物流の効率化とは。アイデアや事例、物流総合効率化法の概要を解説
事業の拡大を考えるうえでは効率化が欠かせませんが、物流領域ではどうでしょう。
中には「物流に必要となる人やモノには手を付けづらい」というイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。
効率化は難しいと思われがちな物流の効率化ですが、物流危機を迎えている今、国を挙げて取り組む重要課題となっています。
そこで今回は、国全体で物流の効率化に取り組む背景や事業者が受けられる支援、取り組み方法・アイデアについて、豊富な事例を交えて解説します。
物流の効率化とは
物流の効率化とは、物流工程における作業効率を高め、省人化・コスト削減・環境負荷の軽減を図ることです。
物流業界の人手不足や環境負荷が課題となっていることは、ご存じの方も多いでしょう。
物流危機に直面し国は、国土交通省の物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)等の改正や経済産業省の実証事業など、課題解決に向けた取り組みの促進を図っています。
なお、2024年に公布された物流総合効率化法等の改正では物流事業者に対して、積載率向上による輸送力向上が努力義務として加えられました。同様に荷主企業に対しても、物流業社への協力となるような措置を講じることが努力義務とされています。
物流効率化の恩恵は運送事業者だけではなく、荷主企業にとっても流通コスト削減や事業継続性の確保、CSRに取り組むことによるブランドイメージ向上といったメリットが期待できます。
物流効率化の重要性
労働人口の減少に加え、2024年4月からの法施行によるドライバーの時間外労働時間の上限規制により、物流業界ではマンパワーが大きく不足しています(物流の2024年問題)。
さらに、EC市場の急成長による多頻度化・小ロット化も進んだことでニーズが高度化し、業務負担が増加しているのが現状です。
従来の運用のままでは配送レベルが保てず、2030年には輸送能力が34%不足するという試算もあります。
「配送したくても輸送を断られる」「必要な時に必要なものが届かない」といった事態を避けるために、早急な物流の効率化が求められています。
物流効率化の方法・アイデア
物流効率化が国全体の重要課題となっており、課題解決に取り組むことは事業者にとっても事業継続性の確保につながることは先述のとおりです。
では具体的にどのような取り組みをしたらよいのでしょうか。物流の効率化を図るための方法やアイデアの例を紹介します。
物流拠点の集約
分散していた拠点を集約することで、拠点ごとに発生していた賃料・人件費・トラック台数の削減が可能です。
複数拠点をもつことで配送距離やリードタイムの短縮にはなりますが、荷物の取り扱い母数が低下し、トラックの積載率低下に直結します。
物流拠点を一元化し輸送網を集約することで、ドライバー不足の解消の一助となります。
共同配送の導入
共同配送とは、複数の荷主が同じ車両を使用して配送先へ荷物を運ぶ仕組みのことです。
複数社が個別に手配していたトラックを1台にまとめるため、積載率や実車率(走行距離に対し、実際に貨物を乗せて走行した距離の割合)の大幅な向上が見込めます。
車両台数を削減することで二酸化炭素の排出が減り、環境負荷軽減にもつながるため、近年特に注目されている方法です。
庫内作業・レイアウトの見直し
倉庫内の作業工程やレイアウトを見直し、作業効率を高めることも物流効率化の方法の1つです。
工程や動線を最適化し、無駄をなくすことで荷受けもスムーズになり、間接的にトラックの待ち時間削減にもつながります。
IT技術の導入
WMS(倉庫管理システム)やバース予約管理システムを導入して庫内運用を把握・支援したり、ピッキングロボットやAGV(無人搬送車)を導入して作業を人から機械に置き換えたりすることも物流効率化に有効です。
投資が必要にはなりますが得られるリターンも大きく、現場に適した投資をおこなえば投資資金の回収期間も短くなります。
物流業者にアウトソーシングする
自社での物流業務が人的・物的リソースを圧迫していると感じる場合は、アウトソーシングも1つの方法です。
物流業者は複数の荷主の荷物をまとめて扱うことで、コストメリットを出しています。物流専門のプロのため運用の最適化が迅速で、ミスの減少も期待できます。
物流効率化の事例
物流効率化は、さまざまな角度から取り組むことが可能です。
ここでは、輸送方法の切り替え・システムの導入・共同配送のマッチングにより大幅な効率化を果たした3つの事例を紹介します。
輸送のモーダルシフトにより車両台数を57%削減した大王製紙株式会社
紙・パルプ業で有名な大王製紙では、積載効率を高めるためにトラックへの商品のバラ積みをおこなっており、ドライバーの長時間拘束や体力的負担が課題となっていました。
そこで、愛媛県から埼玉県への輸送形態をトラックから船便に変更し、積載方法を手積みからクランプリフトへ変更しました。
結果、車両台数はトラック233車/月からトレーラ120車/月へ削減され、積み下ろし時間は1運行あたり140分の減少を実現。
輸送距離・運転時間・荷役時間の大幅な短縮と合わせて、CO2排出量も63%削減を達成した事例です。
出典:物流効率化の取組み事例|大王製紙株式会社
バース予約・受付システムで車両と倉庫の効率的運用を実現した福岡運輸株式会社
食品輸送を中心に扱う福岡運輸では、バースと倉庫内貨物の効率的な運用と積込み/荷下ろし待ちの乗務員の待機時間という課題を抱えていました。
