倉庫の改善アイデア。物流の最適化につながった事例も紹介。

ECのミカタ マーケティング部

倉庫の改善アイデア。物流の最適化につながった事例も紹介。

物流倉庫を使用している方の中には、「現在の運用方法が最適か分からない」「手探り状態で運用している」という方も多いのではないでしょうか。

事実、「業務を始めたときから倉庫の運用方法が変わっていない」というケースは少なくありません。

近年はロボットやデジタルシステムの発展が目覚ましく、物流倉庫を取り巻く状況は日々変化しています。

そこで今回は、倉庫改善のメリットや流れ、アイデアや事例について解説します。

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物流倉庫の改善に取り組むメリット

物流倉庫の運用を改善するメリットとして、大きく3つが挙げられます。

生産性の向上・利益の最大化

物流倉庫の改善によって生産性を高めることができれば、運用コストを下げて利益の最大化を図れます。

例えば、10分かかっていた出荷工程を9分に短縮できた場合、生産性は約10%向上したことになります。具体的には、毎日2時間出荷作業をすると仮定した場合、従来は1日12個出荷できるところが13個出荷できるようになるということです。

生産性の把握にはさまざまな方法があります。

  • 投入している人的・物的リソースに対する成果
  • 1人のスタッフが1時間あたりに処理できる作業量
  • KPI(重要業績評価指標)の設定・管理

生産性は数値で可視化しやすいため、現状と改善策の実施後の測定により、どの程度改善ができたかを具体的に把握できます。

従業員の働きやすさの向上

従業員の働きやすさを高めることによる生産性向上も、倉庫の運用改善によって見込まれるメリットの1つです。

例として、作業工程の見直しによる作業負荷の軽減や事故予防策による安全性の向上などが挙げられます。

従業員の満足度が高まることでスタッフの定着率・習熟度が上がり、長期的には生産性の向上も期待できます。

顧客満足度の向上

物流改善によってサービス品質を向上することで、顧客満足度も向上します。

日本における顧客満足度調査で用いられる計算式の1つに、「顧客満足度=顧客が感じた価値-事前期待価値」があります。

物流倉庫に当てはめると、事前期待価値=モノが期日通りに届く・指示どおりの作業が遂行されることとなります。

よって、指示どおりの作業をおこなうだけでは事前期待価値はゼロ、つまり顧客満足度にプラスには、作用しません。

迅速な納品や最適な梱包などのプラスアルファのサービスが、「事前期待を超えた対応」に該当します。

顧客満足度が上がれば、リピート率が上昇し、さらに売上が上がるという好循環につながります。

物流倉庫の改善における考え方

ここでは、具体的にどのような流れで倉庫の改善に取り組めばよいかを解説します。

前提

前提として、倉庫改善には「課題は“人”ではなく“システム”の問題」と捉え、検討する姿勢が重要となります。

作業者個人の力量や努力に責任を転嫁するのではなく、ミスが起きない仕組みを作り、その仕組みを遵守することで目的が達成されるようにマネジメントします。

課題の特定

まずは、解決したい課題を特定します。

在庫不足による納期遅延の解消、人手不足による残業の常態化の解消、作業効率の向上による利益の最大化など、状況によりさまざまです。

複数ある場合は、会社の経営や顧客満足度への影響が大きいものから優先的に対応します。

現状確認

課題を特定したら、現状把握に取り組みます。

以下を確認することで、おおよその現状がつかめるはずです。

  • 投入している人的・物的リソース
  • KPI(重要業績評価指標)の達成度
  • 品質不良率(PPM)、不良の内容
  • 作業工程
  • 倉庫内レイアウト・動線
  • 現場スタッフの声

