのに支障のない面積を有すること
- 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること
また、責任技術者は以下の要件を満たす必要があります。
- 薬剤師
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造に関する業務に3年以上従事した者
- 厚生労働大臣が前3号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
危険物倉庫
危険物とは、消防法で定められているもので、次のような性質を持った物品をいいます。
- 火災発生の危険性が大きいもの
- 火災拡大の危険性が大きいもの
- 消火の困難性が高いもの
物質ごとに消防法の適用を受ける基準となる「指定数量」が定められており、許可を得ずに指定数量以上の危険物を貯蔵・取り扱うことは消防法で禁止されています。
取り扱う場合は法律に従った設備や管理者を整備したうえで、指定機関の許可を得る必要があります。
化粧品にはアルコール、オイル、アセトンなどの危険物に該当する原料が使われることがあります。
危険物に該当する場合は、保管する成分容量が合計でどの程度になるか確認し、必要に応じ環境整備や分散管理をおこなうとよいでしょう。
また、高圧ガスを取り扱う場合も危険物倉庫に該当します。
一般的にスプレー缶と呼ばれるエアゾール製品は高圧ガスを使用しているため、貯蔵する種類や量に応じて届出または許可が必要になります。
ISO22716(化粧品GMP)
ISO22716は、化粧品の製造に関する品質・安全性に関する国際規格です。化粧品を製造する際の一連のプロセスに関する管理基準として認知されています。
2007年に日本化粧品工業会(粧工連)自主基準として策定されました。
別名「化粧品GMP」と呼ばれ、化粧品業界のスタンダードな基準として定着しています。
よってISO22716を取得している製造業者は、一定の品質が担保されていると考えて問題ないでしょう。
出典:
化粧品の製造、輸入または製造販売等について|神奈川県ホームページ
化粧品の製造業 構造設備規則(包装・表示・保管区分)|大阪府ホームページ
はじめて化粧品の製造販売及び製造をする人のために |兵庫県ホームページ
「危険物」とは? | 法令 | 総務省消防庁
指定数量の倍数について|富津市
ISO22716(化粧品GMP)|JMAQA 一般社団法人日本能率協会 審査登録センター
化粧品物流のアウトソーシング先の選び方
先述の通り、化粧品物流には高いレベルの品質管理が求められます。一連の業務をまとめてアウトソーシングするのもひとつの手段です。
ここからは、アウトソーシング先の選び方について解説します。
化粧品製造業業務の受託実績がある
たとえ化粧品製造業の許可を持っていても、化粧品物流は実務経験がなければ円滑に進めるのは難しい業務です。
医薬品や医療機器、医薬部外品などの薬機法に準拠する製品の取り扱い実績があれば、対応は問題ないでしょう。
一般物流の経験しかない3PL業者は避けたほうが無難です。
庫内環境が整っている
化粧品を保管するにあたり、温湿度管理や防虫・防鼠などの衛生管理が必要です。品質を保つためにどのような対策をしているか確認しましょう。
<庫内環境整備の例>
防虫 | ペストコントロールをしている |
温度管理 | 毎日同じ時間に温度測定し記録している |
防塵 | スタッフのマスク・ヘアキャップ・ガウンの着用、空気清浄度の測定をしている |
市場出荷判定まで委託できる
製造販売業者と製造業者の間であらかじめ取り決めをすれば、市場出荷判定まで製造業者に委託することも可能です。
もし委託をしなければ、製品入荷のたびに製造販売業者の市場出荷判定をおこなうためのタイムラグができ、出荷が遅れます。
拡張性があるか
将来的な事業拡大を計画している場合、「売上が増えたのに物流の対応ができない」とならないよう、将来的にスペースの拡張が可能な物流業者を選びましょう。
現在の事業規模では問題が無くても、売上が伸びた際に対応ができなければ、再度委託先を探すことになります。
倉庫のスペースには限りがあります。
スペースを抑えておくと費用が発生するため、売上が増える前から抑えるのは難しい部分もありますが、入居時点で拡張の余地があることが大切です。
入居後も物流の担当者とコミュニケーションをとっていれば、空きスペースが埋まりそうになった際には声をかけてくれるでしょう。
立地
倉庫の立地も重要です。
交通アクセスが悪いと配達に遅延が生じたり、輸送費が余計にかかったり、倉庫の作業スタッフが集まらなかったりします。
反対に立地が良いと何かと便利ですが、坪単価が高いため固定費が重くのしかかります。
下記条件をふまえ、全体的なバランスを考えて選ぶことをおすすめします。
- 製品の入荷方法(陸送・海上輸送・航空輸送)
- 発送時の集荷の締切時間
- 発送先との位置関係、配達にかかるリードタイム
- 事業の売上規模、将来的な成長率
- 災害リスク、ハザードマップ
出典:奈良県GQP-GVPガイドライン2012020|奈良県公式ホームページ
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化粧品は人体へ影響をおよぼす可能性があるため、薬機法に則った製品管理が求められます。
物流業務をおこなうには化粧品製造業許可の取得と、製品のトレーサビリティを確保した運用が必須です。
そのほかにも庫内環境の整備、複雑な梱包や繁忙期の波への対応など、ハイレベルなマネジメントが求められます。
品質を保つには多大な労力とコストがかかり、自社で物流業務を運用するとコア業務に集中できなくなるおそれがあります。
よって、化粧品物流はプロにアウトソースするのがおすすめです。
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