2024年問題が各企業の経営に与える影響、マイナスと回答した企業は55.3%に TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:東京商工リサーチ)は2024年6月17日、第2回「2024年問題」に関するアンケート調査結果を公表。「2024年問題」が経営に「マイナス」の影響と回答した企業は55.3%と半数を超えたことが明らかとなった。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
◆調査期間:2024年6月3日~10日
◆調査方法:インターネットによるアンケート調査
◆有効回答:5099社
◆出典元:第2回「2024年問題」に関するアンケート調査(株式会社東京商工リサーチ)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義
大企業ほど「マイナス」影響が大きい
「『2024年問題』は、貴社の経営に影響していますか?」について、「マイナス」の影響と回答した企業は55.3%(5099社中、2823社)と半数を超えた。
内訳は、「大いにマイナス」が13.9%(713社)、「どちらかというとマイナス」41.3%(2110社)となる。
規模別では、「マイナス」が、大企業62.9%(前回68.0%)、中小企業54.4%(同60.9%)といずれも前回から改善。大企業が中小企業を8.5ポイント(同7.1ポイント)上回り、大企業ほど「マイナス」影響が大きいことが判明した。
コスト増加による業績悪化が懸念
「2024年問題」によるマイナスの影響では「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が71.4%(2724社中、1946社)と、前回に引き続きトップに。
原材料や燃料費アップ、人手不足などの対応に苦慮するなか、「2024年問題」で運賃や作業費などのコストが上昇傾向にあり、さらなる業績悪化を懸念する企業が多い。
運輸業では「稼働率の低下による利益率の悪化」が50.7%で最も高く、全産業、建設業と同様に利益率が懸念されている。次いで、「労務管理の煩雑化」が50.0%とほぼ同水準で続き、この2項目の回答率が50%を超えた。
時間外労働の上限規制が適用されたことで、勤怠状況の厳格な労務管理が求められている。ドライバーの待遇改善には必要不可欠だが、煩雑化した労務管理業務が現場の負担になっていることが見受けられるだろう。
物流維持のため、産業全体で取り組みを
2024年1〜5月の「人手不足」関連倒産(後継者難を除く)は118件発生したが、このうち建設業は30件(前年同期比150.0%増)、運輸業は25件(同66.6%増)と、いずれも前年同期を大きく上回った。
慢性的な人手不足に加え、円安や原油高などを背景にした資材や燃料費などの各種コストアップで収益が悪化した企業は多い。
さらに2業界とも産業構造で下請け色が濃く、価格や納期などの条件交渉がうまく進まない企業も少なくない。このため、「2024年問題」の影響により今後も市場から退出するケースがさらに増える事態も懸念されるだろう。
運輸企業の市場退出を抑制し、物流のクライシスを防ぐためには、産業全体で取り組みを進めなければならない。EC事業者には顧客に対し現状をアナウンスするなど、持続可能な物流環境構築のため様々な取り組みが求められるだろう。今後も引き続き「2024年問題」が与える影響を追っていきたい。