特に、日頃作業をおこなう現場スタッフからのヒアリングにより、改善のヒントが見つかることも多くあります。

また、現状を確認することで新たな課題が出てくることもあるでしょう。

その場合も、先の項目で述べたとおり、優先順位を決めて対応します。

目標の設定

現状を把握したら、課題解決するための目標設定をおこないます。

現状から実現可能かつ定量的な数値を設定します。

課題に対する目標設定の例

課題 目標
在庫不足の解消 保管効率を5%向上する
残業の常態化の解消 10分かかる工程の作業時間を1分短縮する

施策検討・実行

具体的な施策は、大きく3つに分けられます。

  1. 運用の改善(例:作業工程の変更、作業スタッフの多能工化)
  2. 内部環境の改善(例:レイアウト変更、マテハン機器やシステムの導入)
  3. 外部環境の改善(例:入荷数量の調整、出荷時間の変更)

この段階では、日頃の倉庫運用の詳細を知る担当者を交えることが望ましいです。

現場を巻き込むことで、実現可否の判断や実行がスムーズになります。

評価

施策実行後、定めた目標をクリアしているか確認します。

評価の際は、“倉庫全体で生産性が向上しているか”を評価することが大切です。

「保管効率が向上した代わりに、動線が悪くなり作業効率が落ちた」というように、ほかの要素が犠牲になっているケースがあるためです。

KPIや作業時間などの数値を確認するとともに、現場からフィードバックを得ることで、全体的な影響を把握します。

目標が達成されていなければ、再度施策の検討をします。

あまりに目標と実態のかい離がある場合は、目標値の設定に無理がなかったかの検証をし、目標の見直しをおこないます。

目標を達成した場合は、問題なく運用が続いているか一定期間観測を続け、アフターケアをおこないます。

設定した観測期間を過ぎた段階でも問題がなければ、改善は成功です。

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物流倉庫で改善したほうがよい課題

物流倉庫での課題は、放置すると物流コストの増大や顧客の信頼失墜、従業員の離職につながる可能性があります。

ヒューマンエラー

ピッキングミスや出荷先間違いなどのヒューマンエラーは、完全にゼロにすることは難しいです。

しかし、何度も繰り返すと顧客の信頼を失い、企業の看板に傷をつけることになります。

誤出荷は低評価の口コミやレビューに直結しやすく、特に口コミが重要なECにおいては大きなダメージになりかねません。

ヒューマンエラーを繰り返す場合は、早急に運用方法を見直し、対策する必要があります。

作業工程の複雑化

作業工程が複雑化することで、ミス発生率・作業スタッフのトレーニングコスト・作業時間や必要人数が増加します。

SKU(在庫管理の最小単位)の増加やキット商品のアソート、ギフトラッピング対応が必要となる場合は、できるだけ工程がシンプルになるような工夫が求められます。

在庫の過不足/在庫差異

在庫保管にはコストがかかります。

製品の供給体制と納期のバランスを踏まえ、適切な在庫を保持できるように管理が必要です。

また、データ上の数字と実在庫に差異が発生すると販売機会の損失だけでなく、粉飾決算を疑われる要因にもなってしまいます。

人手不足

少子高齢化に伴い、物流倉庫においても深刻な人手不足が続いていることから、以下のような悪循環に陥る現場も少なくありません

  • 人材が採用できない
  • 新しい人材を採用できたとしても、十分なトレーニングの時間が取れず戦力化に至らない
  • ベテランに作業負荷が集中する

物流倉庫の改善アイデア

物流倉庫の課題を放置すると、顧客に対しても従業員に対しても悪影響があることは上述したとおりです。

そのような事態にならないために、ここでは物流倉庫の具体的な改善アイデアをご紹介します。

レイアウトの改善

倉庫のレイアウトは作業効率に大きく影響します。

レイアウトは次の3つの要素を踏まえて考えるとよいでしょう。

入荷から出荷までの動線

一般的な物流倉庫では、製品の入荷、検品、棚入れ、保管、ピッキング、梱包、出荷と工程が進みます。

1つの工程が終わった後は作業場所が戻らないように、一方向に進みます。

扉が対面して2つある場合は入荷から出荷まで一直線に進むI字型、扉が1つの場合は倉庫の奥で折り返すU字型が代表的です。

