ECサイトだけでBNPL利用消費者も 新札発行の影響は?【インフキュリオンセミナーレポート】
クレジットカードやQRコード、アプリを使ったキャッシュレス決済は、どの程度普及しているのだろうか。金融・決済領域を中心としたプラットフォーム提供、コンサルティングなどを行う株式会社インフォキュリオン(本社:東京都千代田区)は決済動向の調査を行い、2024年上期の調査結果を公表。解説セミナーを行った。決済の動向がEC事業者にどんな影響を与えるかについてセミナー内容をまとめたので、参考にしてほしい。
2023年のキャッシュレス化は39.3% 消費者の行動変容は?
インフォキュリオンは2015年から定期的に「決済動向調査」を行ってきた。2024年においても、国内の決済動向の変化および消費者の行動変容を調査するため、全国の16~69歳男女2万人を対象に「決済動向2024年上期調査」を実施した。
セミナーでは、まず前年までの動向を振り返った。経済産業省によるとキャッシュレス決済の比率は2023年に39.3%にまで及んでおり、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にするという政府目標をほぼ達成できる見込みとなっている。
※画像引用元:2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました(経済産業省)
なお、キャッシュレス決済の合計額は大幅にアップしている。2023年の決済額は126.7兆円で、2019年の81.9兆円と比べると1.5倍という伸び率になった。
キャッシュレス決済の内訳を見てみると、クレジットカードが83.5%を占めているが、2019年の89.7%と比べれば決済内での比率は減少。代わりに伸びてきているのがコード決済だ。2019年の1.2%から、2023年には8.6%と存在感を増している。
※画像引用元:【インフキュリオン】決済動向2024年上期解説セミナー資料「現金とキャッシュレス決済から見る消費者行動の変化」【10枚目】(出典:2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました(経済産業省))
キャッシュレス決済、利用アプリは?
具体的にはどのようなアプリがキャッシュレス決済に利用されているのだろうか。インフォキュリオンでは、個別サービスの利用率の推移も調査がなされている。最も利用率が高いのがPayPayだ。次点が楽天カード、3位に交通ICカードが続く。
決済種別の利用率の推移は、以下のようになった。クレジットカードの利用率が最も高く横ばいで、コード決済アプリの利用率の上昇が目立つ。なお、ブランドデビットは若年層の利用が目立つようになってきたという。
現金派もキャッシュレス利用あり、BNPLが影響?
EC事業者として注目したいのが、BNPL(※)の存在感だ。今回の調査では、全体の65%が「キャッシュレス派」「どちらかといえばキャッシュレス派」であると回答したが、現金派であってもキャッシュレス決済を選ぶときはある。
げんに、現金派の89%は何らかのキャッシュレス決済サービスを利用しており、なかでも「都度払いBNPL」では現金派の方が、利用率が高いという結果になった。
BNPL:Buy Now Pay Later(今買って、後で支払い)の略でいわゆる「後払い決済」
BNPLとは後払い型(Buy Now Pay Later)決済サービスで、指定された日までにコンビニ払いをしたり、指定の銀行口座に振り込んだりするものだ。決済方法の選択肢としてBNPLを取り入れているEC事業者もあるだろう。
月の利用分がまとめて請求される「月払いBNPL」は、個別の購買ごとに請求される「都度払いBNPL」よりも全体的な利用率は高い。しかし、現金派に限って見てみると、都度払いBNPLのほうが、利用率が高めとなる。
都度払いBNPLの利用は、購入する商品によって判断される。また、「あまり利用しないように気をつけている」と答えた人の多さが目立った。
それでは、BNPLはどんな場面で使われているのだろうか。セミナーでは、「BNPLで買った回数が最も多いもの」についてもアンケート結果が示された。
月払いも都度払いも、比較的単価の高い衣類との親和性が高いことが示された。また、都度払い利用者の回答でとくに多い健康食品やサプリメントは、継続的に購入しており高価なものについて都度払いが選ばれているのではと推察された。
つまり衣類やサプリ、日用品などを扱うECショップにおいて都度払いBNPLを選択肢の1つに入れておければ、カード払いに抵抗のある人も購入のハードルが下がる可能性があるのではないだろうか。
新札発行の影響は?
2024年7月には新札が発行され、一万円札、五千円札、千円札が新しくなる。新札発行は、決済手段の選択にどんな影響を与えるだろうか。
セミナーで示されたのは、ATMや券売機、両替機、セルフレジなどの現金取扱機による新紙幣対応の遅れが現金利便性を大きく下落させるのではないかという点だ。
中小事業者の中には費用の不足などが要因となり、現金を扱う機械の更新が遅れることもあるだろう。現金利用者が新紙幣を受け入れない機械に直面したとき、キャッスレス決済への転向を促す方向に作用すると考えられる。
よって新紙幣の発行は、キャッシュレス決済推進においてはマイナスにならず、むしろニュートラルからプラスに働くだろうという見立てであった。
新紙幣発行は、現金派がキャッシュレス決済に対する抵抗感を減らす材料となるかもしれない。ECサイトにおいては、より多様な決済手段を用意し、さまざまな属性を持つ消費者が購入に対して感じる困難を、できる限りなくすことが肝要だ。
まとめ
セミナーでは、キャッシュレス決済の普及が着々と進んでいることが示された。また、キャッシュレス決済の中でも、選ばれる決済手段がますます多様化してきているようだ。
ECサイトで、自らが望む決済手段が非対応だと53%がサイトを離脱してしまうという調査結果がある(※1)。せっかく魅力ある商品やサービスを展開できても、決済手段の不足から販売のチャンスを逃すことがあったらもったいない。今後、EC事業者にはますます消費者の属性に応じた決済手段を検討・導入することが求められるだろう。
※1参考:ECで決済手段に非対応だと53%超がサイト離脱[SBペイメントサービス調査]