「2024年問題」の対象となる建設・物流業で人手不足倒産が急増 帝国データバンク調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年10月4日、2024年上半期(4〜9月)における人手不足倒産の動向調査結果を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
「2024年問題」の対象業界で高水準、大幅増
2024年度上半期の従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」件数は163件に達し、同期間として2年連続で過去最多を記録した。
2023年度では313件と、前年度比2.1倍と大幅に増加したが、本年度はそれをさらに上回る可能性が出てきた。コロナ禍以降さらに深刻な社会問題として表面化した人手不足は、企業経営に深刻な打撃を与えているといえるだろう。
業種別では、建設業では55件(前年同期51件)、物流業では19件(同19件)と高水準が続き、合わせて全体の45.4%と多くを占める。「2024年問題」の対象となる業界において、高水準、大幅増になっている様子が見受けられる。
加えて、飲食店では9件(同2件)となり増加幅が大きい。また、全業種を通じて従業員数10名未満の小規模事業者が多くを占める結果となった。
※画像元:人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)(株式会社帝国データバンク)
建設・物流業における人手不足が目立つ
「2024年問題」の対象業種である建設・物流業において人手不足倒産が特に顕著であり、実際に両業種とも人手不足を感じている企業の割合は約7割に達している。この数値は全体の51.5%を大幅に上回る高水準となっており、未だ低下に転ずる兆しは見られない。
2020年度の前半こそ新型コロナの感染拡大によって人手不足感は一時的に緩和されたものの、以降は一転して経済の回復とともに上昇。こうした状況に加えて、2024年4月に時間外労働の上限規制適用が追い打ちとなり、倒産に追い込まれたケースが続出する結果となった。
一方、建設・物流業の価格転嫁の状況は徐々に上昇している。特に物流業においては2022年12月当時では全体と20ポイント近く差が開いていたが、着実に右肩上がりで推移している。
今後の賃上げ、労働環境の改善が左右
現在、就業者数は増加しており、有効求人倍率も上昇に歯止めがかかるなど、各種統計では人手不足が落ち着いたような傾向もみられる。
しかしながら、賃上げ機運が高まるなか労働市場の流動化が進むなど、人手不足倒産は増加。TDBが実施しているその他調査結果(※1)を踏まえると、今後も労働条件が厳しい小規模事業者を中心に人手不足倒産は高水準で推移するとみられる。
TDBは今後について、価格転嫁状況の改善による賃上げ、労働環境の改善によって人材の確保につなげられるかが人手不足の解消を左右すると指摘している。スムーズな価格改定には決定する企業だけではなく、消費者を含めた市場全体の協力も必要となるはずだ。「2024年問題」の影響を最小限に留め、持続可能な社会実現へ向けた取り組みが求められるだろう。
※1 関連記事:正社員不足を感じている企業は5割以上に 帝国データバンク調査