また、繁閑の波によって在庫が増える可能性がある場合や新製品の取り扱いを予定している場合は、空きスペースも確保したほうがよいでしょう。

製品保管方法の検討

次に重要となるのは、製品の形態に合わせた保管方法です。

保管形態はパレット利用や棚管理、平置きが一般的ですが、以下のような要素によって大きく変わります。

  • 製品を何段まで積むか
  • 通路幅はどの程度を確保するのか
  • 製品の配置は品番順にするか、出荷頻度順にするか

物量や製品の性質、前後の作業工程に合わせて検討しましょう。

事故予防

倉庫では複数のスタッフが同時に作業をおこないます。

レイアウトに無理があると、事故が起きる危険性があります。

以下はチェックポイントの一例です。

  • 通路幅は人がすれ違えるゆとりがあるか
  • 見通しが悪い場所はないか
  • 棚の上段に重量物は置いていないか
  • ネステナーはきちんと固定されているか
  • 動線上に障害物はないか

レイアウト案ができたら、事故リスクが潜んでいないかを複数人で確認することをおすすめします。

作業工程の見直し・標準化

より効率的にできる余地がないか作業工程を見直し、標準化することも物流倉庫改善の1つです。

例えば、ピッキング方法には大きくシングルピッキングとトータルピッキングの2種類があります。

シングルピッキングは出荷オーダーごとにピッキングをおこなう方法です。

対してトータルピッキングは複数のオーダーの製品を一括でピッキングし、その後で発送先ごとに仕分ける方法です。

すでに固まっている作業工程を変更することは簡単ではありませんが、従来の方法が業務に最適とは限りません。

「もっと良い方法があるのではないか」という視点で見直すと、新たな方法が見つかる可能性が高まります。

倉庫管理システム(WMS)の導入

倉庫管理システム(WMS)は、名前のとおり倉庫内を管理するためのシステムです。

在庫管理や入出荷管理、ピッキングリストや納品書の作成など、倉庫内の作業をサポートします。

また、WMSの中にはエラーチェック機能を搭載しているものもあるため、誤ピックや出荷ミスの防止に大きく貢献します。

ダブルチェックのために従来2人でおこなっていた作業を1人で完結できるため、作業効率が大きく上昇します。

マテハン機器の導入

マテハンとは、「マテリアルハンドリング」の略称です。

物流業務を効率化するために使用する機械を「マテハン機器」と呼びます。

マテハン機器には以下のようなものがあります。

  • 入出荷:ピッキングロボット、ハンディターミナル、RFID機器
  • 移動:フォークリフト、コンベヤ、無人搬送機
  • 保管:自動倉庫、移動ラック

マテハン機器を導入することで、製品情報の自動入力によるミスの防止や、ロボット作業による省人化が可能となります。

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物流倉庫の改善事例

倉庫改善に費やした時間に相応したリターンが得られるのか、疑問の方もいるかもしれません。

そこで、物流倉庫の改善を実施し、実際に生産性が上がった事例をご紹介します。

ロケーション・運用改善で生産性が16%向上したアクト中食株式会社

食品卸業を営むアクト中食株式会社の物流倉庫改善事例です。

倉庫での業務は、深夜に注文を締め切り、多品種の商品を早朝に出荷するというものです。以前は、人海戦術で対応していましたが、長時間労働の問題もあり、労働環境改善と高コスト体質の是正が課題でした。

業効率・保管効率を上げるために取り組んだ改善施策が、保管レイアウトの見直しです。

具体的な施策は以下の3つです。

  • ABC分析による製品回転の実態調査、ロケーション変更
    ABC分析とは評価、指標を定め、ウエイトが大きい順に商品の優先度を決めるためにランク付けをする手法です。出荷量を軸にランク付けをし、ランクが高い商品を出荷通路側に配置することで、動線が短くなります。
  • 入庫予定リストの作成・活用
    事前にリストを作成することで、事前段取りや入荷進捗状況の把握を容易にするねらいです。
  • 作業者全員が万歩計を着けて歩数(歩行距離)を測定
    日々の移動距離・時間を定量的に測定・実感することで、価値がない移動時間を意識するきっかけとします。

