各種商品小売業の100%が円安により悪影響に 東京商工リサーチ調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:東京商工リサーチ)は、2024年6月「円安に関するアンケート」調査を実施。5月末の「1ドル=156円前後」の円安水準が経営に「マイナス」と回答した企業は54.4%と、前回調査(2022年12月実施「1ドル=138円前後」)の47.4%から7.0ポイント悪化したことを公表した。
調査概要
◆調査期間:2024年6月3日~10日
◆調査方法:インターネットによるアンケート調査
◆有効回答:5174社
◆出典元:2024年6月「円安に関するアンケート」調査(株式会社東京商工リサーチ)
※:資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
企業の半数以上にマイナス影響
「1ドル=156円前後」の円安が経営に及ぼす影響について、回答の最多は「マイナス」の54.4%(5174社中、2818社)にのぼる。
前回調査(2022年12月実施、1ドル=138円前後)の47.4%と比べ、7.0ポイント悪化。「プラス」は3.8%(197社)にとどまり、現在の円安水準は企業の半数以上にマイナス影響を与えている状況が明らかとなった。
規模別では、「マイナス」は大企業が49.5%(523社中、259社)に対し、中小企業は55.0%(4651社中、2559社)と5.5ポイント上回った。「マイナス」影響の企業の割合の増加幅でも、中小企業が大企業よりさらに深刻となった。
「各種商品小売業」の全社がマイナス影響と回答
業種別(業種中分類、回答母数10以上)での状況について、「マイナス」影響の割合が最も高い業種は、百貨店や総合スーパーを含む「各種商品小売業」の100.0%(15社中、15社)となった。続いて、以下業種が続く結果となった。
◆「繊維・衣服等卸売業」92.5%(54社中、50社)
◆「食料品製造業」76.8%(138社中、106社)
◆「その他の卸売業」75.0%(208社中、156社)
◆「その他の製造業」72.0%(50社中、36社)
◆「化学工業」71.2%(66社中、47社)
原材料や商品などに占める輸入の割合が高い企業を中心に、経営へのマイナス影響が深刻化している状況が見受けられるだろう。
一方、「プラス」影響では、ドル建て収入の比率が高い「水運業」が30.0%(10社中、3社)と唯一の3割台。また、円安効果によりインバウンド需要増加が見込める「宿泊業」も29.4%(17社中、5社)と、他業種に比較して高い水準になった。
EC事業者は柔軟な価格調整が求められる
望ましい為替レートについて、2208社から回答を得たところ、5円刻みのレンジでは、最多が「120円以上125円未満」の28.3%(626社)となった。2022年4月を最後に、2年以上「1ドル=125円未満」以上の円高には振れておらず、為替レートにおいては厳しい状況が長期化しているといえるだろう。
本調査によって、長引く円安が企業経営に深刻な影響を与えている状況が改めて明らかとなった。
2024年3月19日に開催された日本銀行の金融政策決定会合によって、マイナス金利の解除が決定されたが、4月29日には一時「1ドル=160円台」まで円安が加速した。4月26日から5月29日の間に政府・日銀は9兆円を超える為替介入を実施したが、6月13日も「1ドル=156~157円台」と円安に歯止めがかかっていない。
越境ECでの販売において円安はメリットなる一方、国内仕入れコスト増といったデメリットも発生する。為替変動の影響を避けることはできないため、常に最新の情報を確認しつつ、柔軟な価格調整を行う必要があるだろう。