課題解決を図るため、携帯電話からバース使用の予約が可能な「バース予約・受付システム」を導入し、システムが自動判定して車両を呼び出す運用に変更。
車両・倉庫の効率的運用を実現し、九州運輸局の環境保全部門で表彰され、ブランドイメージの向上も果たした事例です。
出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集|国土交通省
AIによる荷主のマッチングをし共同配送の実車率93%を達成した日本パレットレンタル株式会社
パレットのレンタルで有名な日本パレットレンタルは、「モノの流れを最適化するサービスカンパニー」を掲げ、共同輸送のAIマッチングサービスを開始しました。
共同輸送は物流効率化の1つの手段ですが、「協力できる相手を見つけられない」という課題がありました。
そこで、日本パレットレンタルが群馬大学および明治大学との共同研究により開発したAIを導入し、物流のビッグデータをもとに荷主企業をマッチング。
帰り便や混載便をマッチングすることで輸送経路の平均実車率93%を達成しました。
出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集|国土交通省
物流総合効率化法とは
物流総合効率化法の正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」です。
国際競争力の強化や貨物小口化への対応、環境負荷軽減を目的として、「2以上の者(事業者や法人等)」が流通業務の一体化・効率化を図る事業に対して、認定・支援をおこなう法律です。
総合効率化計画の認定を受けることで、以下のメリットがあります。
- 営業倉庫に対する税制特例(法人税・固定資産税・都市計画税の減免)
- 立地規制・開発許可に関する配慮
- 取り組みや事業立ち上げに対する経費補助等
物流効率化に向けた先進的な実証事業とは
荷主事業者や物流事業者に対して、物流効率化に役立つ機器やシステムの導入の費用を補助し、投資効果の実証をするために経済産業省がおこなう事業です。
物流の2024年問題への対応・輸送力不足の危機を乗り越えるために、実証成果を横展開し、投資意欲を喚起することを目的としています。
支援対象の流通業務総合効率化事業の例
ここでは、実際に支援対象となった流通業務総合効率化事業の事例を紹介します。
株式会社フリゴ・株式会社三和貨物による輸送網集約事業
冷凍食品等の寄託貨物を扱うフリゴは、物流センターのスペース不足による他社倉庫への再寄託や横持輸送が常態化していました。
非効率な輸送体制を解消するため、輸送事業者である三和貨物と連携し「咲洲物流センター」を新設した事例です。
分散した物流拠点と輸送網を集約したことで、トラックの走行距離・台数を削減し、CO2排出量の約30%削減を達成。
併せて、トラック予約受付システムを導入したことにより手待ち時間を約82%削減しました。
出典:物流総合効率化法の認定状況|国土交通省 物流・自動車局
佐川急便株式会社と西濃運輸株式会社による共同輸配送
佐川急便と西濃運輸では、青森県下北地域に向けた配送の共同輸配送を実施しています。
従来、佐川急便は下北営業所から、西濃運輸は青森支店からトラックを仕立てて下北地域宛の宅配貨物を配送をしていました。
それら貨物を佐川急便の下北営業所へ集約し共同配送することで、ドライバーの運転時間が約41.8%削減、CO2排出量は約54%削減という結果となりました。
出典:物流総合効率化法の認定状況|国土交通省 物流・自動車局
日立物流コラボネクスト株式会社と株式会社バンテックによる化粧品輸送のモーダルシフト
最後は、トラックから船舶・トレーラー輸送に切り替えたモーダルシフトの事例です。
神奈川県から佐賀県までの輸送をトラックでおこなっていた2社は、神奈川県の追浜港から福岡県の苅田港までの1000kmを船舶に、他の部分はトレーラーでの輸送に切り替えました。
貨物の大型化により運行回数の削減を図り、既存内航船のデッドスペースを活用することでCO2排出を72.7%削減し、ドライバー運転時間は85.9%削減しました。
出典:物流総合効率化法の認定状況|国土交通省 公共交通・物流政策審議官部門
支援措置の概要
物流総合効率化法では、複数の事業者や法人が協力して共同配送の導入やモーダルシフト(環境負荷の軽い輸送方法への切り替え)などの輸送の合理化をおこなった場合に認定・支援されます。
認定を受けたい場合は、まず最寄りの運輸局等に相談をしたうえで事業計画を作成し、再度窓口へ最終確認した後に申請という手順を踏みます。
また、都道府県などの地方自治体においても物流効率化支援として補助金の給付をおこなっているケースがあるため、自社で活用できる制度がないか調べてみるとよいでしょう。
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物流効率化は運送事業者や環境の負荷を軽減するだけではなく、荷主の事業継続性や物流サービス品質の保持、将来的な国際競争力の強化といったメリットがあります。
とはいえ実際に効率化に取り組むと「投資できる時間や費用がない」「その方法が最適解なのか、判断が難しい」といった障害が出てくることも。
物流効率化に課題をお持ちの方は、ノウハウや知見をもった物流会社へのアウトソースをおすすめします。
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