これらの施策により、以下のような効果が得られました。

  • 早朝ピッキングの生産性が16%向上
  • 入庫スピード上昇・適正保管の実現
  • 倉庫内作業者の意識改革(改善の知恵を出す動機付け)

また、改善に取り組む中で「情報共有と役割責任範囲の曖昧さ」「商品仕入れの営業責任範囲」という本質的な問題も明らかとなります。

新たに浮かび上がった課題に対しては、経営計画に落とし込んで解決することとなり、会社経営が次のステップへ進む足がかりとなった事例です。

出典:社員の幸福/お得意さまの繁栄/仕入れ先さまの発展を実現させる老舗食品卸の現場改善|アクト中食株式会社

自動搬送装置(AGV)導入で2名相当の省人化を達成したダイキン工業株式会社

補修用部品を取り扱うダイキン工業社の物流倉庫では、最長往復約500mにおよぶ入出庫搬送が生産性向上のネックとなっていました。

そこで、パレットをハンドリフトごとけん引する自動搬送装置(AGV)を導入し、人が運ぶ速度に近い速さで自動搬送を設定しました。

導入の結果、生産性が15%向上し、2名相当の省人化を達成しています。

機械に置き換えられる業務を抽出し、現場負担の軽減に成功した事例です。

RFIDと仕分けシステムの導入によりスタッフ教育時間を7割削減した佐川グローバルロジスティクス株式会社

繁閑差が激しい現場運営を倉庫内全体で最適化するため、入出荷検品作業・仕分け作業を改善した事例です。

RFID(無線通信自動認識システム)は、電波を使用することでタグ情報を非接触で読み取るシステムです。

個々の製品に添付されたタグを一括で読み取ることができるため、入出荷時の検品時間の大幅な短縮が可能となりました。

併せて、仕分けシステム「t-Sort」を利用してトータルピッキングの仕分け作業をロボットがおこなうことで、スタッフの移動距離も大幅に削減されました。

各システムを組み合わせて導入することで、新規スタッフ教育時間の約7割削減・早期戦力化が実現し、生産性・作業品質の向上という結果になりました。仕分けミスはほぼゼロになったそうです。

導入時に製品タグの切り替え作業が発生しますが、長期的な目線でハイリターンを得た事例です。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集|国土交通省

全日本物流改善事例大会とは?

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会と一般社団法人日本物流資格士会に所属する会員が物流改善事例を相互に発表し、共有する情報交流の場です。

倉庫会社のみならず、多種多様な業界の大手メーカーから応募された改善事例の中から、以下2つの部門別に優秀事例が発表されます。

  • 1つの現場で完結する物流業務部門
  • 複数の工程を統合した範囲の対象とする物流管理部門における事例

発表者との名刺交換時間も設けられ、企業間での交流も可能です。

発表事例の内、特に優れた事例には「物流改善賞」が贈られ、物流改善フォーラムにも登壇する機会が与えられます。

前回の物流改善フォーラム2023の発表はWeb上でも視聴可能となっているため、興味のある方は参考にしてみてください。

出典:全日本物流改善事例大会2024 | 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会

物流業務の改善にはアウトソーシングが効率的!

事例からも分かるように、倉庫の改善には多くの人的リソースが必要です。

「改善案があっても、日々の業務に手一杯で手が回らない」という方もいるのではないでしょうか。

最適な物流倉庫運用には、経験から得たノウハウと最新知識の両方が必要となります。

倉庫運用に課題を感じている方は、自社内で解決するよりも、アウトソーシングをしてプロと一緒に課題解決していくほうが効率的です。

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記者プロフィール

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